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第171話 久遠 季弥 1

 騒ぎを聞きつけやってきてみれば、妻の夏蓮と先程初めて出会ったばかりの男性が抱き合っていた。


 しかしどうやらその後、話を聞くにこの男性は僕達家族が日本残してきた息子だと言うではないか。


 最初こそ浮気か? と疑いはしたが、息子だ等と言われれば混乱は深まるばかりだった。


 だが、言われてよく見れば昔の秋の面影がハッキリと認識できた。


 夏蓮は制服やオムライスを頬張る時の仕草で確信したらしいが、生憎と僕はそう言う人間の変化や様子に疎い。

 なぜ疎いのかと聞かれれば、それは一々そんなところを見ていないから、と言うのもあるしそもそもそんな予想外の事態を、存在すると思っていないものをどうして認識できようか。


 ……とにかくこれで家族は揃った。 これはとても喜ばしい事だろう。


 だが、問題があった。


 冬音と春暁と秋の関係だ。


 二人に秋がお兄ちゃんだよ、と言っても受け入れられないのは薄々分かってはいた。

 冬音はともかく春暁は秋の事を見たことすらないのだ。

 赤の他人を家族だと言われても認めづらいのが当然だろう。


 それが分かっていても、僕にはどうすることも出来なかった。

 秋には申し訳ないが、自分たちで歩み寄って貰うしかないだろう。


 ……いや、それも厳しそうだ。

 冬音は感情をあまり面に出さないし口数も結構少ない。 そもそも秋と会話する事すら難しいだろう。


 春暁は冬音とは違い、感情を面に出すし口数も多い。  会話は成立しそうだが、春暁は自分の考えを大事にするから、秋を最初に一度で否定してしまうと和解するのは……ほぼ不可能と言っても良いだろう。


 親としては子供達には仲良くしていて欲しいが……難しい問題だな……



「アナタ」


 僕が思案していると、躓きながら夏蓮がやってくる。


「どうしたの?」

「子供達の関係についてなんですけど」

「あぁ、僕も今その事を考えていたところなんだ」


 そうして子供達が寝静まった夜中に僕達は話し合った。

 話し合いの結果を纏めると、何とかしたいけどどうしようもないから基本は静観するしかない、と言う事になった。 勿論、仲を深めるチャンスが来ればバレないようにアシストはする。

 情けないが、僕達にはこの程度の事しかできないのだ。



 一通り考えて終わった僕は記念すべき今日の事を振り返り始めた。


 スリを捕まえて秋と詰所に行った事、夏蓮と秋が抱き合っていた事に驚いた事、夏蓮からの説教を止めてくれた事、秋と隣に座って会話した事、兄妹弟間の仲が想像以上によくなかった事、失言で秋を傷付けてしまった事、手を振り去っていく大きくなっていた秋の背中。


 今日一日で一生分の驚きと変化を体験した気がするな。




 それにしても、秋はこの家に住まないにしろ家族は揃ったんだよな。


 ………なら昔からの考え通り、記念にこの店の名前を変えるべきだな。

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