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第145話 種族特性の発見

「ほら、そう暴れんなって。 俺達を怪我させる気か?」

「商品はなるべく無傷で売りたいから手荒な真似はさせないでくれよ?」


 商品?

 そうか。 ただの体目当てのナンパ野郎じゃ無いのか。

 良く見たら全員手の甲に共通の刺青がしてあるな。 あれがその組織の証か何かなのか?


「何をしているんですか?」


 美少女に変形した俺が言う。


「あぁ? 誰だて……!」


 俺に振り返った瞬間言葉を絶やすチャラ男。

 別に【威圧】スキルを使った訳じゃ無いんだけどな。


「ふほほっ! こりゃぁ上玉じゃねぇか。 どうだ?お嬢ちゃん今からどっかいかない?」


 絶句したチャラ男とは別の奴が話し掛けてくる。

 俺は衝撃を受けていた。

 ……まさか情欲にまみれた感情をぶつけられるのがこれ程までに不快で気持ち悪いとは思わなかった。


「……その人、嫌がっているじゃ無いですか」


 俺は嫌悪感を隠し、鳥肌が立っている腕を擦りながら言う。


「なんだよ。 せっかくの美少女かと思ったら正義感が強いだけの厄介な奴かよ。 ほら、夜は危ないからとっとと家に帰りな」

「あ、あの! 助けてください!」


 小動物をあしらうように、シッシ、とするチャラ男と、俺に助けを求めるスカーラ。

 スカーラは今にも座り込みそうな程膝を震わせている。

 特訓の疲れもあるのだろうが、今はこいつらへの恐怖もあるのだろう。


 どうにかして相手から手を出させたいと思う俺は言った。


「分かりました。 衛兵を呼んできます!」


 そう言う俺に、焦ったチャラ男達は俺の腕を掴んで引き留める。


「助けてー! 助けてー! ……んぐぅ!?」

「うるせぇ! 騒ぐな!」

「おい、やべぇって! とっとと帰るぞ!」


 叫んで逃げようとする俺の口を塞ぐチャラ男。

 そのチャラ男に逃げるよう催促するもう一人のチャラ男。


 意外と手を出してこないんだな。 ……このまま連れてかれそうだし、ついでにこいつらの根城まで案内して貰おう。 そして他の奴がいるならついでに助けようか。






 暗い部屋にある、数ある檻の中にある一つの檻の中。


 その中には、俺とスカーラの他にも、普通の衣服を着た老若男女─本当に老人から子供までの男女がいた。 俺とスカーラ含め全員手枷をしていない。


 やっぱりただのナンパ野郎じゃなかったようだ。

 じゃあとっとと檻ぶっ壊してこいつら連れて逃げるか。


「……あの……ごめんなさい……私のせいで……」


 涙目で謝罪してくるスカーラ。

 多分、自分が助けを求めたせいで… とか考えてるんだろうが、もし俺が普通の人間だったらどの道出ていった時点で捕まってただろう。


「別にいいですよ。 さて、じゃあ脱出しましょうか」

「え?」


 ……ん? ……あれ……? スキルが使えない……魔法も使えない……


 …………どうやら何かの力が作用しているようだ。


 なるほど。だから手枷もしてなかったのか。


 

 ……でも問題ない。 【変形】と言うスキルの補助を受けずに変形すれば良いだけの話だ。

 俺は誰にも見えないよう、後ろ手に手を変形させて檻を破壊する。




 ……今、なんとなくでやったが、この変形するのがスキルじゃないって事はこれってなんなんだよ。


 ……まさかこれが俺の素って事か。

 この檻の中で『人間』の息や歩行が制限されないのと、『異質同体人間』の変形が制限されないのは同列扱いなのか?


 ……ふむ……この現象を名付けるなら『種族特性』ってところか。


 まぁいい。 そんなの今更だよな。 種族が変わった時点で俺は色々変わったんだし。 気にしたり考えたりするだけ無駄だろう。




 


 破砕音を聞いたチャラ男の仲間達が部屋の中へやってきた。


「な、なぜだ!? その檻にはスキルと魔法を制限する結界を張っていたのに!?」


 檻から抜け出して、雷魔法で敵を撃ち抜く。

 俺はあまりグロくならなくて、威圧感を与えられるのが雷魔法だと思っているので、こう言う子供も傍にいる場合は雷魔法を使うようにしている。

 氷魔法や水魔法もあるが、氷魔法で氷付けにすると死に顔があれだし、水魔法は殺せないわけじゃないが、他と比べて殺傷力が低いからなしだ。

 それに、この部屋は暗いから雷魔法は光源としても使えるしな。



 扉を塞ぐ邪魔者がいなくなったのを確認した俺は、他の檻も破壊して、解放したやつらの先頭に立ち、部屋の外を確認する。


 ちなみに檻は外部からの魔法で破壊できた。

 檻を覆うようにじゃなく、檻の内側に結界は張られていたようだ。 熟、運が良いな。



 廊下の曲がり角からは他の敵が走ってきていた。「逃がさないぞ!」などと言って攻撃しようとしているが、その前に電撃で殺しておく。


 戦闘が可能な人も捕まっていたようで、魔法を撃つなり、敵の剣を拾って戦うなり…と片付けを手伝ってくれた。

 なぜ戦闘が出来るのに捕まっていたのかは分からないな。 酒で酔っていたところを拐われたとか、純粋に騙されたとかなんだろうか。



【探知】で分かったが、どうやらここは地下のようだ。

 上の方に人間の反応が多い。 逆に同じ高さには上に比べて人が全くいなかった。


 ちなみに【探知】は赤しか無いサーモグラフィのような感じの視界で、壁の向こうなども透けて見れる。しかし色はサーモグラフィ。

 こう言うと【透視】のメリットが無いように聞こえるが、ちゃんと透視にもメリットはある。探知と違って、色が付いた状態で見れると言うところだ。まさに一長一短だ。



 やがて地上へ出たが、さっきの場所は建造物の内部に造られた巨大な地下室のような場所だったらしい。

 この建物には人の気配がない。 見た目通り廃墟のようだ。


「誰か戦える人は皆さんを衛兵のところまで連れて行って下さい」

「俺はこの辺りに詳しいから案内するよ。 君はどうするんだ?」

「おr…… 私は残党を始末してきます」


 危なかった。 俺って言いかけたぞ。


「危険ですよ!?」


 スカーラが真っ先に反応する。


「なら、僕も付いていきます! あいつらにやり返してやりたいですから!」

「勿論私も行くよ!」

「俺も」

 ・

 ・

 ・


 そう口々に言うのは一緒に戦っていた人達だ。


「じゃあ半分ずつに分かれましょう。 これでは戦えない人達を衛兵のところまで連れていく人がいなくなります」


 その言葉を聞いた人達は時間をかけながらも半分に分かれた。 決め手はじゃんけんだった。


 ちなみに俺は言い出しっぺなのでじゃんけん免除で一発地下行きだ。

 それと、スカーラは俺に詫びようと殲滅を手伝おうとしてたが、じゃんけんに負けてしまい、渋々衛兵のところまで行った。



 残党処理を任せられた俺達はスカーラ達を見送ってから地下へ再び身を翻した。

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