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第204話 スィヴルア

 そこに居たのは異形だった。


 俺はそいつに【鑑定】を使う。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

名前:スィヴルア

種族:異質同体(キメラ)

Lv340

MP :60,600

物攻 :53,200

物防 :56,500

魔攻 :52,400

魔防 :54,700

敏捷 :48,600


固有能力

【美食】


常時発動能力

無し


任意発動能力

【身体弱化】【柔軟体】【懐柔】【柔腕】【歩行】【鼠の囁き】【凝固】【破壊】【漿液】【白霧】【沈静化】


称号

特殊個体

__________________________



 ……完全にアルヴィスをベースにして創られている。

 名前は逆さまに読んだだけで、ステータスの数値は桁を増やしただけで、固有能力もスキルも意味を反対にしたものばかりだ。 明らかに手抜きだ。


 まぁ手抜きにしろこれで確定だ。 これは確実に人為的なものだ。

 ……まぁ、こいつの見た目がアルヴィスと瓜二つな時点で確定していたが。


「どうかしたの?」

「ん? いや、強そうだなと」

「そう?」


 俺の様子を不思議に思ったのかフレイアが聞いてくるが、適当な事を言って誤魔化す。

 それにしても俺の事をよく見ているな。



 俺がフレイアと会話している横ではラウラが騒いでいた。


「ふぇぇぇ! あんなの絶対に勝てませんよ! 引き返しましょうよ!」

「……あぁ、分かるぞ。 あれは地割れから現れたあの魔物に近いレベルの魔物だ。 ……だがここまで来た以上、勝利して帰る!」

「…お? あのマーガレットが大胆に出たなぁ?」


 竦むラウラと勇まいマーガレット。

 あいつらの強さではまずスィヴルアには勝てないだろうから、思考としてはラウラが正しい。


 マーガレットはラモンとの喧嘩以来、安全に固執するのを抑えているようなので、今回もそうするようだ。

 俺としては用心深い方がいいと思うが、そこはマーガレットの自由なので何も言わない。


 それはさておき、今回は初見とも既知ともつかない……どうしたものか。

 ……困ったら相談だ。


「なぁマーガレット。 俺はこいつと戦った事がある? んだがどうすれば良い?」

「え……そうだな……うん、取り敢えずいつも通り静観していてくれ。 どうせ私達ではあいつには勝てないからクドウが危険だと判断したら助けてくれるか?」

「分かった」


 つまりいつも通りと言う事だ。 元々危険だと判断したら助けると言う約束だったからな。


「よし、私が爪先で地面を蹴ったら突撃するぞ!」

「分かったわ」

「…おう」

「はいぃぃ!」

「了解しましたわ」

「うん!」

「はい!」


 それぞれがそれぞれの返事をする。


「よし、じゃあ行くぞ!」


トン


 マーガレットが地面を蹴る。

 それを見たフレイア達は一斉にボス部屋の中に入り、それぞれ攻撃を始めた。


 フレイアとアデルは獅子の顔を、マーガレットとラモンは尻尾のように生えている六匹の毒々しい蛇を。


 ラウラはフレイア達近接組四人の利き手じゃない腕に巻き付かせた植物の盾を上手く操って四人を守っている。

 流石にそんな繊細な芸当を自分も戦いながら行うのは難しいらしいので、クルトとエリーゼが魔法で攻撃する側に居る。


 クルトとエリーゼはいつも通り遠くから近接組の援護をしている。 二人の魔法の精度は上がり、今では以前より圧倒的に的確に援護が出来ている。

 だが、スィヴルアの体には無数に口が付いている為、そのまま魔法が飲み込まれる事もある。それでダメージを受けている様子がないのは、【美食】と言う固有能力のおかげなのだろう。


