第25話 人助け
盗賊に追い付いた俺が見たものは、袋から抜け出した赤髪の女の子が転がりながら逃げているところだった。
しかし、盗賊に馬乗りになられて抵抗虚しく押さえ付けられていた。
俺は馬乗り盗賊の横に転移し、蹴り飛ばす。
「ごぶああぁっ!! ぐっううぅぅっ……」
馬乗り盗賊は木にぶつかり、痛みを堪える。
「なっ……!?」
突然の敵襲に驚き声をあげる残りの盗賊。
もう一人の盗賊は切り替えが早いようで、短剣を抜いて斬りかかってくる。
ちょうど良い。この世界の普通の人間の動きを観察しよう。
そう思い俺は一応ポケットに入れておいたゴブリンの短剣を使い応戦する。
しかし、時々加減を間違えて相手を攻撃してしまった。
自分が劣勢だと悟った相手は動揺している。
「何故この俺についてこれるんだ!? 賊の界隈ではそこそこの手練れとして有名なこの俺にぃぃぃい!?」
「なんだ手練れなのか……」
どうやら一般人レベルの盗賊ではなく、手練れだったようだ。
ならこいつには用がない。
俺は瞬時に斬り捨て、もう一人の盗賊に向き直る。こいつは俺の襲撃に動揺していたから一般人レベル盗賊の可能性がある。
盗賊は斬りかかってくる。
やっぱりさっきの奴よりは弱いけどたいして変わらない。
なのですぐに喉を切り裂く。
俺は短剣に付着した血を短剣を振るい払う。
「う、後ろに! 危ない!」
俺はシュウのスキル転移門を使う。
目の前に見覚えのある黒い渦が出現する。俺はその渦に短剣を突き刺す。
「ぐわああああっ!!」
後ろで短剣を振りかぶっていた馬乗り盗賊の手から短剣が離れる。代わりに馬乗り盗賊の胸から、俺が突き刺した短剣が生えていた。
ゲートは転移と同じ様なスキルだ。
転移は俺しか移動出来ないけど、ゲートは俺以外のモノも移動できる。
だから俺はゲートを通し、馬乗り盗賊を後ろから突き刺した。
俺は短剣をそのまま馬乗り盗賊に突き刺しておく。思ったより使い勝手が悪かったからもういらない。
盗賊を始末した俺は赤髪の少女に視線を移す。
赤髪の少女は涙を流しながら、口をパクパクしている。
泣いている……しまったな。こんな一般人っぽい人に殺人現場を見せてしまった。
「あの……惨い物を見せてしまい、申し訳ありませんでした」
まともそうな人だから一応丁寧に接する。
「ふぇ……? あ……い、いやなんであんた……じゃなくて貴方が謝るのよ…………あ、いや……ですか?」
「無理に畏まらなくても良いいですよ」
「そ、そう……じゃあ……改めて助けてくれてありがと。え、えっと私はフレイア・アイドラーク。あんたは?」
「僕は久遠秋です。あっ……久遠が名字です」
「ふーん変なの。普通は名字を後に名乗るのに」
「そうなんですか。じゃあこれからはアキ・クドウと名乗ります。教えてくれてありがとうございます」
「う、うん。どういたしまして」
何でさっきから目を逸らしながら会話するんだろう?
…………あぁそうか、コミュ障なのか。
「取り敢えず森を出ましょう」
「えぇ、そうね」
俺達は歩きながら森を歩く。
あぁそうだ一応フレイアを鑑定しておこうか。
一般人っぽいしステータス見れば一般人の基準がわかるかも知れない。