第2話 白の世界
死んだと思った次の瞬間僕は、辺り一面真っ白な世界にいた。
数秒後、僕は僕の隣に人が居ることに気付いた。
「初めましてじゃな」
そう言うとその老人は微笑んだ。
気のせいだろうか?
僕はその笑みに不信感を抱いた。
僕の目にはその笑みは新しい玩具を見つけた子供のように見えたのだ。
「ここは白の世界。この世界では不幸な事故により命を落とした者を転生か転移のどちらかをさせ、異世界に送りこむ場所じゃ。 ……そして儂はこの白の世界を管理している神…………テントラじゃ」
そう言って老人、テントラは微笑んだ。
この笑みには先程の不信感を感じなかった。
……やっぱりさっきのは気のせいだったようだ。
「えっと……僕は、久遠秋です」
そういって僕は視線をさ迷わせ、自己紹介をする。
僕はコミュ障だ。
人と話す事自体は嫌いではないけど、どうしても挙動不審になってしまう。
僕の自己評価の低さがそうさせるのだろうか。
「うむ。ではお主は転生と転移どっちがいいんじゃ?」
そこで、僕は勇気を振り絞り自分の意思を伝える。
「え、えっと、あの、転移がいいんですけど……僕の体ってトラックに轢かれて……」
そう。転移するための体がズタボロなのだ。
今も僕は血塗れの死体の状態でここに居る。それなのにどうしてか完全に痛みがない。
首から上しか動かないのはテントラと会話をするための処置として無理矢理意識を繋がれているからだと思う。
この状態を例えるなら、ゲームの負けイベントのようなものなのだろう。
HPが0になっても、キャラ同士の会話だけは続くあの現象のような。
するとテントラは目を見開き「あっ!」と言うような顔をした。
「す、すまん! 傷を癒すのを忘れておったわい!」
僕は思わず「は?」と言いそうになるのを堪える。
テントラが僕に掌を翳すとみるみる内に僕の傷が癒えていく。
「う、うむ! では傷も治ったようじゃし……それで、転移でいいのじゃな!?」
テントラは自分のミスを有耶無耶にするために早口で捲し立てる
「え……あ、はい……」
僕は吃りながらも答える。
「うむ。よしあそこにある門をくぐったらもう異世界じゃ。ほれ」
すっかり落ち着きを取り戻したテントラは目線を横にやる。
その視線の先には、荘厳な装飾が施されたアーチの中に黒い渦が渦巻いていた。
「え……あの渦の中に入るんですか?」
とても生身の人間が入って良さそうには見えない。
「そうじゃそれ以外ないじゃろう?ほら次が待っておるんじゃ」
しかしテントラは何でもないかのように僕を促す。
次が待っていると言われたら僕も行かざるを得ない。
渋々立ち上がり禍々しい門へ歩みを進める。
躊躇いがちに恐る恐る門に片足を踏み入れる。
そこで僕はお邪魔しましたぐらい言おうと振り返った。
振り返った僕はみっともなく口を開き呆然とする。
何故ならテントラと話をしていたのは──────
────僕が突き飛ばした子供だったから