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第196話 重いお詫び

「おかえりなさいませ」

「ただいま」


 リブさんに出迎えられた俺はそう返してそのまますぐにフレイアの部屋へ向かう


 言うまでもないが、さっき作った炎竜の剣をプレゼントするためだ。


 フレイアの部屋の扉を叩く。

 すると、すぐにフレイアが顔を出した。


「あれ、アキじゃないの。 どうしたのよ?」

「さっきはすまなかったな。 考えが及ばなかったんだ」

「……? ……さっき……? あぁ、お父様達の事ね。 別にいいわよ。 気にしていないから」


 あれ? 気にしていない? おかしいな。さっきは明らかに気分が沈んでいたようだったのに……取り敢えず渡そうか。


 俺はアイテムボックスから炎竜の剣を取り出し、フレイアに差し出した。


「え、どうしたのよこれ」

「お詫びだ」

「……私に……?」

「そうだ」


 思考停止して何も考えず、受け取ったフレイアは、ボーッとしながら剣を触っていたが、ハッとしてすぐに突き返してきた。


「いや、いらないわよ!? こんな高そうな剣! 本当に気にしてないし!」

「そう言われても、もう作っちゃったしな。突き返されても困るんだけど」

「作った!? えぇぇぇぇぇえ!?」


 剣と俺を交互に見て驚いている。


「受け取ってくれ」

「え、えぇぇぇぇ………………んん…………はぁ……分かったわよ…………って……これ魔剣じゃないの!?」

「あぁ。 炎竜の素材で出来てるから火の魔剣にしたけどよかったか?」

「炎竜の素材で出来た魔剣!? あんたどんだけお金を使ったのよ?」


 炎竜の剣に付いた赤い魔結晶を見て、恐々とした様子でフレイアが聞いてくる。


 そんなフレイアは炎竜の剣を、大切な宝物を持つように両手で丁寧に持っている。


 お前のだから傷がついても誰も怒らないだろうに


「無料だった」

「……無料……? まさか盗んで……」

「違うから」


 あらぬ疑いをかけられそうになった俺は無料になった経緯を話す。


「……まぁいいわ。 と言うか……うん。そうよね。 アキがそんな事する訳ないわよね」

「ん? どういう事だ?」

「カレンさんから聞いたわよ。 アキ達一家が強盗に襲われた事。 その辛さを知ってるアキが人に同じ事をするわけないものね」


 スナッチに強盗ではないが、似たような事はしたがな。


「……アキの重すぎる誠意は伝わったわ。 だからありがたく受け取っておくわね。 ありがとうアキ。 …………とても嬉しいわ……」

「あぁ」


 無事、フレイアに剣を受け取って貰った俺はそのまま帰ろうとするが、すぐにフレイアに呼び止められた。


「あ、そうだ! さっきカレンさんから色々貰ったのよね。 一緒に遊ばない?」


 課題を終わらせたいけど……思考加速を使えばすぐ終わるしいいか。


「分かった。 ……じゃあクロカとシロカも呼ぼうか」

「そうね。人が多ければ多い程楽しいものね」

「ちなみにどんなのを貰ったんだ?」

「えーっと……黒○げ危機一髪って言うのと、スーパーイタ○ワニーって言うやつとかね」

「そんなのもあるのかよ」






 

 翌日


 学校に着いて早々に、いつも通り机に突っ伏して寝ていると、スカーラが話しかけてきた。


「おはようございますクドウさん。昨日はありがとうございました」

「ん……? あぁいや、こっちこそ世話になったな」


 顔を上げて答える。


「切れ味とかはどうでした?」

「確かめてないな。 あれはプレゼントだったし」

「あ、そう言えばそんなような事言ってましたね。 どうです? 喜んで貰えましたか?」

「……うーん。嬉しいとは言ってたな」

「よかったですね、喜んで貰えて」

「あぁ」


 そこからはスカーラと適当に雑談をして過ごしていた。


 すると、教師であるナタリアが教室に入ってきた。


「皆さん席についてください。 今日は大事な話があります」


 そう言うナタリアの発言にざわめきがおきる。「先生辞めちゃうのかな?」とか「まぁたテイネブリス教団かぁ?」と言ったものや、様々だ。


「最近、王都に異種族の方々がやって来られたのは皆さん知っていると思いますが、今日はその事についての話です」


 あぁ、異種族関連か。


「異種族の方々が王都へやって来ましたが、勿論そこには皆さんと同じぐらいの歳の方もいます。 そして異種族の子供達の入学などで全く教室などが足りなくなり、明日から王都にある学校は全て大々的に改修工事が行われるので暫く休校になります」


