第129話 ドローンを介すティアネーの森周辺と、異世界人達
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話の後半に逃亡中の異世界人の様子を追加しました。
ドローンに映し出されるティアネーの森の光景をその場にいた皇帝や、諜報部隊隊長に、暗殺部隊隊長、宰相が見ていた。
第一騎士団が、自動車乗ってティアネーの森へ到着した。
そして、均等に部隊を分けて散開してティアネーの森へ入っていった。
やがて、目標のフレイア・アイドラークを発見した部隊があった。
その部隊を指揮するのは、非人道的行いを好んでを行う異常者で有名な者が指揮していた。
「よりにもよってあの者が遭遇してしまったか……」
皇帝は頭を抱えて言う。
皇帝は、ここに連れて来られるフレイア・アイドラークは惨憺たる様相で連れて来られるのだろうなどと考えていた。
失敗など微塵も考えていないようだ。
だが、皇帝の考える未来構想からは外れ、異常者はフレイアを痛め付けなかった。 代わりに痛め付けられたのは名も知らぬ娘だった。
「あの人もやってはいけない事の分別はついたんだな」
「貴女……感覚がおかしくなってますよ……普通は人を故意に痛め付ける行為自体ダメなんですから」
暗殺部隊隊長の発言にツッコミを入れる諜報部隊隊長。
そうして、その惨い光景を淡々と眺め続ける一同は異変に気付かないでいた。
少女が甚振られる場面を眺めていると言う事は、ドローンは他の場面を映していないのだから。
だから、他の騎士が殺されている事にも気付かなかった。
そしてドローンが映す映像は突如不可解な物に変わった。
ある場所の騎士の首が落ちたかと思えば、フレイア・アイドラークを押さえ付けている騎士が斬り裂かれ、フレイア・アイドラークの傍に男が立っていた。
分隊長が口を開くが、その言葉は続かず分隊長の頭は一瞬で弾けとんだ。
その時、男の指は鞭のように細長く伸びていた。
男に向かって怒号をあげているのか、大口を開き、他の騎士が剣を構えて襲い掛かるが、斬る度斬る度、二つに分かれたり、弾け飛んだり、そして瞬く間に騎士は手も足も出ずに全滅してしまった。
「な、なんなのだ……あの男は……」
皇帝が驚愕と恐れを顔に張り付け呟くが、その問いに答えられる者はこの場に居なかった。
なぜなら他の者も皇帝と同じ状態だったからだ。
「……」
騎士団を皆殺しにした男は甚振られた少女に聖魔法を使い、応急措置をした後に、フレイア・アイドラークと何やら話し、その後少女に聖魔法を使いながら黒い渦出現させた。
その渦にフレイア・アイドラークが入り、男も入る……と思われたが男は足を止めた。
そしてドローンを見つめて不敵な笑みを浮かべた。
「「「「ッッ!?!?」」」」
やがて男が黒い渦に入り、黒い渦が消滅しても皇帝達は動く事が出来なかった。
全員が氷付き、背筋を伝う冷や汗を滝のように流し、顔を真っ青に青褪めさせて情けなくガタガタ震えていた。
暫くそうしていた皇帝達は、我を取り戻した。
「なんなのだあの男は……」
「そうだ! 暗殺部隊へその魔道具を向けろ! もしかしたら自動車に興味を持った奴らが不意討ちを食らっているかも知れません!」
まだ呆然としている暗殺部隊隊長と違い、諜報部隊隊長は宰相を揺らして言う。
不意討ち要員として一緒に向かわせていた暗殺者が乗っている自動車の方へドローンを向かわせた。
だが、その光景は異常だった。
素性不明の男が、暗殺部隊を土縄で縛り上げて並べ、順番に攻撃魔法を放っていた。
そして傷付いた暗殺部隊を治療して……と何度も何度も意味不明の行動をしていた。
その帝国の異常者分隊長と違い、嗜虐心に駆られてやっている様子では無いのがより一層皇帝達の恐怖心を誇大化させていた。
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《逃亡中の異世界人達》
