第174話 魔物の大群
空が赤と黒に分かれた夕方と夜の間のようになって来た頃、相も変わらず王都をうろうろして異種族を興味深く見ていた俺は兵士が慌ただしく駆け回っているのが目についた。
「騒がしいのだ。 何かあったのではないか?」
「アキの事じゃからどうせ首を突っ込むじゃろうな」
二人はもう俺の事を大体理解しているようなので王都の外へ向かう俺に付いてくる。
異種族の大移動と言い、大勢の兵士が慌ただしく駆け回る程の事態。
さて、一体何が起こっているのだろうか。
兵士の目につかないよう、人通りが皆無な路地裏で【認識阻害】を発動させ、効果共有したクロカとシロカと共に騒がしい王都の外へ、飛行して向かう。
王都の外では兵士達が高い壁を背にして陣形を組んで戦闘態勢を整えている。
兵士達が睨む平原は見た感じ何か異変が起こっている感じがしなかったが、【遠視】を使って初めて異変に気付く事が出来た。
それは、街道を覆い尽くすように魔物が押し寄せて来ていると言うものだ。
ティアネーの森から、街道を挟んで向かいにある草原から、街道の向こう側から魔物がやってきている。
それこそ雪崩のように。
「なるほどな。 これは大騒ぎになるわけだ」
もしかして今王都にいる異種族達はこれから逃げる為にやってきたのか?
いや……ならもっと異種族達が騒いでいてもおかしくない。
まぁ、王都に向かう道中にあんな大群を見なかったと言う事は、あれは異種族達が王都に到達してから発生したものなのだろう。 それか運良く出会さなかっただけか。
……何にせよこれは魔物を大量に喰らうチャンスだ。 今はそれ程強くなることに拘っていないが、それでもこんな大きなチャンスがあるなら積極的に行動するべきだろう。
「うぉ、何なのだあの魔物の群れは!?」
「どうするのじゃ。 アキよ」
「俺達で全滅させる」
「なぜじゃ?」
「俺とお前らが強くなる為。 それにお前らが人化状態での戦闘に慣れる為だ。 丁度その着物での戦闘に問題がないかも確認したかったしな」
「なるほどなのだ」
本当は面白そうだから、ってだけなんだがな。
他のはたった今適当に思い付いたからそれっぽく言っただけだ。 ……それが結果として俺達に有益となるのだから問題ないだろう。
……そうだ。 せっかくの大群だし、盛大に暴れてみようかな。 ラウラの馬車を助けた時のような感じに変形して、魔物の群れを蹴散らそう。
なぜ急に暴れたくなったのかは分からないが、まぁいいだろう。 たまには、はめをはずしてはっちゃけるのも大事だろうしな。
「じゃあ、行くぞ」
そう言って俺はクロカとシロカと共に魔物の群れへと飛び立った。
ちなみに二人は人化状態でも身の丈にあった翼を生やして飛べるのだが、【認識阻害】の効果を共有するため、体に触れないといけない。
だが、二人に翼を生やして飛ばれると俺の飛行の邪魔なので二人を俺が抱えると言う形で移動している。
「うるさいのだ……」
そう言うクロカの声は魔物の大移動による地響きの音で聞き取り難かった。
今、俺達は魔物の大群を上空から眺めている。
位置的には兵士と魔物の間だ。 ……少し魔物寄りの位置かも知れない。
「アキ、準備が出来たら童達を離すのじゃ。 そこからは童達で飛ぶからの」
「分かった。 ……じゃあ離すぞ」
「久し振りに暴れ回るのだ!」
意気揚々と殺気満々で言うクロカとシロカを落とす。
二人は途中までそのまま落下し、魔物の大群にある程度近付いてから翼を生やして自分で飛行する。
そして、攻撃を加え始めた。
さて、どんな風に変形しようか。
魔物
↓ ↓ ↓
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草原 | | ティアネーの森
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| |
| 街 |
| 道 |
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兵士
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
王都




