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第189話 原型の異形

 微妙な反応に少し傷付きながら威圧感へと意識を向けると違和感を感じた。


 おかしい。

 気配は近付いて来ているのでそろそろ姿が見えてきても良い頃合いだと思うのだが、一向に姿が見えない。


 そんな違和感を感じていると、突然発生した大きな地震が、人間か魔物かを問わず俺達を襲った。



「───グオオオオォォォォ──」



 そんな地震に紛れ、遠くで轟く不気味で重厚な咆哮があがる。

 途轍もない威圧感、地震に続き、この咆哮が連続して発生することにより、周囲の混乱はより一層酷いものになっていた。


 その場に蹲る者も居れば、武器を捨ててさっさと逃げる者や大声で叫んだり泣き喚いている者など本当に混沌としている。



 そんななか、断続的に轟く咆哮がだんだん大きくなり近付いてくる。 それにつれ、地響きも大きくなっていく。

 恐らくと言うか、ほぼ確実にこの咆哮の主が威圧感の正体なのだろう。


「──グオオオオオオオォォォォォォォッッ!!」


 地割れが発生するほどの一際大きい咆哮があがると、大きくなっていく地割れが周囲の人間も魔物も、殆ど呑み込んだ。


 俺はフレイア達をゲートで地割れの外へ運んでから地割れの様子を眺める。 あの地割れから現れるであろう、強者の登場を見届けるためだ。


 蹲り怯えていた者も泣き喚いていた者も、萎縮していた魔物も、等しく今は叫び声を反響させながら地割れにより発生した大きく深い奈落のような穴へと呑み込まれていく。 その様はまさしく阿鼻叫喚。 まさに地獄だ。


 その穴の周囲から俺達以外の生物の大半の気配が消えた。 残っているのは、早めに危機を察してその場から離れていたマテウスやドロシー、大盾の男などの強者の部類に入る者達だけだ。


「うげぇ……こりゃひでぇ……早めに大盾の役割をほっぽって逃げて良かったぜ……」


 大きく開いた穴を遠巻きに眺めてそう言うのは大盾の男─ネッドだ。


「一体何が……? ……マテウスさん……」

「分からないけど、警戒しておこう」

「そうねですね……」


 不安定な心を落ち着けるためにマテウスを頼るが、マテウスは励ます事もせず言う。 ドロシーは溜め息を吐いてから呆れを顕に頭を振った。 前途多難だ。


 そんなやり取りを聞き流していると、何の前触れもなく、穴から黒い霧が地面を這うように漏れでて来た。

 そしてその黒い霧に紛れて何かの影が覗いている。


 すると、まだ全貌が見えないその影は口を開け地面を溶かす液体と、トリモチのような粘着性の高い粘液を吐き出した。


 この黒い霧に、粘着性の高い粘液、驚異的な溶解液。


 俺はこの見覚えのある……と言うか体験した事があるものの組み合わせに、驚きと期待、それに喜びなどと言う様々な感情を抱いていた。

 以前のように怯えはない。


 俺は包みに包まれたプレゼントを開封する子供のようなウキウキを胸に、風魔法で突風を発生させて黒い霧を吹き飛ばす。


 霧が霧散して影が取っ払われたそこに居たのは、様々な魔物の部位を持つ魔物──キメラだった。


 四足歩行で獅子の顔に、ステンドグラスのような鮮やかな色合いの翼、四本全てが異なる様子の足に、百足の胴体が二本尻尾の代わりのように付いている。


 遺跡世界で見たあいつとは随分違う容姿だが、元と複製では性能や見た目が異なる事があるのだし、見た目はあてにならないだろう。

 重要なのはステータスだ。


 そう考えた俺はあのキメラへ鑑定を発動させた。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

名前:アビス

種族:異質同体キメラ

Lv347

MP :63,892

物攻 :63,942

物防 :63,864

魔攻 :63,841

魔防 :63,894

敏捷 :63,960


固有能力

【深淵】【悪食】【成長速度倍加】【纏衣(死骸)】


能力

【咆哮】【威圧】【超再生】【狂化】【吸収】【不動】【加速】【飛行】【豪腕】【溶解液】【粘液】【黒霧】【念話】


称号

特殊個体 名前持ち 原型 知る者

__________________________




 名前も似てるし、何よりスキル構成などがよく似ている。 見覚えのないものや、見覚えのあるもの、それらの統合系や上位互換とかだ。

 そして【悪食】の固有能力や、称号には『原型』ともあるしこいつがアルヴィスのベースで間違いなさそうだ。



 ……と言うかアルヴィスもアビスも他の魔物とステータスの表記が全く違うんだがこれはなぜだろうか?



 まぁ分からない事を考えてもしょうがないし、放置しよう。 ……んで、【念話】か。 念話は一応俺も持っているから、もしかしてあいつと会話ができたりするんだろうか? 俺と馴染み深い魔物の元となる生物だからなるべく平和的にいきたいし、こんな貴重な面白要素をこんなムードの欠片もない場所でただ殺してしまうのも勿体ない気がするから、できれば対話して穏便にここを去って貰いたい。


 俺はそんな淡い希望を抱いてアビスへと話しかけた。

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