第20話 異世界へ
さて、どうしようか。
シュウがいないからこの世界から出られないんだけど……
俺が居たさっきまで居た異世界に転移すれば良いんだけど、俺が行ったことある場所と、視界に収まる範囲にしか転移できないからあの狭い遺跡にしか行けない。
かと言って、地球に転移したら俺は死んだ事になってるから無理だし…
俺が思考していると俺の目の前に黒い渦が出現した。
それを見て、胡座をかいていた俺は咄嗟に後ろに転移してから立ち上がる。
渦から出てきたのは、二十代ぐらいの綺麗な女性だ。
女性は警戒する俺を見て言った。
「そんなに警戒しなくて良いですよ? 私は転生の神の代理人です」
「いきなり信用なんかしないですよ」
俺は一応最低限の敬語を使う。親しく無い人だし、初対面だから。
勿論、敬意をはらう必要の無いような奴には最低限の敬語すら使わないけど。
「あれ? 聞いてた話じゃ人と会話するのが苦手って聞きましたけど……」
「誰から聞いたのか知らないですけど、ある程度自分に自信が付いたからだとでも思っててください」
「無愛想って言うか何て言うか……適当な人ですね……」
「そうですか。 それで俺に何の用ですか?」
こんな真っ白で何もない空間にわざわざやってきたんだ。 俺に用があるのだと推測して聞く。
「……はぁ……えっと、貴方を異世界に送る為に来ました。それと、一応説明しておくとテントラさん……いやシュウさんが貴方に探索させた遺跡は本物の……正式な異世界ではなく、シュウさんが勝手に造り出した極小の世界です。 ……ですからあの遺跡は一切傷が付かないんですね。 それと、あそこにいた魔物は貴方が今から行く異世界の魔物をベースに一から創った……謂わばコピー品のようなものなんです。 他にも色々説明する事がありまして……」
「……はぁーそうなんですか」
どうでもいい話を適当に聞き流しながら周りを見渡す。すると、いつの間にかこの世界を蝕んでいた黒が無くなっていた。
あの女性が修復したのだろう。
「……はぁ……退屈な話でしたね。ではちゃっちゃと門を開きますね……」
そう言い呆れた様な表情で黒い渦を出現させる。
「あぁ、ありがとうございます」
「……いえいえ」
門を潜るとそこは草原だった。空は青く、太陽が大地を照らしている。 そして辺りには何もない。
……あるのは、草や花などの自然ばかり。
久々のまともな場所に俺はグッと伸びをして草原に寝転がる。
背中に伝わる土の感触がとても心地良く感じる。
……なんせ、ここ暫くあの遺跡の冷たい石畳の上に直接寝転がって生活していたんだからな。
そんな懐かしく穏やかな最高の環境に放り出された俺は、暖かい日差しを受けながら、瞼を閉じた。