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第143話 ルイスと共に

 ハイ・ミノタウロスの死骸を息を切らしながら眺めるフレイア達。 達成感に浸っているのだろう。


 息切れの理由は分からないが、恐らくハイ・ミノタウロスとの戦闘は余裕そうに見えたが、実際は一撃受けたら終わりだと言うプレッシャーに晒されながら戦っていたストレスからだろうか。


「…はは……やったな……」

「あぁ……私達はあの魔物を倒したんだ……」

「魔法の援護が無かったら負けてたかも知れないわね」

「これで少しは強くなれた気がするよ」


 近接組は息切れしながら感想を言い合う。


「俺達の魔法が少しでも役にたっていたようで良かったです」

「えぇ。 よかったですわ」


 近接組に駆け寄りながら言うエリーゼとクルト。




「…ふぅ。 良しじゃあ解体して各々で持って帰ろうぜ。 あぁ、勿論最後には売った素材の合計額をみんなで山分けするぜ?」


 一息ついたところでラモンがそう切り出す。

 売って合計額を山分けしたら各々で持って帰った意味が無いと思うが、そこは気分問題なのだろう。

 みんなで倒した魔物をみんなで持ち帰ると言う綺麗な問題なのだろう。


 その提案には特に反対も出なかったのでハイ・ミノタウロスを頭、胴体、右腕、左腕、右足、左足に分けてアイテムボックスにしまった。

 六つしか無いのは俺が持つのを拒否したからだ。 何もしてないのに持つのはおかしいからな。

 勿論ハイ・ミノタウロスを売却したの分の金は受け取らない。



 ハイ・ミノタウロスとの激闘による疲労が……と言う事で今日の冒険者活動はもう終わりだ。


 冒険者ギルドへ帰ってきた俺達はクエストの達成報告をしてからいつものように素材買取の窓口へやってきていた。


 このスペースじゃ出しきれないと言う事でギルドの裏にある解体所へやってきていた。

 普通は入れないらしいが、大量に素材を持ってきた冒険者がいる場合は特別に入る事ができるらしい。


 ちなみに解体所へやってきた受付嬢はそこの作業員に何か言ってからギルドの中へ戻って行った。

 仕事があるのだろう。


 今、解体所の作業員の目の前にはハイ・ミノタウロスとその他の魔物の死骸の山を見て愕然としていた。


「……おいおい。あんたらEランクじゃねぇのかよ? なんでハイ・ミノタウロスの死体を……?」


 驚く作業員にマーガレットが説明する。


「なんだとぉ!? カイネフール洞窟にいたぁ!? それは本当か!? どこに、どんな風に!?」


 顔を近付けて捲し立てるおっさん作業員に詰め寄られるマーガレットはおっさんを手で制しながら答える。


「なんと言うか……噂に聞くダンジョンのボス部屋のような場所に……」

「ボス部屋ぁ? ……つまりなんだ。 カイネフール洞窟が実はダンジョンだと?」


 疑いの視線を向けてやれやれと首を振るおっさん作業員。


「ダンジョンのような、だ。 まぁ私は本物のダンジョンを見た事が無いからなんとも言えないがな」

「ふむ。 ……取り敢えず査定だ」



 結果、ハイ・ミノタウロスの死骸は今までの魔物の中で一番高く売れた。 なんなら今まででの一日で得られる売却額をそれだけで越えていたかも知れない。


 俺以外の財布は潤った事だろう。



「ねぇアキ。本当によかったの?」

「あぁ。 俺は何もしてないからな」

「でも動けなかった私達を助けてくれたじゃない」

「そうだが俺はハイ・ミノタウロスに攻撃していないだろ?」


 フレイアが聞いてくる。

 本当は欲しいけど何もしていないのに受け取る訳にはいかない。



「おう! カイネフール洞窟でハイ・ミノタウロスを倒したんだって?」


 そこへギルドマスターのルイスがやってきた。 その傍にはさっきのおっさんがいた。


「あぁ。 ボス部屋らしいところに居たんだ」

「……ふむ。 キメラと言い、白龍と言い、今度はダンジョンか? 流石に見過ごせないなぁ……俺が直々に出向いた方がよさそうだ。よし、お前ら今から俺を案内できるか?」

「案内するのはいいけど、こいつらは疲れてるだろうから俺が一人で案内してやる」


 帰り道でさえ足取りは覚束なかったんだ。

 これ以上消耗させて明日の冒険者活動に支障がでたら困るからな。仕方ない。


「いや、私達も行くぞ?」

「ダメだ。 明日に備えてやす…… いや、明日は休みにしよう。 思えば俺達には休日が無かったからな。 明日休んで明後日にまた再開する。 それまでにしっかり休んでおいてくれ」

「…………そうか。 ならありがたく休ませて貰おう」


 案外すんなり受け入れたマーガレット。


「お前らもだ」

「分かったわ」

「…おう。 俺はもうクタクタだぜ」

「えぇ。 今日はもう疲れましたわ」

「そうさせて貰うよ」

「分かりました」


 頷くみんなを帰らせる。 フレイアはゲートで屋敷の玄関まで飛ばした。




「よしじゃあ行こう!」

「あぁ」


 道中ギルドマスターが話し掛けてきた。


「ふぅ。 やっぱり気分転換は大事だなぁ! ……ふぃぃ……なぁ……唐突だが愚痴を聞いてくれるか?」

「別にいいけど、元気溌剌なあんたでもそう言うのはあるんだな」

「俺だって人間だぞ? ……それで愚痴ってのはな、冒険者をやってる貴族の事なんだけどな」


 ……うわ、貴族とか……面倒臭そうな奴じゃないか。

 …………何処と無くルイスの溌剌過ぎる勢いが無いのもその貴族による心労なのだろうか。


「最近、この森の上空に白龍が現れたのは知ってるだろ?」

「…………あぁ、知ってる」

「……それで……その白龍を討伐したのは俺だぁ! ……って騒ぐ貴族がいるんだよ」


 ティアネーの森現れた白龍って言うとアルベド──シロカだよな。

 ……それを討伐したって……嘘じゃないか。


「へぇ」

「その癖に白龍の死骸を持って来ないんだよ。 ……俺は何回も言ってんだよ。持って来ないと対処出来ないって。 なのに持って来ない。 ……怪しいだろ?」


 冒険者ギルドでは、冒険者がクエスト外で魔物を倒した場合、倒した魔物の死体を持ち帰って売却する事で評価が下される。

 だからルイスはその死体を持って来ない冒険者貴族に悩ませられているのだろう。


 まぁ、このままじゃルイスが可哀想だし本当の事を教えてやった方が心労は軽くなるだろ。

 これは俺なりの上司への報いだ。


「持って来れる訳無いだろ」

「どうしてそう言い切れるんだ?  …………! まさかお前が倒したのか?」

「倒してないけど、従えてはいるな」

「…………お前は嘘が下手くそだからな。 本当なんだろうな」


 ……俺の猫被りを一瞬で見破っただけあるな。

 でも一つ言いたい。 俺が嘘を吐くのが下手なんじゃ無くてお前らの洞察力が凄すぎるだけだ、と。

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