第147話 拡散
いつものメイドさんとクロカとシロカに出迎えられた後、課題をする間もなく夕飯を食べてから課題をした。
課題をする間が無かったのは帰宅が遅いとメイドさんに怒られていたからだ。
部屋に帰って来てからはクロカとシロカがうるさかった。
「こんな時間まで何をしていたのだ?」
「何を隠しているのじゃ。 素直に白状せい」
と、さっきからずっと騒いでいた。
説明が面倒臭かったから誤魔化していたのだが、いい加減うるさいので仕方なく説明した。
「アキ……お主、そんな趣味が……」
「趣味じゃない」
「童にもお主の女体を見せてくれんか?」
「なんでだよ」
「我も見てみたいぞ!」
今度はこの事で騒ぎ始めた。 さっきから子供かよ。 龍種の威厳はどこに行った。
威圧して黙らせても良いがここは俺の部屋だ。 またあの時のように失禁なんかされたら堪ったものじゃない。
ゲートも最近は警戒されていて、使った瞬間にカートゥーン風の動きで逃げられるから無理だ。
あまり気は進まないがやらない限り延々とうるさいので仕方ない。
流石に着替える必要はないので複製制服のままで良いだろう。
「ほぅ。 ……童の想像より遥かに可憐な女子よのぅ」
「おぉ…………この姿はアキの理想の女性像だったりするのか?」
「理想かは分からないが、俺が出来る限りで最高の出来だな」
ちなみに斧に切断された髪は元に戻っている。 この程度ならすぐに修復できる。
「もういいか?」
「うむ。 もう満足したのだ」
「童ももう飽きたのじゃ」
「やらせといて飽きたとか言うなよ」
俺は元の姿に戻って言う。
今だ!
俺は油断している二人の足下にゲートを出現させて部屋の外に強制転移させた。
「ぬぁっ!?」
「アキ! お主やりおったなぁぁ!?」
部屋のなかに響くその叫び声はやがて扉の外から聞こえてきた。
扉を叩く音と二人の喚き声が聞こえてくるが、課題が全く終わっていないので無視だ。
そう言えばアルベドに冒険者貴族の事を伝えるの忘れたな。 まぁ、明日言えば良いか。
翌日
フレイアと共に学校へ向かう。
「ねぇアキ。 昨日はあんな遅くまで何をしていたの?」
「用事だ」
「なによそれ…………教えてくれても良いじゃない」
俺は昨日の厄介な反応を知っているので絶対に教えない事にしたのだ。
しかもここは外だし。 他人の目もあるからな。
「嫌だ」
「…………意地悪」
不貞腐れてしまったが知ったことではない。俺は話し掛けても無言のフレイアを連れて学校へ向かった。
機嫌が直る事は無かったが、放課後には直っている事だろう。
俺は教室へ入ってスカーラを探す。
……いた。
様子はいつも通りだ。 若干そわそわしているが概ねいつも通りだ。 精神面に問題は無さそうだ。
それよりなんか教室が騒がしい気がする。
「ねぇねぇ知ってる? 昨日、闇組織の首領が捕まったらしいよー」
「えぇ? それ本当? ……でもその闇組織ってどんな事してたの?」
「なんかー、人を拐って奴隷として売るんだってー!」
「えぇー! こわーい!」
キャハハとクラスの女子達が笑いあう。
昨晩あった事なのにもう広まってるのか。 ……やはり情報や、その情報が伝わる速度とは恐ろしいものだ。
昼休み
ラモンが俺の教室へやってきた。
「おいアキー! 一緒に昼飯食おうぜー!」
「今行く」
ラモンはたまにこうして教室へやってきて昼飯に誘ってくる。
「あ、そうだ。 今話題になってる闇組織のボスが捕まったってのってお前がやった事だったりするのか?」
「なんで俺だと?」
「さぁ? 勘じゃね? ……あぁ別に誰にも言わないぜ。ただ単に俺が気になっただけだ。 だから俺を信じて素直に答えてくれ」
屋上で並んで購買で買ったパンを食べる。
それにしても勘で俺を引き当てるのか。 ……誰にも言わないらしいし言っても構わないだろうか。
少し悩んだ俺は黙っているのも不自然なので正直言う事にした。
「……俺だけど俺じゃ無いって感じだな」
「ははっ、なんだそりゃ」
笑ってからパンに齧り付くラモン。
それを見てから俺も残りの一口を、随分と軽くなった口に放り込んだ。




