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第233話 美徳

 突然鼻血を噴き出して倒れたフォニア。

 グラディオは一瞬呆気にとられるが、すぐにフォニアを荷台に運んだ。ここには商品を置いてある。 そしてフォニアの鼻に布を詰めてから移動屋台を引いて落ち着ける場所まで移動した。流石に道の真ん中で悠長に面倒を見てられないからだ。



 そしてやってきたのは空き地。 グラディオは今日はここで夜を明かそうと思ったが、そこでフォニアの存在を思い出した。


 荷台に戻ったグラディオは血で染まった布を取り替えようとするが、既にフォニアは目覚めており、鼻血も止まっていた。


「大丈夫? いきなり倒れちゃったけど……」

「あぁ……問題ない。 少し混乱していただけだ」

「ならいいんだけど」


 無音。 誰も声を発さず、誰も動かない。 近隣の家からも生活音やら何やらは聞こえてこない。


「え、えっと……今日はどうする?」

「何がだ?」

「寝る場所」

「あぁ…………」


 フォニアが言葉に詰まる。

 今のこの時間ならば、もうどこの宿屋も夕飯を出し終わっているだろう。なので今から行っても夕飯にありつく事はできない。 かと言って、宿泊するだけに金を払うのも勿体ない。 二人が必然と思い付くのはこの狭い荷台で寝ることだった。


「こ、ここでいいんじゃないか?」

「だ、だよね。 泊まるだけのためにお金を使うなんて勿体ないもんね」


 二人の視線は下に落ちる。 そこにあるのは無造作に置かれた魔剣だ。 どちらからともなく、それらを端に追いやり始める。


 意外な事にそうして片付けてみれば、二人がギリギリ寝そべる事ができるぐらいのスペースができた。 外から見ればどこにそんなスペースがあるんだ? と言った具合だ。


「……さて、寝ようか」

「その前に顔を洗っておいた方がいいよ。 血塗れだから」

「あ、あぁ……」


 荷台から出たフォニアは水魔法で顔を洗い始める。

 荷台に残されたグラディオは考える


(フォニアと一緒に寝るのは昨日も経験したけど、今日のはもっと近く……)


 グラディオが見るのは荷台に空いたスペース。 広くなったとは言え、二人で寝転がるなら間違いなくどこかしたが接触してしまう程度の広さだ。


(……それに、なんだか妙に意識してしまう……)


 グラディオは肩から腕にかけてを無意識のうちに撫で、無意識のうちに視線を荷台の外へ向けた。


 そこでは考えもしなかった光景がグラディオの視線を釘付けにした。

 荷台の外ではさっきグラディオが言った通りフォニアが顔を洗っていた。 だが、なぜか背中が……肌色の背中が見える。 驚いて声を上げそうになるが、なんとか堪えた。


(な、なな、何を!? え、オイラ顔を洗えって言ったよね!? なのになんで服を脱いでるんだ!?)


 疑問に思うが答えはなく、更にフォニアを意識するようになるだけに終わってしまった。


 一方のフォニアは、風呂に入りたいが入れないから水浴びをしているとかではなく、服の内側まで垂れていた鼻血を洗い流していただけだった。 確かに風呂に入りたくはあったようだが、グラディオ、フォニア共に金欠の状態では叶わない事だった。



 肌に若干の潤いを宿したフォニアが荷台へと帰ってくる。 先程の光景をみてしまったグラディオはフォニアを直視する事ができなかった。


「どうかしたか?」

「い、いや何も……」

「……? そうか? ……じゃあ寝ようか」

「……う、うん」


 様子がおかしいグラディオを余所にフォニアは荷台に寝転がる。 その際に自分の身を少し魔剣の方へ寄せたのはグラディオへの気遣いか、それとも密着する事にによるドキドキを抑えるためか。


