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第182話 要石

「それではいきましょうかクドウ様」

「はい」


 今からオリヴィアと王城へ向かう。

 もちろん王都全域に結界を張るためだ。 王城に結界の基礎を設置してある理由は簡単で、王都内で一番安全だからなのだろう。


 ちなみに今日までも毎日移ろい喫茶へは赴いていたが、冬音と春暁との関係にこれといった進展はなかった。

 どうすればいいんだろうな。


 そんな事を考えながらオリヴィアとフレイアと馬車に乗る。 そして馬車の周りを騎手が囲む。

 フレイアがいるのは俺の護衛と言う役割が影響している。





 この間馬車で街道を走った時と違い、王都の道は舗装されているので尻が痛くなる事はなかった。

 そう言えばこの間馬車に乗った時もオリヴィアとフレイアがいたっけ。



 それからは何事もなく、王城に到着した。


 門の手前で馬車から下りた俺は王城を見上げる。

 大きい。 とにかく大きい。 普段は全く意識していなかったが、こんなに存在感があったんだな。


 

 俺が王城を見上げていると、門の内側でお辞儀をしていた執事ような男が言葉を発した。


「お待ちしておりました。 オリヴィア様、フレイア様。 ……そちらの方が……?」

「はい。 この方が結界に魔力を注いで下さる、クドウ様です」

「……ん……あぁ……アキ・クドウです」


 オリヴィアがこっちを向いているのに気付いた俺は王城から執事に視線を移してそう挨拶をする。

 一応丁寧に接する。 相手はそれなりの身分だし、くだらないいちゃもんをつけられくないからな。


「……クドウ様ですね。 では皆様こちらへ。 ご案内致します」


 執事がそう言って王城の中へ歩いていった。 遅れないように俺達も後を付いていく。



 王城内は絢爛や豪奢と言うより品があり、華美と言ったような感じだ。

 丁度不快に思わない程度に華やかでどことなく威厳があるように思える。


 案内されたのは謁見の間等と言う立派な場所ではなく、客人もてなす為の客間だった。


「よくぞ参られましたな。 オリヴィア殿、フレイア殿。 ……と、そちらの……」

「アキ・クドウです」

「クドウ殿か。 ……申し遅れましたな、私はミレナリア王国国王、アレクシス。 アレクシス・ミレナリアだ。 よろしく頼む」


 国王──アレクシスはそう言って立ち上がり手を差し出してくる。 握手を求めているのだろう。 結構友好的だ。

 まぁ……素直に握手しておこうか。


 俺とアレクシスはグッと握手をする。

 アレクシスの掌は、ガッシリしていて結構鍛えられているのが分かった。


「それで、結界に魔力を注がれるのはクドウ殿なのですか? オリヴィア様」


 握手を解いたアレクシスは再び俺達の正面に座ってそう言う。


「はい。 ……クドウ様の魔力量なら問題なく結界に魔力を注げるかと思います」

「そ、それほどなのか……ふむ。 ではクドウ殿、早速お願いしても宜しいか?」

「分かりました」

「うむ。こっちだ」


 アレクシスが立ち上がり歩きだしたので俺達もそれに付いていく。




 案内されたのは、王城のてっぺん付近にある場所だ。 ここは四方に壁がなく、王都が一望できる絶景スポットだ。 そこの中心には立体的な菱形がある。

 恐らくこの菱形の物体が結界の基礎なのだろう。


「うわぁ……絶景ね……」


 目をキラキラさせてフレイアが言う。


「そう言って貰えると嬉しい。 ここの景色は私も気に入っているんだ」


 アレクシスは手摺に手を掛け、風に吹かれながら王都を眺める。


「おっと、そうではなくて……これだ。 これが結界の要だ。 これに手を翳して魔力を流せば魔力を注げる。 頼むぞクドウ殿」

「分かりました」


 さっさと終わらせて冬音と春暁に会いに行こう。


 そう思い、俺は菱形の物体に魔力を注ぐ為に手を翳す。

 ……待て、一応鑑定しておこう。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【要石】


結界を構築するのに必要な石 魔力を注ぐと起動できる


【退魔】 【魔力波隠蔽】

(必要魔力量:4,309,615)

__________________________



 見た感じ危険は無さそうだし、必要魔力量には全く問題なさそうだ。

 こう言う細かい警戒を怠らないのが間抜け脱却への道だと思う。


 危険性はないと判断した俺は要石に魔力を注ぎ始める。


 すると、今まで透明なガラスのようだった要石は淡い紫色に輝きだした。 ジャンクから教わった【魔法武器創造】も淡い紫色だったし、魔力と言うものは全てこの色なのかも知れない。


 いつ見ても綺麗な輝きだと思う。 地球に居た頃街中で一人寂しく見たイルミネーションなんかより、こっちの方が数倍は綺麗だろう。

 淡い紫色と言う一色だけの輝きなのにも関わらず。



 俺が発光する要石に少し気を取られながら魔力を注いでいると、心臓を跳ねさせるようなけたたましい警鐘と共に階段を駆け上がってくる兵士がいた。


「国王様! 大変でございます!」

「失礼致しますオリヴィア様。 ……どうした、何があった?」

「魔物が、また魔物の大群がこの王都に向かって接近しています!」


 またかよ。

 どうやら魔物にとって複雑に混ざった異種族魔物の波長は徒党を組んで潰すまでに不快らしい。


「こんな短期間で二度も……早々にこの結界を張れる方が見つかったのは僥倖だったな。 ……それで、どのくらいで王都に到達するのだ?」

「5分もあれば先頭にいる魔物が到着するでしょう」

「なら急いで衛兵に避難誘導をさせろ。 それ以外の戦える者は全員魔物の到達に備えさせろ。 今回も前のように助けてもらえるとは思うな、と伝えておけ」

「はい!」


 返事をした兵士は転けそうなほど素早く階段を駆け下りていった。 それからは下の階からさっきの兵士の怒号のような指示が聞こえてきた。


「オリヴィア殿とフレイア殿、クドウ殿も避難を致しましょう」


 善意からそう催促してくるアレクシスにフレイアが口を出した。


「……お母様、私も戦いに行ってもよろしいでしょうか?」

「……フレイア殿!? 一体何を言って……!?」

「クドウ様が御一緒なのでしたら私からは何も言いません」


 俺を巻き込むなよ。 このまま結界を張るのに集中したかったのに……

 ……まぁいいか。


「……らしいが、どうするんだ? フレイア」

「それでもいいわ、行きましょうアキ!」


 階段を駆け下りるフレイアを追う。


 勝手に要石に魔力を注ぐのを止めてしまったが、アレクシスは俺達を避難させるつもりだったのだから別に問題はない筈だ。

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