第128話 夕焼けの凶行
複数の車の前にやってきた。
遠目からはよく分からなかったが普通の車ではないようだ。
この車の底が明るく光っていたので覗き込んでみたら、透明なパイプの中を光の粒が流れていたのだ。
どうみても普通の車じゃない。
後は、変な模様がそれぞれの車体に刻まれていた。
……一体誰がこれを作ったのだろうか。
魔法に頼りっきりで文明が全然発展していないこの世界でこんな突出した文明。
少なくともこの世界の人間じゃないのは確かだ。
ガタンッ! ガタンッ! ガタンッ!───
連続して車から発生する物音に目を向けると、車の荷台──トランクだったか……から、黒い服に身を包んだ人間が俺に向かって攻撃を仕掛けてきていた。
暗器のような物が投擲され、それを盾にナイフを構えて走って来る。
俺は転移でそいつらの背後にある車の上に転移して躱す。
車という暗殺者達よりも高所に立ち、夕焼けを背にする事で俺の影が暗殺者達を影で覆った。
弾幕攻撃は厄介だ。
高速で飛んでくる物を一々払い落とさないといけないからな。
すると、丁度俺の影に覆われている暗殺者が口を開いた。
「む。 転移か。 厄介だ」
そうだろうな。
弾幕攻撃をしても転移されれば無意味だからな。
こいつら暗殺者にとって厄介以外のなにものでも無いだろう。
「お前らはここで何をしていたんだ? まさか車に興味を持った奴を殺すだけじゃないだろう?」
「ほぼ正解だ。 我々の任務は、この乗り物を目撃した者を始末することだ」
おしい! 興味と目撃しただけの違いだ。 いやもう正解でいいんじゃないか?
それはいいとして…こいつらとは別に、行動している奴がいるのか。
……まぁ、このタイミングだとさっきの軽鎧集団だろうな。
「いいのか? そんなにペラペラ喋って」
「構わない。 お前はもうすぐ死ぬからな」
「なるほどな。」
「さてお前は今から死ぬ訳だけど、言い残す事はあるか?」
「……うーん……お前らが幾ら待っても軽鎧集団は帰って来ないぞ、かな」
俺が全員殺したからだ。
もしかしたら討ち漏らしがあるかも知れないけど。
「どう言う……かはっ!」
俺の指に首を絞められた男は言葉を続けられなかった。
覚えたての鞭。 植物系の魔物の特徴だ。
「ぅぐぅぅっ……」
呻き声をあげる男を吊り上げる。
他の暗殺者は呆気に取られてその様を眺めている。
死んだのを確認した俺は足をブランとさせた男を離すと、その男は地面に叩き付けられた。
その音で我に帰ったのか、他の暗殺者達は一斉に俺に視線を向ける。
その一糸乱れず、訓練によって洗練されていたかのような視線の動きはなかなか面白かった。
次に取った暗殺者の動きは予想外のものだった。
俺はてっきり仲間を殺した恨み! とか言って襲ってくるのかと思ったが違った。
暗殺者達は一目散に逃げ出したのだ。
逃がしてあいつらの仲間に報告されても面倒だし、ここで皆殺しにしておこう。
いや、ドローンのようなもので見られていたから無意味か。 ……それでも一応だ。
俺は雷魔法で暗殺者を穿つ。
しかし、その雷はただ穿つだけではなく、暗殺者を縫うように走った。
一人残らず雷に打たれた暗殺者は殆ど死んでいなかった。
当たり前だ。手加減をしたからな。
寧ろなぜ一部は死んだのか。
こいつらには俺の魔法のレベル上げに付き合ってもらうのだ。
本当は聖魔法のレベルだけ上げたかったのだが、ついでに他の魔法のレベルも上げる事にした。
ちなみに通常は、魔法やスキルは使う事でレベルが上がるのだ。そしてそれは生きている生物に当てる事でしか上げられない。
後は自分自身のレベルアップでも上がる。……けどそこは不可視の魔法、スキルの経験値にもよるのだろう。
と言う事でこいつらに魔法を当てて癒して、魔法を当てて癒して……と、レベル上げをするのだ。
……とは言うが少しは私怨も入っている。
なんせラウラを─俺の身内をあんな目に遭わせた奴らの仲間だ。
やった張本人はもういないから代わりに償って貰う。
連帯責任的な奴だ。
それに雇い主の依頼も満足にこなせない役立たずなのだ。
最後ぐらい人の役に立たせてやろう。
まぁ、流石に頭がおかしくなったり、壊れたりしたら止めを刺してやろうと思う。
そして全員始末した後のステータスがこれだ。
あ、まだ誰も喰っていないから【化け者】のカウントは変化無しだ。
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名前:久遠秋
種族:異質同体人間
Lv2418
MP :16,369,353
物攻 :16,369,398
物防 :16,369,321
魔攻 :16,369,380
魔防 :16,369,376
敏捷 :16,369,389
固有能力
【強奪Lv4】 【悪食】 【化け者×1187】 【傲慢】 【強欲】 【暴食】 【憤怒】 【怠惰】 【嫉妬】 【色欲】
能力
無し
魔法
火魔法Lv4
水魔法Lv4
土魔法Lv4
風魔法Lv5
氷魔法Lv4
雷魔法Lv4
光魔法Lv4
闇魔法Lv5
無魔法Lv6
聖魔法Lv5
時空間魔法Lv4
称号
異質同体人間 神殺し 神喰らい 同族喰らい
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あいつらが早々に壊れたのもあるが、にしても全く魔法のレベルが上がらなかった。
まぁレベルは上がれば上がる程、上がり難くなるらしいしな、仕方ないか。
さて、じゃあ、死体を回収して屋敷に帰るか。