 そんなフォニアの思案はどちらにせよ無意味に終わり、どれだけ身を寄せようと、絶対に接触してしまう。


 その後はどちらも寝息を立ててはいたが、その目はしっかり魔剣を映していた。 グラディオは二日も寝れていない事になる。




 翌朝、目覚めた……と言うよりは目覚めていた二人は目の下に隈を浮かべながら「おはよう」と挨拶をした。お互いにその事には気付いていたが、相手が触れてこないので触れなかった。


 グラディオにとってはいつも通り、フォニアにとっては昨日ぶり、そんな移動屋台を引いて魔剣を売る仕事。それは王都から人が少なくなった事と、睡眠不足のグラディオがいつもの調子を発揮できない事が重なって売り上げが皆無だった。

 ただただ重たいだけの屋台を引きずる午前。 簡素な昼食を摂り、再び歩く。 ……だが、屋台が動かない。不審に思って屋台を見ると、車輪が地面に空いたあなた穴ボコにはまっていた。


「え? 穴?」

「この国へやってきて間もないが、それでも今まで道が整備されていないなんて事はなかったが……」


 と、そこで二人に話し掛ける者達がいた。


 体は窶れて細くなり、その体は泥だらけ。 おまけに呂律が回っていないので何を言っているかも分からない。耳が尖っていて長いのでエルフにも見えるが美形で知られるエルフがこんな状態になるなどあり得ないので考えを振り払う。


(……これ絶対危ないお薬キメてるよね……? 刺激しないように穏便に……)


 グラディオがそう考え、ゆっくり屋台を動かして少しずつ距離をとる。 だが、フォニアは違った。 珍しそうに危ない奴らに近付いていったのだ。


「ちょ……!」


 グラディオがフォニアへ手を伸ばすが、フォニアの次の一言でその手は止まった。


「もしかしてお前達は…………地底人ではないか?」

「ち、地底人……?」


 フォニアに地底人と呼ばれた者達はうんうんと嬉しそうに頷き、呂律の回らない口調で何かを捲し立てる。


「すまないな。 私はお前達の言語が分からない」


 地底人はハッとしたような表情をしてから懐から何かを取り出してそれを口元に当てて再びフォニアに話し掛けた。 それは拡声器のような形をしていた。


「すミマせんね。 ミー達はうっかり屋さんなモので……つい地上の人々に対して普段通りに話し掛けちゃいマした」

「構わない。 それよりどうして地底人が地上に?」


 ごく普通に、何でもないかのように話すフォニアと地底人を交互に見るグラディオ。未だについていけていない様子だ。


「突然地底のマモのがマったくいなくなっちゃったんだ。 だから食べモのがなくなって仕方なく地上に出てきたのね」

「地底の魔物が……ふむ。 なんとかしてやりたいが、今の私達では何もできないな……」

「おーう! ミー達を助けようとしてくれるなんて、あなたいい人だね! 名マえは?」


 感動したようにオーバーリアクションでそれを表す地底人。 それに少し動揺しながらもフォニアは名乗った。


「いえー! フォニアね! そっちのは何て言うの?」

「え……オイラ……? オイラはグラディオ……」

「オイラ! いい名マえだねぇ!」

「オイラじゃなくて、グラディオ!」

「おう……! オイラじゃない!? グラディオ? ……グラディオはオイラの方が似合ってるよ……?」

「似合っててもオイラはグラディオなんだ!」


 これがグラディオとフォニアの地底人との邂逅だった。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







 あれから数日、ソフィアのスキルと魔法レベルを上げ続けた。

 その結果、光・聖魔法強化はレベルが4に、光魔法と聖魔法のレベルはどちらもレベルが9になった。 実質的に光と聖魔法のレベルは13になった事になる。 これでこのダンジョンは踏破できるようになっただろう。常人の魔法レベルの最大値は10なのだから。


 そう思ってダンジョンに突撃したが、なんと最深部に到達する前に光魔法が通用しなくなってしまった。

 ……なんとこのダンジョンは常人にクリアさせる気がなかったのだ。 クルトのように【魔法効率倍加】や、ソフィアの【光・聖魔法強化】などと言った、魔法の効果を底上げするスキルを持っている者にしか攻略させる気がなかったのだ。