 異種族の子供が大勢入学するので、王都にある学校全ての教室や教員が足りなくなり、それを補填する為に暫く休校になるらしい。


 俺的にはダンジョンの攻略が進むので助かるが、もし開校前に攻略が終わってしまえば暇になってしまうので気を付けないといけないな。





 放課後、ダンジョンの上下に入り組んだ通路の攻略を進める。


「そう言えば明日から休みらしいな。 どうするんだ? クドウ。 この休みはダンジョン漬けにするのか?」

「そのつもりだ。 まぁ……時間はたっぷりあるし、レベル上げメインで進むつもりだ」


 と言う事で、歩くスピードを落としてゆっくり魔物を狩って行く。


 ダンゴムシみたいな魔物が転がって来たのでラモンが蹴り飛ばして、吹っ飛んだダンゴムシをエリーゼが氷漬けにしてそれをマーガレットが両断する。


 これで三人には経験値が分割されて入る。 ……レベルアップまでのスピードは落ちるが、これであまり差を付けず足並みを揃える事ができる。


 やはり力量に差があると連携なども上手く行かないので、こうして手間をかける必要がある。


 ちなみにラウラはとっくにラモン達のレベルに追い付いている。 前と同じようにラウラにばかり魔物を倒させてすぐにレベルを上げた。



 あまり関係ない事だが、蛇腹剣は使い難かった。

 鞭のような状態では、斬り付ける為の力が加わり難いので傷も浅くしか与えられないし、普通の剣の状態でもあまり剣の強度が高くないのですぐに剣が軋み始める。

 何より剣と鞭の切り替えが以外と難しい。

 要領として近いのはボタンで巻き取れるメジャーと、鞭のようなヨーヨーを組み合わせたような感じだ。

 柄にあるボタンを押して鞭と剣の状態入れ替える事ができた。だが、やはりどちらでも強度も切れ味もクソそのものなので武器としては成り立っていないようなものだ。

 はっきり言って、役立たずだ。


 ……蛇腹剣で思い出したが、フレイアは炎竜の剣を使っていない。

 なんでも、こんな他のメンバーの武器から逸脱したを使えば足並みを揃え辛いし、こんな高級な物をそう易々と使えないかららしい。



 そんな俺達は結構ゆっくり進んだと思うんだが、あっという間に次のボス部屋に着いた。


「えっと、ここのボスは……ディアヴロシワームだったか。 兎に角大きくて長いらしい。 あと、こいつの体液はオリハルコンをも腐らせてしまう程の凶悪な成分を含んでいるらしい」


 マーガレットがそう言うが、オリハルコンって結構硬い鉱物だったよな。

 昨日聞いた事だがあまり興味が無かったので殆ど覚えていないが、確か人間が加工ができる限り、最硬の鉱物の中で一位二位を争う程硬いと記憶している。


「オリハルコンを……ですの……?」

「そう、だから触れたら……まぁ……終わりだろう」

「…なら近接の俺らヤバくねぇか……?」

「そうだ。 だから微力ながら私達も魔法で戦おうと思う」


  ボス部屋に入った俺達は、まずそれぞれ部屋の隅々に散開して巨大なワームを囲む。


 ディアブロシワームは大きくて長く、小回りが利かないのでちょこまか動かれるとやり難いだろう。


 だが、ディアブロシワームはダンジョンで産まれた魔物なのでダンジョンの地形を無視して天井、壁、床を自由に移動出来るので全く意味はない。 これは細やかな抵抗だ。


 自分が囲まれた事に気付いたディアヴロシワームは、早速地中に潜り込んだ。 ダンジョン外で産まれた生物はダンジョンの地形を無視できないので、為す術がないフレイア達はディアヴロシワームの攻撃に備えて警戒している。


 やがてディアヴロシワームは天井から顔だけを出して、その大きく開いた口からドブのような色をした体液を吐き出した。

 そんな体液は回避していたフレイア達には当たらず、地面だけを溶かした。


 体液を吐き出し終えたディアヴロシワームはそのまま天井に引っ込んでいくのではなく、真っ逆さまにその長い胴体を晒しながらマイペースに地面へと潜っていく。 恐らく頭部からしか潜れないのでそのまま引っ込んでいかなかったのだろう。


「今ですわ!」

「全力でいきます!」

「手持ちの種、半分いきます!」


 ちなみにラウラは自分で魔法を放ちながらも種から成長した自生型の植物にも攻撃させていた。 恐らく植物による自動攻撃は自分の意識を傾けなくても良いのだろう。


 そんな隙だらけなディアヴロシワームの胴体に七方向から魔法と、植物による爆発する種や、貫通力のある種が放たれると、一直線に地面に潜っていたディアヴロシワームは胴体を揺らしながら、それでも懸命に潜り続ける。


 すると、天井から地面に伸びるディアヴロシワームはその胴体を残しながら、次は横の壁からその口だけしかない頭を出して、ドブのような体液をフレイア達に目掛けて我武者羅に吐き散らす。


 そんな攻撃を躱す為に魔法を放つのを止めたフレイア達は少しの飛沫にも触れないように回避に専念する。

 幸い、ディアヴロシワームのような巨体でも窮屈に感じない程度の広さはあったので、回避に困る事はなかった。



 やがて誰にも手傷を負わせられないディアヴロシワームはその大きく長い胴体に余すことなく切り傷や火傷痕などを残しながらも懸命に生き残ろうと、縦横無尽に壁などを潜行して体液を吐きかけると言う戦法を繰り返していた。 こいつにはこれ以外の攻撃方法が無いのだろう。


 ディアヴロシワームの戦い方的に、大人数を皆殺しにするのに特化しているので、この少数を相手にするのは明らかに不利なのだ。


「今よ! 動きが鈍ってきたわ!」

「…ラストスパートだぜぇ!」

「てえええええい!」


  弱って来て動きが鈍くなっているディアヴロシワームに止めを刺そうと、今まで以上に苛烈な魔法の集中砲火が始まった。


 そんな猛攻に耐えられる程の体力が残っていないディアヴロシワームは壁を潜行したままの姿で息絶えた。


 壁に埋まっている部分は、ダンジョンの地形に干渉出来ない俺達ではどうしようも無かったのでそのままだ。


 もしかしたらこの壁には、俺達より前に来ていた冒険者に倒されたディアヴロシワームが埋まっているのかも知れない。

 いや、ダンジョンの欠損扱いされて消滅させられたりして自動的に修復されるのかも知れない。


 ここに居るディアヴロシワームが死んだ事により、溶けた地面が修復され始めていた。


 そんなボス部屋を進んで次の階層へ下りていく。


 ……さて、今日は時間的にここまでだろうな。 ……明日からは休校だしレベル上げしながらダンジョン攻略だな。

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