久遠秋がこの世界にやってくる以前に、ゲヴァルティア帝国から逃げ出した六人の異世界人達は、とある森の中を進んでいた。
「どうですか? 【神眼】さん。 追っ手はいませんか?」
「ふっ……大丈夫さ……この僕の【神眼】には追跡者は映っていない……」
ゲヴァルティア帝国の王公貴族に【聖者】と呼ばれる女性がそう言うと、左目が金色に発光している男性が答えた。
「……と言うかその【神眼】とか言う呼び方やめない?」
「私も結構恥ずかしいのでやめたいです」
「……正直なところ私も恥ずかしいです」
そう意見を口にするのは、【不死身】と呼ばれる男性だ。 そしてそれに便乗するのは【城塞】と呼ばれる女性と、先程の【聖者】だ。
「えぇ……格好いいじゃん。 なぁ【魔剣】」
「そうだよな【冒険王】」
「【魔剣】今の掛け合いは微妙だって」
「そう?」
【冒険王】と言うらしい、茶色くて背中の部分に斜線の入った拳の模様がある外套を羽織った男性が、【魔剣】と呼ぶ同じ模様が入った外套を羽織る少年と会話する。
「【神眼】はどう思うよ? いいよなぁ? この呼び方」
「ふん……僕はそんな事に拘らないのさ……」
そんな呑気な会話を繰り広げながら異世界人達は森を進む。
ゴブリンや狼、スライムに、角の生えた兎などを討伐しながら……テント等で野営をしながら。
そして森を抜けた先物には、草原が広がっていた。見渡す限り、草しかない広大な草原だ。
進めば街道などがあるかも知れないと思った異世界人達は心なしか歩く速度を上げて足早に進んだ。
「……ビンゴ……この先に街道があるよ。 ……その先にはまた森があるね。……お、右の方には……街があるよ!」
【神眼】が、金色に発光する左目で見た情報を伝える。
「本当か! やっぱり俺の勘は正しかったな。 なるほどこれが【冒険王】の能力か……」
「ちゃんとここはミレナリア王国なのか!? 何か判断できるものは!?」
すると【魔剣】が【神眼】に詰め寄る。
「ちょ、ちょっと待ちたまえ。 …………どれどれ……ふむ……あの鎧は……うん……少なくともゲヴァルティア帝国ではないみたいだね」
「ミレナリアかは分からないのか。 まぁゲヴァルティア帝国じゃないならなんでもいいか……!」
「みんな、早く行こう!」
「あ、ちょっと待ってください!」
【不死身】が走り出すと、【聖者】も後を追うように走り出した。
「相変わらずあの二人は仲がいいですね」
「早くくっつけばいいのにな」
「全くだね」
口々に言う、【城塞】【冒険王】【魔剣】の三人。
そんな四人は後を追おうと、言うがそこまで急いだ様子はなく、完全に安心しきっているようだ。
「おーい! 早く!」
「恥ずかしいですからそう言うのは止めてくださいって!」
はしゃぐ【不死身】にそれを止める【聖者】のそんな様子を見た三人は笑いあった。【神眼】を除いて。
「ん? どうしたんだ? 浮かない顔をしているが……?」
「ちょっと……寂しくなるな、とね」
「寂しい……? ですか?」
【城塞】が聞く。
「そうさ。 僕達はこの逃亡生活が終われば各々好きにする約束だろう? それが寂しくてね」
「なんだそんな事かよ。 【神眼】お前って以外と女々しい奴なんだな? 普段はクールを装ってる癖にな」
「【冒険王】の兄ちゃん切れ味凄いね。【神眼】にとってそれは触れられたくない事だろうに」
狼狽する【神眼】と、【魔剣】に指摘されて頭を掻いている【冒険王】とそれらを静かに微笑みながら眺める【城壁】
そこにはしんみりとした空気は一切なかった。
と、そこで再び【不死身】がそんな四人を急かした。
その後、六人の異世界人約束通りそれぞれが好きに、思い思いにミレナリア王国での生活を始める。
ある者は、行き倒れていたところをとある貴族に拾われて……ある者は、その能力で露店商になり商売をし……ある者は、その力を買われて騎士団長になり、それに追随する者はその者を癒す優秀な専属の治癒師になり……ある二人は冒険者として活動している。




