第16話 自己中
俺はその後、俺が呼んだ警察に保護された。
しかし、八歳の子供が仕方なかったとは言え、人を殺したんだ。暫くは人格が歪むのを防ぐために矯正施設みたいな所に入れられた。
自分の事しか考えない自己中な俺は、正常な人間の皮を被り、無事に歪みがないとして施設を出ることができた。
しかし、親戚との関わりが全く無かった上に人殺しをした子供を引き取るようなお人好しはいなかった。
だから俺はそう言った、身寄りの無い子供達を育成する施設で過ごすことになった。
施設の人達は身寄りの無い子供のために頑張っていた。
職員は学校と掛け合うなどして、自らを親と称し学校に通わせてくれた。
そこからは普通の日々を送った。
俺は正常な人間のふりをしていた甲斐もあって、周りの人からは我儘も言わないし、一度決めた事はちゃんとする良い子と言う評価をされていたっぽい。
しかしそれは間違っている。
本当は俺は我儘を言いたかった。本当は決めた事なんか知った事じゃないとその日の気分で行動したかった。
結局一番は自分の事。
そこからは特に何事もなく時間が経過し、例の交通事故が起こり、テントラに蹴飛ばされ追憶の宝玉に触れるまでだった。
俺は宝玉から手を離し、ボロボロの体で立ち上がる。
「早く治してくれ」
「久しぶりの第一声がそれかい?」
俺はもう一度自分の人生を歩んできたので十六年ぶりにテントラに会った事になる。
春に交通事故を起こしたからまだ十六歳だ。
「早くしてくれ。時間がもったいないから」
「……まさか本当の君がここまで自分勝手とはね……分かったよ。で? もう僕に襲いかからないの?」
「今の俺じゃ勝てない。 ……まぁ、俺が遺跡から出たら絶対に殺してやるから安心してくれ」
「ははは……それは凄く安心できるな」
俺はこいつには俺を殺す気がないのがわかっていた。 いや俺を殺せない理由があるんだろう。
だから安心して、俺を中心に話ができる。
「はい治ったよ。そんではい。いってらっしゃーい」
「…………」
俺はテントラが出した黒い渦に向かって歩きだす。
「いってきますぐらい言ってくれてもいいんじゃない?」
「お前とそんなに親しくなったつもりはない」
アルヴィスは口をモグモグさせていた。多分というか確実に俺の頭を咀嚼しているのだろう。
つまり白の世界は時間が止まってるか、もの凄く時間の流れが遅いと言う事なのだろうな。
俺は全身をスライムにし、隙だらけのアルヴィスの鼻と耳から侵入する。
そのスライムの体からは無数の手が生えていた。俺は奥に奥にと体内に入り込みながら、そして手はアルヴィスを体内から傷つけている。
アルヴィスが痛みに耐えられず暴れているのだろう。体内いる俺はミキサーに入れられた物の気分を味わっていた。
俺は揺れに耐えるため、攻撃するために、色んな臓器を掴む。どれが心臓かなんか分からないので掴んだそばから手当たり次第に潰していく。
"レベルアップしました。"
俺はその声を聞き、揺れがしなくなったアルヴィスの体内から這い出た。
脅威だったアルヴィスはこんなにも簡単に絶命してしまった。
拍子抜けした。それだけだ。
俺の目的はこの遺跡から出て、あのテントラを殺す事。 …………別にあの子供の事は関係ない。
ただ、テントラが俺に殺されたがっている気がしたから殺してあげるのだ。何故テントラが死にたがっているのかは全く不明だが。
なんにせよその過程で出てくる敵は全て俺の踏み台だ。
容赦なく殺して喰う。
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名前:久遠秋
種族:異質同体人間
Lv24
MP :484
物攻 :500
物防 :491
魔攻 :470
魔防 :468
敏捷 :499
固有能力
【強奪Lv2】 【悪食】【スライム化】【角兎化】【単眼蝙蝠化】【殺人狼化】【毒蛇化】【大百足化】【水怪鳥化】【爪猿化】
能力
【身体強化】【金剛体】【威圧】【再生】【豪腕】【飛行】【粘液】【溶解液】【黒霧】【狂乱化】【獅子の咆哮】
称号
異質同体人間
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レベルアップしたときに【強奪】がLv2になった。
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【強奪Lv2】
身体強奪
スキル強奪
発動条件:自分が殺した相手を喰う
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ついにはスキルまで奪えるようになった。
スキル強奪はその名の通り、自分が殺した相手を喰うとスキルを奪う事ができるようだ。
正直、身体強奪で相手を喰えばそれだけで相手のスキルを再現する事ができる。
ならスキル強奪は身体強奪の劣化のように思えるが、そうでもない。
身体強奪でやっているのは所詮は真似事。
ちゃんと正規の方法でスキルを使えば、真似事は本物になり、完璧なパフォーマンスで実行できる訳だ。
だからこのスキルが手に入ったのはありがたい。
……それに、このスキルが無ければ【悪食】は手に入らなかっただろう。
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【悪食】
どんな異物も異常なく喰らえる
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もう本格的に人間辞めてきてる。
名前から効果は薄々理解していたが、実際に目にするとヤバいスキルなのがよくわかる。
【強奪】にピッタリのスキルだ。
ステータスを確認し終えた俺は、これからの自分の行動を考える。
俺は絶対に生きてこの遺跡を出る。
そしてテントラを殺す。
その後はどうするか……
あぁそうだ。せっかく異世界に来たんだ。日本にいた頃にできなかった事をしよう。できなかった生き方をしよう。
───それは
──俺が自由に生きること
──俺が気ままに生きること
──俺が楽しく生きること
──俺が面白く生きること
──俺が幸せに生きること
───俺は─────
─────俺を中心に生きる