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第159話 私は死ぬまで変わらない

 秋達が病室を後にしてダンジョン探索をしている頃、ベッドの軋む音を立ててラウラが体を起き上がらせた。


 ラウラは暫し静かに狼狽してから現状を認識し始めた。



 ──私は……確か……ティアネーの森でフレイアさんと……



 そして自分の意識が途絶える前までを思い出したラウラは、改めてもう一度状況を認識しようと見回す。



 ──病院……? と言う事は私は助かったの? フレイアさんが助けてくれたのかな?



 そんな風に自分がなぜ病院に連れて来られているのかを考えていたラウラの思考はノックの音で蹴散らされた。


「失礼しまーす」


 誰にも向けていない、独り言のような声色で言葉が発されると、扉が開かれた。

 扉を開いた主の足音がラウラのベッドまで一直線に向かってきた。


「……え? ……あ、目が覚めたんですね!?」


 ベッドを囲むカーテンが開かれて姿を表したナースは一瞬狼狽した後にすぐにハッとなり、自分が入ってきた扉へ駆けていく。

 先生ー!と言う大声と廊下をから室内まで響く慌ただしい足音を残して。



 数分後、ラウラのベッドの側に置かれた椅子に清楚な見た目の美人女医が腰掛けていた。


 今は検査を済ませた後で、簡単な問診をしていた。


「…………驚きました。 この調子ですと、リハビリをすれば以前となんら変わり無く歩けるようになるでしょうね。 ……いやぁ……運がよかったですね」

「あはは……運がよかった……ですか……」


 ラウラは女医の発言に、微妙な表情で愛想笑いを浮かべる。


「リハビリに関してはこちらで適当な人材を見繕ってリハビリの指導を致します。 完治したと判断が出るまでは入院と言うかたちで……」

「……はい。 分かりました──」




 女医もナースも居なくなり、一人の時間が出来たラウラはベッドに横になり、両の掌を眺める。




 ──凄い……貫通までしてた筈なのに……


 それにしても……運がいい……か。


 ……私は……馬鹿だった。 運なんて言う不確定で予測できない概念に胡座をかいて自分で考え行動し、あの状況を打破しようとしなかった。


 こんな事は既にあの時には理解していたけど、状況が落ち着いた今、もう一度しっかり認識できる。



 ……だけれど、それでも私はコレに縋りたい。

 私は弱いから縋る事しかできない。

 勿論、出来るだけ自分で考えて行動して出来るだけ抵抗はするけど、圧倒的強者を前にそんな事はするだけ無駄だろう。


 だから私は今まで通り予測出来ない不確定要素に救いを求める。 予測出来ないからこそ、そこには逆転のチャンスが潜んでいるのだ。


 これは救いに能動的であるか受動的であるかの違いであり、決してこれは諦めでは無い。 状況を打破しようと願っているから、祈っているから諦めではない。



 そんな言い訳を脳内で繰り広げるラウラは全く変わっていなかった。



 そしてラウラはふと、自分のステータスが気になった。


 あの時から何も出来ず寝込んでいただけの自分のステータスに変化があるわけ無いと頭では分かりながらも、本当に何気なく、ただ自然に『ステータスを確認しよう』と思い立っただけなのだ。

 





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

名前:ラウラ・ベール

種族:人間

Lv32

MP :318

物攻 :305

物防 :319

魔攻 :326

魔防 :322

敏捷 :315


固有能力

【植物操作】【】【】


能力

片手剣術Lv2 短剣術Lv5 拳闘術Lv1 魔法Lv4 魔力操作Lv3 投擲Lv2 家事Lv1 作法Lv2 祈祷Lv4 逃走Lv2 速読Lv1 苦痛耐性Lv2


魔法

火魔法Lv2

水魔法Lv2

土魔法Lv4

風魔法Lv3

氷魔法Lv1

雷魔法Lv1

光魔法Lv2

闇魔法Lv1

無魔法Lv2

聖魔法Lv3

時空魔法Lv1


称号

聖女(■命の女■の加護)

__________________________



 ──え?



 そこにはある筈の無いものが記載されていた。



 ──固有能力……? 加護……?

 ……なんでこんなものが追加されてるのか分からないけど取り敢えず加護から整理していこう。


 聖女(■命の女■の加護)

 これはあれだろう。 生死の瀬戸際に瀕した私を救ってくれた精霊か何かの加護なのだろう。聖女と言うのはよくわからないが。

 これだから運に縋るのは止められない。予測出来ずにいつも私を良い方向にも悪い方向にも導いてくれるから。





【植物操作】

 これは文字通り植物を操作できる固有能力なのだろう。

 丁度側にある花瓶に花が活けてあるし、これで試してみよう。 多分私へのお見舞いの花だろうし、私がどうしようと問題ないよね。



 ラウラは花を手にし、新しく得た固有能力を発動させた。


 すると、みるみる内に花は形を変え、一本の短剣へと形を変えた。


「おぉ……っ!」


 感激の声を漏らしたラウラは花の形を変え続ける。

 槍へ、斧へ、鎚へ、球体へ──


 その自由度は計り知れなかった。


 一頻り新たな能力を試したラウラは花を元の形に戻してから大切に再び花瓶へと活けた。

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