第135話 魔力の武器
「じゃあ俺は周りの奴をやるから二人はキングを頼む」
「え!? クドウさん!?」
「本気か……?」
俺に驚くクルトと、俺に向かって信じられない物をみるような目を向けるガレット。
「本気だ。 安心しろヤバそうなら助けるから」
「……分かりました。 やりましょうガレットさん!」
「ああ!」
俺への信頼が厚すぎないか? 俺はこいつらに命を委ねられる程の事をした覚えはないんだが……
……取り敢えず周りのコボルト達を倒すか。
俺は合図も無しに駆け出し、一番近くにいたハイコボルトを掴む。 そして傍にいたもう一体に思い切り投げ付ける。 それでは死んでないだろうから、火魔法で追い討ちをかける。 これでついでに光源も確保できた。
「グワォォォォゥン!」
地面に座り、胡座をかいていたコボルトキングは大型犬の鳴き声を何倍にも低くしたような腹に響く咆哮をあげた。
それは配下への指示でもあったのだろうか。
呆気にとられていた他のコボルト達もワンワン鳴いて弓や石ころの投擲、魔法などで攻撃を始めた。
「クルト! コボルトキングに突っ込むから援護してくれ!」
「分かりました! 気を付けて下さい!」
一直線に駆けるガレットに向かって行く有象無象をロープのように伸ばした指で足止めする。
……このまま指に電流を流せばコボルトを倒せるんじゃないか?
思い付いた俺は早速試す事にした。
……結果は成功だった。
当たり前だが、俺にも電流は流れてきた。
大したダメージになっていないが、余程余裕がない限り止めておいた方が良さそうだ。
死体から指を離して、他のコボルトへ駆け出す。
勢い任せに殴る殴る殴る──
それだけでコボルトは弾け飛ぶのだから簡単な作業だ。
しかしそれでは芸が無い。 完全に脳死だ。
俺はジャンクから教わった技術を試す事にした。
この時、自力で取得したスキルを使う事になる。
ちなみに自力でスキルを取得したのは初めてなので結構嬉しかったりする。
ジャンクの素の状態の戦い方は無魔法による肉弾戦だ。
その為に体に魔力を纏う。
この時のイメージとしては自分に流れる血液と自分の皮膚に触れる空気を一体化させるような感じだ。
これができると無魔法を覚えられ、無魔法の使用が可能になる。
これを極めたジャンクはガラクタを纏っていなくても並大抵の刃物で傷付かなかった。
俺はステータスでゴリ押せば刃物で斬られても無傷ではいれるが、そこは気分の問題だろう。
ここからがジャンクによる特訓で得たスキルの出番だ。
このスキルは珍しいらしく、無魔法の応用で得られるスキルだ。
通常、無魔法は見えない魔力の弾丸を放ったり身体能力を強化するのに使われる。
だが、ジャンクはこの無魔法を使っている内に他の使い方を発明した。
それは、魔力を塊にして弾丸のように放つ事から着想を受けたもので、魔力の塊を武器のように形を変形させて相手を攻撃すると言う物だ。
これによって得られるスキルが【魔力武器創造】だ。
安直な名前のスキルだが分かりやすくて良いだろう。
このスキルによって作られた武器は淡い紫色をしている。
俺は魔力の槍を空中に出現させ、その数をどんどん増やしていく。
武器を一つ生成するのにMPを消費するので、一般人にこれはあまり推奨できない。
俺のMPが異常だからできる所業だ。
ある程度出現させた俺はそれを振るい、コボルト達を薙いで貫いていく。
一遍に、百を越える槍に意識を向けるのは難しいので【思考加速】で一時的に脳の回転速度を上げている。
例の[脳味噌の大樹]のスキルだ。
こいつのスキルを使っても外見が変形しないので、俺の脳の形状が変わってたりするのだろうか。
ちなみにジャンクは【思考加速】が使えないので、一度に二、三本しか出現させられない。
俺のこれを見たジャンクは複雑な表情をしていた。
【思考加速】による副作用で頭痛がする。 MPもずっと減っていくが大して痛手でもないので放置してコボルト達を貫き、薙ぎ払う。
後半、コボルトは恐慌に陥って連携も取れず慌てふためき呆気なく槍に貫かれていた。
俺はコボルトを殲滅したのを確認してから槍を消して思考速度を止めた。
ふぅ……ガレット達はどうなっているだろうか?




