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第173話 異種族

 フレイアに揶揄われながら帰路についていると、珍しいものがさも当然のように闊歩していた。


 エルフや、ドワーフなどのファンタジーの定番種族だ。


 俺は今この時までそういった種族を見てこなかった。

 なぜならそういった種族は人里離れ、ひっそり暮らしているからだ。 エルフは森にドワーフは山奥に。


 それがなぜ今になってこうして人前に姿を表しているのか。


「どうして亜人の人達がこんなに居るのよ……?」


 亜人とはエルフ、ドワーフ、その他獣人種の一般的な呼び方だ。

 他にも魔人と呼ばれる事があるが、こいつらはそう呼ばれるのを嫌うので亜人と言う呼び方が普及している。


 と言うかそもそも魔人とは元々は人間なので、産まれた時からエルフ、ドワーフ、獣人、なこいつらは魔人では無いのだ。


 ……人間がどうして魔人になるのかは詳しく分かっていないが、ゾンビなどのアンデッドに殺された人間が例え腐敗していなくても腐乱死体のような姿で蘇る事から、自分を殺した魔物と似た生態になると言われている。


 ……どうでもいいが、エルフ、ドワーフ、獣人を始めとした亜人種は殆どが長命だ。種族や個人によっては千年経っても幼児体型だったりする程に。


 

「フレイアは何か知らないのか?」

「知らないわよ」


 見れば俺達だけでなく、他の通行人も異種族達を物珍しそうにジロジロ見ている。


 異種族の人からすれば居心地悪いんだろうな。





「おかえりなさいませ」

「「ただいま」」


 クロカ、シロカ、いつものメイドさんに出迎えられる。


 ちなみにクラエルは門番の仕事を学んでいるようで、門番さんの真似をして立っていた。

 門番も立派な警備だ。


「そう言えばエルフやドワーフが大勢街に居たんだけど、お母様から何か聞かされてない?」

「いえ、特に何も……」

「そう。 じゃあ大した事じゃないのかもね」


 フレイアはそう言って自分の部屋に帰っていった。

 俺もクロカとシロカを連れて自室へ戻った。 が、部屋着に着替える事なく二人に話しかける。


「一緒に出掛けよう」

「いきなりどうしたのじゃ?」

「さっきフレイアも言ってたけど、異種族が大勢街に居るんだ。 きっと俺の興味を引く事がそこら中で起こってるだろうからお前らと見て回りたいなって思ってな」

「なるほどアキらしいのだ」


 そうして俺は二人の着替えを催促する。

 ちなみに二人の普段着は着物にする事にした。

 龍って和なイメージがするからな。

 そして竜は洋って感じがするから、今後もし竜種を仲間にしたらドレスを着させようと思う。


 言うまでもないだろうが、着物の色はクロカが黒でシロカが白だ。

 一応この格好で戦闘する可能性も考えて裾が短く、スカートのようになっている着物に改良している。

 それと、腰の辺りには尻尾がいつでも出し入れできるように穴が開けてある。 ……と言っても、そのままじゃ尻尾をしまった時に肌が露出してしまうので、その穴を塞げる布を被せてある。これはマジックテープのように簡単に下の布とくっつけられるようになっているので、どんなに強い強風でもヒラヒラ浮いて肌が露出する事はない。


 ちなみにちゃんと下には同じような作りの短パンを履かせているので下着が見える事は無い。 ……自分でやっておいてなんだが、残念だ。


「よし行くぞ」

「……スースーするのだ」

「…………はぁ……」


 ……この着物は二人にあまり好評ではない。

 だが、新しく作り直す気なんかないので無視だ。 スースーして寒いらしいからお詫びに今度はニーソックスか何かを作ってやろう思う。……これは別に趣味ではない。



 いつものメイドさんに見送られ、俺達は街へ繰り出した。 クラエルが子供のように頬を膨らませていたのには少し罪悪感を感じた。


 そんな事より王都に居る異種族を見て回るのだ。


 エルフ、エルフ、犬獣人、蜥蜴人、ドワーフ、猫獣人、犬獣人、エルフ、ドワーフ…………


 本当に色々な種族が歩いている。

 ちなみに犬獣人、猫獣人──と言うのは文字通り犬の獣人と猫の獣人と言う事だ。

 獣人と言うのはただの獣人種の総称に過ぎず、犬獣人、猫獣人……と、このように細かく分けられている。



 やがて歩いていると、一つの怒号が飛んだ。


 異種族に対して排他的な人間至上主義者がここぞとばかりに異種族を非難しているのだ。 「人間のなり損ないが!」だの「人間の姿を模した魔物め!」とかそんな感じだ。


 まぁ……誰にも相手されず距離を開けられているだけでなんの害もないのだが。

 当の異種族達は見向きもせず平然と歩いている。 はなからこうなる事は想定済みだったような感じだ。


 と、そこで一人のエルフの男が排他的な男に話し掛ける。

 ちなみにエルフは例に漏れずどいつもこいつも美男美女だ。


「そこの人、そう言うのは止めた方が良いですよ」

「なんだお前は」


 そこからただの注意は口論へと発展し、周囲の人々は今まで以上そこから距離をとっていた。


 俺達はそこから場所を移し、さらに別の場所を彷徨き始めた。



 ……それにしてもなぜ今まで関わりを断っていた異種族が今になって人前に、それも大勢が姿を表したんだろうか。

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