 それを理解したフレイア達のやる気はがた落ちだった。肝心のソフィアがレベル上げをしているので自分達はする事がないし、なによりもう面倒臭いと言った様子だ。


 俺も暇すぎて、もういっそソフィアを喰って光と聖魔法のレベルを与えようかなと思ったが、色々と無理なのに気付いてバカな考えを振り払った。


 そもそも俺の【強奪】は相手のスキルレベルや魔法レベルをそのまま奪うのではなく、例えば(3/10)と言ったように内部に経験値的なのがあるようなので、ソフィアを喰って俺の光と聖魔法のレベルがソフィアを越えるとは限らない。もしソフィアを越えたとして、そもそも魔法レベルの上限が10なので俺の光と聖魔法のレベルがなくなってしまう。 完全に損しかしていない。


 と言うか……殺して喰っても魂がないからソフィアを完全な状態で復活にさせられないのでそもそも無理なんだよな。


 ちなみに今回の【強奪】のレベルアップで『魂強奪』は手に入れられなかった。 まぁ、邪神の言う事を信じて『魂強奪』が存在すると決めつけるのはよくないだろう。


 あぁ、そう言えばあの後邪神に聞いたんだが、今でも俺が喰った生物の魂は俺の中に存在しているらしいので、そいつらは未だに生まれ変わる事ができていないらしい。……だが、そんな事を言われたって、あるのかどうか分からない『魂強奪』を手に入れて魂の与奪が可能にならなければどうしようもないのだから仕方ないだろう。


 ……それにしても、多くの生物の輪廻転生の循環を断っているのって色々と大丈夫なのだろうか。


 何にせよ、模倣のダンジョンを踏破してやっと【強奪】が1レベル上がったのだから、もう暫くは【強奪】はレベルアップできないだろう。


 あの時手に入れた固有能力は【謙虚】【無欲】【絶食】【慈悲】【勤勉】【忍耐】【純潔】の7つだが、効果はそれぞれの元になった邪神のスキルを真似たようなものだった。







▼ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【謙虚】

敵との戦闘で自分のステータスに一時的に下降補正

敵との戦闘で相手のステータスに一時的に上昇補正

入手経験値超増加


任意発動

▲_________________


 一見マイナス効果だが、損失の代償として手に入れられる経験値が超増加するらしい。【強欲】と併用すれば経験値が大量に手に入るだろう。 こう言う経験値アップ系のスキルって、「あの時に持っていれば……っ!」みたいな悔しさが沸いてくるよな。




▼ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【無欲】

入手経験値が無くなる


任意発動

▲_________________


 一見マイナス効果だが、マイナス効果だ。




▼ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【絶食】

空腹になればなるほどステータスが増加する

食欲が低下する

満腹状態中はステータスが一時的に低下し、行動不可能になる


任意発動

▲_________________


 これは【暴食】と併用すればいいのだろうが、満腹になればステータスが低下して行動不可能か。 キツいが、【暴食】の使用中は満腹にはならないのでさほど問題ではないだろう。 ……だが、なんとなく使う気にはなれないな。




▼ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【慈悲】

発動すると、慈悲状態になり自分から戦意が喪失され、専用スキル【不殺の慈悲】が使用できるようになる


任意発動

▲_________________

▼ ̄ ̄ ̄

【不殺の慈悲】

喪失した戦意を倍増させて取り戻すが、どんな攻撃でも敵を殺害する事ができなくなる

▲___


 少し使い道について考えてみたが、どう考えても拷問にしか使えなさそうな感じだ。敵を前にして自分から戦意を喪失させる意味がないしな。




▼ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【勤勉】

所有する固有能力、スキル、魔法、全ての効果をそのレベルの高さに応じて上昇させるが、激しい精神的疲労に襲われる


任意発動

▲_________________


 すごく優秀なスキルだ。対になる【怠惰】とは大違いだ。最後の一言がなければ。 これも使いどころが難しいな。

 どれぐらい疲労があるのかを確かめる為に一度使ってみたところ、スキルや魔法を使わない限り精神的疲労はないようだったが、スキルや魔法を使った途端に息切れが訪れた。キツイ坂道を自転車で全力で走ったような感じだ。よっぽどの事がない限り使わないだろう。




