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第124話 ラウラ・ベール 2

 今日はフレイアさんと魔物の討伐をしています。


 フレイアさんは凄いです。

 次々魔物を倒して行くんです。

 私もそれなりに早く倒せるようになってきましたけど、それでもフレイアさんには敵いそうにないです……




 暫くいつものように魔物を倒していたんですが、ふと気付いたら私達は囲まれてしまっているようでした。


 姿は見えないですけど、確かに周りにいます。


 ゴブリンやホーンラビットなら楽で良いんですけど、マーダーウルフなんかだと厳しそうです……



 しかし、そんな私の予想は裏切られました。

 なんと、出てきたのマーダーウルフとかではなく、そもそも魔物ですらありませんでした。


 人間です。 軽鎧を着た騎士達でした。



 なんで騎士様が……? と言うかなんで私達を囲んで……?


 私が困惑していると、フレイアさんは騎士様達を見て顔を青褪めさせています。



「な、な、なんで……あ、あんた達が……」

「ど、どうしたんですか? フレイアさん……?」


 様子のおかしいフレイアさんに声をかけます。


「ぎゃはははは! お前ら聞いたか? フレイアだってよ! どうやら当たりを引いたみたいだな!」

「やったぜ! これであの女を捕縛すりゃあ昇進できるかもな!」

「まず間違いなく賞金ってか高額な報酬出るだろ? これで暫く遊べるなぁ」


 周りの人達は嬉しそうに、楽しそうに笑いあっています。


 当たり……? 捕縛……? 昇進……? 賞金……?


 意味の分からない会話に更に困惑する私に、異常に怯えるフレイアさん。

 いつの間にか私は手をあげて降参の格好を取っていました。 驚きです。



 すると、私の左の掌を何かが貫きました。


「きゃああああああ!!」

「!? ら、ラウラ!?」


 私は甲高い悲鳴をあげて左の掌を押さえました。


 私は痛みの正体を探る為、左の掌を見ると何かが私の掌から生えています。


 縄です。


 前にある縄の先には木があり、そこには血に染まった小さな槍が、縄をピンと張らせて刺さってました。


 後ろに続く縄は前方の縄と違って血で真っ赤に染まってませんでした。そしてその縄は、私達を囲む騎士様が握っていました。

 後ろから縄をひいた槍が放たれたようです。


「うっし。一人捕獲ぅ!」

「油断するな。掌を裂けば逃げられるんだ」

「すみません分隊長!」

「分かればいい。さぁ、他の者はあの女を捕らえろ」

「「「はっ!」」」


 そう返事をすると、他の騎士様達はフレイアさんに私にしたように槍を飛ばします。


 さっき私の悲鳴で我に返ったフレイアさんは槍を避けてから、その飛んできた縄を引っ張りました。


 すると、槍のついた縄を投げた騎士様は前に体勢を崩しました。


 そこにフレイアさんが、詠唱をしてから魔法を放ちました。 放たれたのは一番低級の火魔法【ファイアボール】です。

 低級の魔法は詠唱が短いので、一瞬の牽制などに良く使われますが、曲がりなりにも攻撃魔法なので当たれば確実に火傷は免れません。


 ファイアボールは体勢を崩した騎士様の前に立ち塞がった、盾を持つ騎士様に防がれました。



「いいのか? 抵抗して。 こっちには人質がいるんだぞ?」


 人質? 誰が? どこにそんな人が?


 平和な環境でぬくぬく育ってきた私は、まだ自分がおかれた危機的状況に自覚がありませんでした。

 と言うか私のトラブルを引き寄せる体質や、元々の温厚なと言うより間抜けな性格もあるのでしょう。


 トラブルを引き寄せる体質に関しては、『いつも何かあっても無事に何事もなく解決できている』と言う経験があるので、今回も無事に何事もなく解決できると無意識に思ってしまっていたんでしょう。






だから私は──




──怠慢だ

今までの運の良さを盾に窮地から抜け出す努力もしない



──過信だ

偶々上手く行っていた運による軌跡を



──自惚れだ

自分は運が良いから危険に晒されないと




 自分の慢心による罪を、これまでの運に全て擦り付けると言う思考停止にも似た言い逃れ。



 だけど私がそうしている間にも話は進んでいく。



「卑怯よ! ……いえ…そんな事は今に始まった事じゃ無いわね……あんた達ゲヴァルティア帝国はいつも卑怯だった。 私達の国を──」

「無駄なお喋りは要らない」


 私の右の掌が左の掌と同じ状況になる。


「~~~~~~~っ!?」


 私の悲鳴は背後から口に押さえつけられた掌によって防がれた。

 私は痛みに耐えられず地面に座り込んだ。


今の姿は両手を吊り上げられて──処刑寸前の死刑囚のような格好だ。


「俺がしたいのはフレイア・アイドラーク、貴様が俺達に従って大人しく付いてくるかどうかの話だ」

「……くっ……!」

「さぁどうする? お前が決断するまでにこの娘──ラウラだったか? が生きていればいいな。」


 そう言うと、さっき分隊長と呼ばれた男が私の頭を後ろから踏みつけ、地面に押し付けた。

 そして、背筋をツーッと剣先でなぞった。

 私の服は切断されるには至らなかったが、あともう少し切られたら地面に落ちてしまいそうだ。


 私は既にこの状況を打破する事は考えていなかった。

 私が考えていたのは助けが来ることだけだった。


 何も学んでいない。

 さっき自分の慢心に気付いたと言うのに愚かにも願っていた。希望に縋っていた。


 私の性根の奥底に根付いた甘え根性は相変わらず私に絡み付いていた。

フレイアじゃなく敢えてラウラ視点

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