第148話 オークキング
放課後
いつものように噴水広場で集合する。
だが今日はギルドに向かう前に相談する。
「どうする? 今日もハイ・ミノタウロスのところに行くのか?」
「私はそのつもりよ」
機嫌が直ったのかフレイアが普通に会話してくれる。
正直この会話で、これを確認したかったってのもある。
ちなみに満場一致でハイ・ミノタウロスへ挑むって結論が出たので今日もハイ・ミノタウロスだ。
エリーゼとクルトは安全なところから魔法を撃っているのが後ろめたいのか、どっちでも良いと答えていた。
そのうち二人の近接戦闘の強化訓練でもしようか。
「ブモォォォォォォ…………」
今回は手加減をするなら、と言う事で俺もハイ・ミノタウロスと戦った。
俺が居た居なかったに関わらず、皆はハイ・ミノタウロスを昨日より苦戦せずに倒せていた。 昨日の戦闘でレベルアップしていたのだろう。
戦闘中に、向上した身体能力に驚きながらも上手く立ち回っていた。
「どうするんですの? まだ時間は余ってますけど」
「うーん……じゃあ次のボス部屋を覗いてから帰ろうよ」
と言う事で進む事になった。
進んだ先の道は基本変わらず、うねうねして一本道だった。 たまに曲がり角などがあるが、大体行き止まりだ。
出てくる魔物に関しては少し変わった。
コボルトの上位種、ハイ・コボルトなどと、あとは通常種のミノタウロスも出てくるようになった。
まぁ倒すまでに多少は時間がかかるが、問題なく倒せていた。
そして俺達前にはハイ・ミノタウロスの時より装飾が豪華な巨大鉄扉が。
そしてその扉の前には一体のオークキング。
どうやら門番のようだ。
門番を任せられる王って…… ちなみに手下はいないようだ。
ハイ・ミノタウロスとオークキングではハイ・ミノタウロスの方が強いので楽に倒せるだろう。
俺は初見のダンジョンボスと極力戦わない、と自分で言ったので今回も見学だ。 ダンジョンがあるかぎり何度でも戦える雑魚と戦ってもつまらないからな。 ちなみに助けに入るのは俺の裁量次第だ。
「てやぁっ!」
オークキングが足を踏み出したのと同時にアデルが飛び出してオークキングに斬り掛かる。
オークキングは横に跳んで避けるが、アデルの剣はすれ違いざまにオークキングの肩の近くを斬り裂いた。
一瞬顔を顰めるオークキングはすぐに金槌のような形状の武器をアデルに向かって振り上げた。
だがそこにマーガレットが斬り込み、オークキングの横腹を突き刺す。
「ンゴオオオォォォォ!!」
痛みにより金槌を手放してしまったオークキングは剣を引き抜いている途中のマーガレットを蹴り跳ばす。
蹴り跳ばされたマーガレットはエリーゼに受け止められた。
マーガレットの剣はオークキングの横腹に刺さったままだ。 そして、その中途半端に抜けかけた剣がオークキングが暴れる度に傷口を刺激している。
オークキング自らを苛む忌まわしい剣を引き抜き、それを手にして一番近くにいたアデルに斬り掛かる。
鈍器を叩き付けるように振るわれる剣は、地面に叩き付けられたりしても折れる素振りを見せなかった。
かなりの業物のようだ。
オークキングの攻撃を避けながら魔法で隙を攻撃するアデルに援護が入る。
オークキングの左右の背後を取っていたラモンとフレイアが左右からオークキングの分厚い脂肪を斬り付ける。
が、どちらの攻撃もオークキングの胴体を真横に切断するには至らなかった。
分厚い脂肪に妨げられた攻撃の痕跡を残して二人は距離を取る。
アデルから目を逸らし、振り向いたオークキングは今度は魔法の直撃を受けた。
炎の刃だ。
これはエリーゼの風の刃と、クルトの火球をあわせたコンビ技だ。
炎の刃はオークの皮膚を焼き焦がし、深く切り裂いた。
そしてそれに怯んでいる隙にラモン、フレイア、アデル、オークキングの金槌のような物を手にしたマーガレットが一気に飛びかかった。
「私の武器を盗られた時はゾッとしたな」
「ボクはそれより蹴り跳ばされたマーガレットさんが心配だったよ」
「…と言うかマーガレットはなんですぐに退かなかったんだ?」
「脂肪が分厚くて抜けなかったんだ」
「…あぁ、そうだったのか。 そう言えば結構深く刺さってたもんな。 それにしても、あの魔法が一気に戦況を変えたよな」
「そうね。 あれで怯んでくれたから私達が一斉に攻撃できたものね」
「いえ、あまり援護できなくて申し訳ありませんわ……」
「いや、エリーゼさんが受け止めなかったら、あのままじゃマーガレットさんは壁に叩き付けられてましたよ」
戦闘後の和やかな会話を繰り広げるフレイア達を横目に俺は【探知】を使って、魔物に追い込まれているのを知った。
俺達が通ってきた通路を魔物に塞がれているのだ。
まぁ、あの団欒に水を差すのも気が引けるし俺が始末しておこう。