▼ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【忍耐】

肉体的苦痛、精神的苦痛への耐性が超上昇する

苦痛を受ければ受ける程ステータスが増加する


任意発動

▲_________________


 肉体的、精神的苦痛への耐性は遺跡世界にいた狂戦士(バーサーカー)系の魔物を喰う事で異常なまでに得ていて、とっくに人外を味わっているのでもういらないが、苦痛を受ければ受ける程ステータスが増加する、と言うのはありがたい。




▼ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【純潔】

自分に性交経験がなければ自分のステータスが上昇する

性交経験のある敵との戦闘で自分のステータスに上昇補正

性交経験のある敵との戦闘で相手のステータスに下降補正

相手に性交経験があるか判別できるようになる


任意発動

▲_________________


 なるほど。 徹底的に性交経験のある敵に対して特効があるようだ。そして最後の判別できるようになるやつは吸血鬼とかが持つ『種族特性』と同じような感じなんだろうな。





 と、新しい固有能力はそんな感じだ。


 どれも悪い効果が伴っているか、そもそも使いたくなかったり、使いどころがなかったりで、難しいところだ。


 そんな固有能力を確認しているうちに結構時間が経ったようで、今日のダンジョン探索……レベル上げは終わりにするそうだ。



 冒険者ギルドにやってきたが、やはり冒険者も大半が避難してしまっているようでいつもはワイワイ賑わっているギルドが静かだ。 全くの無音かと問われれば無音ではなく、受付嬢と冒険者の事務的なやりとりと、他のパーティの話し声などのそう言ったものしか聞こえてこない。

 そして現在王都で冒険者活動を続けている者は確実にといっていいほどに戦争へ参加するものと思われる。

 ……どうでもいいが、避難した冒険者の一部は、戦争へ参加する冒険者に向かって「受付嬢からの好感狙い野郎共」などと吐き捨てて去っていった。なぜ罵られたのか分からないが、恐らく戦争が行われる事により結構色々と荒んでいたのだろう。


 そんな事を考えながら俺達はクエストの達成報告と魔物の素材の売却を行った。 そこまではいつも通りだったのだが、ギルドマスターのルイスに呼び出された。 ルイスは会うたびに窶れていっているように見えた。


 そして執務室に案内された。


「久しぶりだな。前にこの話をしてから大分経ったが、最近やっと話が纏まった。ダンジョンの踏破ついてだ」


 一瞬どの通路の話か分からなかったが、ルイスに報告したのはクラエルのいた通路事だけなのですぐにわかった。

 ……と言うかフレイア達からすれば一本道と分岐しか踏破していない事になっているので迷う余地はないのか。

 模倣のダンジョンと化した、上下に入り組んでいる通路も俺が氷付けにして進めないしな。


「結果から言うと、ダンジョン踏破は一発昇格なのでお前達昇格は認められた。 お前達は今日からAランクだ」

「えっと……あの一本の通路がダンジョンだと認められたんですか?」


 Aランクだ。 と言うルイスにクルトが質問する。


「あぁ。 認められた。 あのダンジョンは特殊なケースで、通路によって構造や仕掛けがガラッと変わっていたからな。 複数のダンジョンが重なった極めて稀なダンジョンだと判断された」

「…じゃあ俺ら……マジでAランクなのか……?」

「あぁそうだ。 おめでとう!」


 拍手して祝ってくれるルイスを見たフレイア達はそれぞれの喜び方で喜びを表した。 セレネとアケファロス、ソフィアはどう言う事? みたいな反応している。 …………そう言えばこいつらどうしようか……


「ん? そこの三人は見た事がないが……パーティの新入りか?」

「一緒にダンジョン探索はしているが、パーティメンバーでもないし、冒険者ですらないな」

「…………じゃあこれを機に冒険者登録してお前らのパーティ加えておくか? もちろんランクも揃えておくぞ?」


 新米冒険者をいきなりAランクとかおかしいだろ。 しかもそれをすると高ランク冒険者に寄生する名ばかりのAランクとかが生まれてしまうぞ……? ランクは所属するパーティに合わせられる事は知っているが、やはり欠陥があるシステムだと思うな。 ルイスや他のギルドマスターもそれを承知だろうが、なぜこれを改めないのはなぜだろうか?


