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第183話 あっちもこっちも大騒ぎ

「お、オリヴィア殿! 一体どういう事なのですか!?」


 秋とフレイアが去っていった後、アレクシスが顔面蒼白でオリヴィアに言う。


「大丈夫ですよ、国王様。 フレイアだけならともかく、クドウ様がいらっしゃるのですから」

「……オリヴィア殿はクドウ殿が魔物の大群を相手に、人を守りながら相手にできると…?」

「えぇ。 クドウ様ならその程度、雑作もなくこなせるでしょう」

「馬鹿な……」


 秋へ厚い信頼を寄せている様子なオリヴィアの話を聞き、そんな事があり得る筈がないと頭を振るアレクシス。


「追わねば……」

「……え……?」


 思い出したかのように呟いたアレクシスは、そのまま階段を駆け下りて秋フレイアを追い始める。

 間の抜けた声を上げたオリヴィアは少しの間呆気にとられたものの、すぐにアレクシスを追い始めた。





 王城の廊下を全速力で走るのは、アレクシスと、オリヴィアだ。

 アレクシスは威厳溢れる華美な服装で王冠を被り、オリヴィアは気品溢れる美麗なドレスで。


「……っ……危険、です! ……国王……様……!」

「……んな事ゆーてる場合ちゃうやろ! あんたの娘とその……恋人? やろが!」


 息を切らしながら言うオリヴィアと、口調を乱れさせて振り向きもせずに答えるアレクシス。

 通りがかった騎士や使用人は目を丸くしてそれを見送る。


「く、クドウ様がいれば……っ……はぁっ……何も問題はっ……! ないっ、のです……!」

「そんなん知らんがな! 例え大丈夫でも万が一があるやろ! 何を呑気に胡座かいとんねん!」


 やがてオリヴィアは体力が尽きたのか、立ち止まり、両膝に両手をついて息を整える。


「こ、国王様ぁ!」

「え、あの、どうされましたか……? オリヴィア様。 何やらただ事ではなさそうでございますが……」


 立ち止まり叫ぶオリヴィアに、偶然通りがかった執事が笑みを引き攣らせて問いかける。 この執事は先程オリヴィア達を客間へと案内した執事だ。


「国王様が、魔物の居るところへ……!」

「な、なんですとぉ!? ……おい! そこの!」

「え、僕ですか……?」

「陛下が最前線に向かわれたそうだ! 今すぐ兵士を集めて後を追え!」

「え!? わ、わかりました!」


 オリヴィアから話を聞き、顔を青くして側の部屋からでてきた兵士を呼び止め指示をする執事。

 ……そして執事も慌ただしく去っていった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「どうだ? 緊張するか? フレイア」

「そうね……勢いで言っちゃったけど凄くドキドキしてるわ……」


 今、俺は王都を走っている。

 そこでは既に避難誘導が行われていた。 なので避難誘導をしている衛兵を【探知】で見つけ、上手く躱して王都の外へ向かう。


「大丈夫だろ。 今のお前ならでしゃばり過ぎなければ安全に捌ける筈だ」

「そうかしら……」


 ちなみに俺達は登城すると言う事もあり正装だ。 この貴族服は見た目が派手で気に入らないし、着るのも面倒だった。 もう二度と着たくないな。

 それに当然だが動き難い。


 なので一旦屋敷戻って着替えにいく。 この事は既にフレイアに話して了承済みだ。


「一応忍び込む感じで行くぞ。 引き止められると厄介だ」

「分かったわ」


 ……丁度良いな。 クラエルの門番力を試す良い機会になりそうだな。





 屋敷に到着した俺達は【認識阻害】を発動して正面から堂々と入る。

 他の場所は結界が張られているので侵入できないのだ。


 ……これじゃあ、門番力が試せないじゃないか。


 そう思い少しの落胆しながら歩いていると


「あ、アキー!」

「……は?」

「……ん……? ……あ、あれぇ……?」


 クラエルがこっちを見ている。


「どうした?」

「アキが帰ってきたよー!」

「いや、居ないですけど……」


 門番Aがいきなり何かを言ったクラエルに話しかけるが、門番Bがクラエルの言葉を否定した。


 なぜクラエルに見られているのか分からないが、取り敢えず黙らせないとな。


 俺はクラエル向かって口に人差し指を当てて、シーッとして黙るよう伝える。


「! 分かったー!」

「「何が……?」」


 口に両手を当てて塞ぐクラエル。


 おい、黙れって言ってんのに返事をするなよ。

 まぁ、これでクラエルは黙らせられたしさっさ着替えに──


「ふ、フレイア様と、クドウ様……!? い、いつの間に!?」

「……もしかしてクラエル、最初からお前には見えていたのか……?」

「んーんーんー」

「……はぁ……クラエル、もう喋って良いぞ……」

「アキーお帰りー!」


 門番A、Bに俺達の事を意識されすぎたのだろうな。

【認識阻害】はあくまで自分の存在を分かり難くするだけなので、居る、と意識されれば意味がないのだ。


 あぁ、なぜ門番が徴集されずにここに居るのかと言うと、他人が雇っている者はいくら国王でも勝手に徴集できないからなのだろう。

 じゃあなぜ避難もせずにいまだにここにいるのか。 簡単だ。 主人の許可なく勝手な行動はできないのだ。つまりこの門番や使用人はオリヴィアが帰宅し避難の許可を出すまで避難できないのだ。



「た、ただいま……」

「登城されたお二人なぜここにいらっしゃるのか。 聞かせて貰いますよ」


 頬を引き攣らせて、ただいま、と言うフレイアと俺を交互に見やり、そう言う門番。


「いやです」


 俺はそう言ってフレイアの手を引いて屋敷へ駆け込んだ。


「あ、お待ち下さい! 逃がしませんよ!」

「門番さんが仕事をサボってまーす!」


 門番が追ってきたのでそう叫んで人を呼ぶ。


「ひ、卑怯ですよー!?」


 そう言う門番の声はどんどん遠ざかって行った。

 どうやらサボりだと思われたくなくて、追跡を諦めたようだ。


 一先ずはやり過ごしたが、俺達を意識して警戒しているであろう、あそこをどうやって抜けようかと言う新たな問題が浮上した。


「取り敢えず着替えよう」

「そ、そうね」


 俺達は着替える為にそれぞれの自室へ戻った。

 心配なのが、さっきの騒ぎを聞きつけた使用人が俺達を探しに来ることだ。

 門番さんが仕事をサボってまーす! 等と騒いだのだから絶対に俺達がいるのを知られたのは確定だ。


 幾らあの場を乗り切るためとは言え、もっといい方法はあっただろうな……



 そう自分軽率な行動に溜め息を付きながら自室の扉を開けると、そこにはクロカとシロカが居た。


 あー……そう言えばそうだ。 完全に意識してなかった。

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