第118話 白龍
いつも通り噴水広場に集合して、クエストを受けてティアネーの森へ向かう。
チームは俺とアデル、フレイアとラウラ、ラモンとエリーゼ、ガレットとクルトだ。
もうこいつらもティアネーの森じゃ物足りなくなってきたようで、作業のように素早く魔物を倒してアイテムボックスにしまっている。
そろそろ別の場所で狩りをするべきだろう。
俺はどんどん奥へ進むアデルについていく。
ちなみにスカーラは「今日もティアネーの森へ行く」と言ったらそそくさと去っていった。
…………
……は? なんでだ……?
ティアネーの森がまた侵食されて来ている。
侵食速度は前の比にならないようで、一瞬で葉が黒くなっている。
「うわわっ!? ななな、何これ!」
「一旦森を出よう」
「う、うん!」
俺とアデルは走って森の外へ向かう。
あのキメラが発生源じゃ無かったのか……?
侵食が遠ざかって行くのを振り返って確認しながら走り続ける。
「く、クドウさん!」
皆は先に森の外へ出ていたようだ。
「クドウはあの黒いやつの正体を知ってるか?」
ガレットが当てにした様子もなく、一応と言う感じで問
うてくる。
「知らない」
「…まぁそうに決まってるよなぁ」
説明が面倒臭いので知らない事にしておいた。
「…にしても……あの黒いの……あのキメラと同じ雰囲気がしたぜ」
流石ラモンだ。あのキメラに一番近くいただけあるな。
「……! なんか空にいるわよ!」
空には真っ黒い霧を噴射しながら飛行している白い龍──白龍がいた。
「…あいつがあの黒いやつの原因か!」
「……ん? あっ、よく見てください! あの龍の首? 辺りに何か巻き付いてます! 恐らくあれが黒いやつの原因だと思います!」
クルトの言う通り黒い輪っかが巻き付いている。
「可哀想ですわね……あの黒い首輪のせいでパニックに陥っているようですわ……」
「ふむ。なんとかしたいところだが、飛べない俺達ではどうしようも無さそうだな……」
哀れみの言葉と哀れみの視線を白龍に向けるエリーゼとガレット。
……そろそろ様子見は終わりにして、あの首輪が原因だと分かったし早く破壊しに行こう。
「フレイア。クロカを呼んできてくれ」
「……? 分かったわ」
「く、クドウさん? なにか考えが?」
「考えって言うか、ただ単にあの首輪を壊そうかなって」
ラウラの問いに答える。
「え、え? そ、空を飛んでるんですよ?」
「俺は空も飛べる魔人なんだ」
そう言って俺は翼を生やして飛び立つ。
下から驚愕の声が聞こえて来るが、直ぐに聞こえなくなるほどの高さまで来た。
「んがああああ! 不快じゃ! 不快じゃ! 不快じゃああああ! さっさと外れんかこのっ! このっ!」
身を捩ったりする白龍は思ったより元気だった。
だが、ストレスは半端ないようだ。
動物はストレスに弱いって聞いた事あるから早く解放してあげよう。
「おい、外してやるから止まれ」
「んがああ! ……む? なんじゃお主……? 人間の癖にどうやって飛んでおるのだ?」
「そんな事はいいから。 早く来い。 外してやるから」
「う、うむ……」
大人しく飛んでくる白龍の首もとに近付き、手を刃に変形させて白龍を傷つけないように首輪を断ち切る。
地上へ落ちていく首輪をきっちりアイテムボックスにしまう。
「ぬおおおおおお! お主は心優しい人間じゃのう!」
「で? なんでこんな物をつけてたんだ?」
「……それはのぅ──」
そう言って白龍が語りだしたのは龍の威厳を欠片も感じさせない無様な話だった。
最近友達が遊びに来ないから心配になって棲み家に行ったら白いローブを着た人間達に首輪を付けられたと。
クロカが語る龍族とはあまりにもかけはなれた話に笑いそうになるのを必死に堪える。
……それにしても白いローブ達か。
どうやら王都の外の町の奴がもう来たようだ。
そんな事より白龍の話に気になる事があった。
棲み家の位置的に間違いないと思うが一応確認をとっておこう。
「なぁ。その黒龍ってのは姫だったりするか?」
「なぜわかったのじゃ? あっ……ちなみに童は白龍の姫じゃぞ」
お前もかよ。姫が護衛も連れない無用心に彷徨くって……龍族どうなってんだよ。
「俺はその黒龍知ってるぞ」
「なぬ! 本当かの!?」
「あぁ。なんなら今から来るし、下で待つか?」
「う、うむ! 是非そうさせて貰うのじゃ!」
そうして俺は白龍と共に地上へ降りた。
「クドウ……お前……」
「…うわ。またアキが龍を連れてるぜ……」
「き、綺麗な龍です!」
「確かにニグレドさんと同じくらい綺麗な鱗ですわね」
「あ、あはは……凄い威圧感だね……」
「ニグレドさんとは違う希少な龍種がまた目の前にいます……」
皆に囲まれる白龍は気分良さそうに仲良く交流していた。
暫くしてフレイアがクロカと共に走ってやってきた。