「…何か言ったか? マーガレット?」

「いや、何も言ってないぞ」

「…そうか? 確かに声が聞こえ……たぁっ!」

「大丈夫かラモン!?」


 不思議そうな雰囲気で戦っていたラモンは気が散ったのか、蛇の攻撃を受けて降っとび最後には壁に叩きつけられた。


「…すまねぇ……油断しちまった」

「無理はするなよ。 死なれたらクルトでもエリーゼでもどうしようもないからな」

「…はっ! この程度は平気だっての」


 肩を回して余裕アピールをするが、マーガレットはそれどころではないので見ていなかった。

 恐らくラモンが聞こえた声と言うのは【鼠の囁き】と言うスキルだろう。


 中々厄介なスキルだ。 連携をとる為に会話をしていてもこの囁きで円滑に進まなくなるし、一々、今のはお前の声か? などと確認するので意識を少なからず持っていかれてしまう。


「うわぁ! 何このさらさらの水!」


 見ればその場から飛び退いたアデルの下半身がびしょびしょになっている。

 その水は【漿液】と言うスキルが原因だと思われる。 多分、スィヴルアの唾液か何かを浴びたのだろう。


「な、なにこれ!? ボクの体が固まっていくんだけど!?」


 アデルの下半身は【凝固】した【漿液】に覆われて固まってしまっていたが、アデルが踠いている内にそれは砕け散っていった。


「見て、アデル。 こいつの血とかも全部固まってるわ」

「え? あ、本当だ」


 アデルに続いて飛び退いたフレイアが指差すのはアデルの足元にある、固まったスィヴルアの血液だ。


 アデルはマーガレット達に今得た情報、スィヴルアの体液が固まる事を報告した。 最後に体液以外の液体も固まる可能性を加えて。




 そうして長く戦っていると、どんどんとフレイア達は劣勢になっていった。 勿論スィヴルアにも着実に傷が増えているが、どれも大した傷になっていない。 そうさせるのはスィヴルアの物防、魔防の高さ故だろう。


 スィヴルアの猛攻は止まらない。

 地面諸共破壊しようと繰り出される熊のような右前足、鉄人形の左前足。


 地面に振動を伝えて視界外にいるマーガレットとラモンを吹き飛ばす、オーガの後ろ足。


 そして気付けばこの部屋は薄く白い霧が立ち込め、フレイア達の視界を悪くしていた。


 どんどん傷が増えていくフレイア達。 いつの間にか利き手じゃない方の腕に巻き付いた植物はボロボロなり、ラウラも植物を従えて近接組の仲間入りをしていた。


 だがその程度ではこの劣勢は好転しなかった。

 もっと言えば、クルトとエリーゼの魔力も尽きて援護すらもなくなっていた。


 地面に倒れるように座り込み、申し訳なさそうな…縋るような顔でクルトとエリーゼはフレイア達を見つめる。

 これはサボりではない。 魔力が枯渇すると否応なしに力が抜けてこうなってしまうのだ。


 そろそろ助けにいかないと、この間までのラウラのようになる奴が現れてもおかしくない。


 そう考えた俺は腰に提げていた蛇腹剣を引き抜き、蛇腹剣に魔力を纏わせて鞭のように撓らせてスィヴルアの右前足を斬り付けた。

 蛇腹剣に魔力を纏わせる事により、蛇腹剣の脆さや攻撃力の弱さを補う事が出来るので、今のこの状態はそこらの剣より高性能なのでこうして明確なダメージを与えられた。


 そしてスィヴルアはアルヴィスと違って【再生】を持っていないので、この傷はこの戦い中に塞がる事はないだろう。


「今よ! みんな!」


 スィヴルアは突然足が斬り付けられた事によりバランスを崩す。 そこを見逃さずに傷だらけながらもフレイア達が攻撃を始めた。

 そんな地味なちまちました攻撃は、それでも徐々に確実にスィヴルアの体力を削っていく。


 だが、このままでは不味いと理解しているスィヴルアは悪足掻きと言ったような感じで我武者羅に暴れだした。

 そんな我武者羅で予測も出来ない攻撃を仕掛けるスィヴルアの攻撃を受けないように、傷だらけの体に鞭を打ってフレイア達はその場を離れる。


「頼む……! クドウ!」

「分かった」


 マーガレットに頼まれたので、スィヴルアの悪足掻きの影響を受けない安全地帯から蛇腹剣を振り回す。


 ボス部屋には、スィヴルアの肉を裂く音と、悲鳴、そしてスィヴルアの断末魔が響いていた。

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