 と思ってたら、俺の心を読んだかのようにその理由をルイス自らが話し出した。しかも随分と黒い理由だった。


「先に言っておくが、これはお前らに媚を売っているんだ。 お前らみたいな優秀な冒険者を逃がすなんて勿体ないからな。 …………ここだけの話だぜ? 冒険者ランクが所属パーティのランクに合わせられる理由は、こうして優遇して優秀な冒険者を手元に置いておく為なんだ。 そうすれば冒険者は自分達を優遇してくれる都合のいいギルドで働くようになるんだよ」

「うわぁ……」


 これじゃあ表向きには否定的な扱いの、高ランク冒険者に寄生する冒険者を認めているようなものじゃないか。


「まぁ、そんなわけでこれからもよろしくな」

「……戦争が始まればよろしくできなくなるかも知れないな」

「何を言うか。 この街に残ってるって事はお前らも戦争に参加するんだろ? ならこの国が負けるわけねぇよ。 さぁ、そこの三人のギルドカードを作るぞ」


 そう言うルイスだったが、作られたのは本人達の要望もあり、最初のランク──Fランクのギルドカードだった。 アケファロスは騎士としてのプライドで、ソフィアは甘えるのが嫌だったから、セレネは成長を楽しみたいから、と言う様々な理由でそれを選んだ。


 これでダンジョン内などで一緒に行動できなくなるのかと言われればそうではない。 踏破されていないダンジョンは適正ランクが設けられていないので、三人でパーティを組んでいつも通りに縦穴の底で魔物を狩って素材を売っていれば自然とランクは上がるだろう。




 その後は屋敷に帰り、いつも通りに過ごした。 そう言えば最近この屋敷を監視していた女と、忍者白ローブがいなくなった。 特にこの屋敷に被害は見受けられなかったし、あの二人が何をしたかったのかは全く分からない。


 女の方は更に遠くで女を見張っていた奴らにでも連れて行かれたのだろうか。服装からして仲間っぽかったけど……どうなんだろうか。


 そして忍者白ローブはなぜこの屋敷を? あの時は変形していたので俺だとは分からなかった筈だが……見抜かれていたのか? だとしたらあいつは危険かも知れない。


「また負けました……」

「ん。 アケファロス弱い」

「な!? よ、弱くありません!」

「……でも、未だに誰にも勝ててない」

「ぐ……っ!」


 そしてアケファロスは未だに将棋でもその他の遊びでも全敗中だ。 そして次に勝負を挑まれるのはいつも通りなら俺だろう。 なぜなら俺、クロカ、シロカ、セレネ、の中では俺が一番弱いからだ。

 ちなみにフレイアは王族だからか、そう言った軍略事に聡かったので将棋やチェスなどではほぼ無敗だった。唯一負けたのは最初の頃だけだった。そしてそれの更に上にいるのはオリヴィアだった。恐ろしい。


 ソフィアは人生ゲームでは異常に強かった。【運命視】の使用を疑ったが、「運命は他人の行動で変わるので、それは全て皆さんの行いが招いた結果です」と言っていた。 使用を認めて、更に自分を正当化していた。

 まぁ自分の行いが招いたのだから仕方ないと思う。そしてそれからは人生ゲームでの行いに気を付けるのが普通になった。サイコロはどうにもならないのがキツかった。


 そんな感じで最近は退屈しない。

 暇潰しになる娯楽が手に入った事と人が増えて屋敷が賑やかになったからだろう。

 やはり賑やかなのは素晴らしい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 謙虚の部分の説明がどっちも格下になってます。
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