第117話 瘴気の発生
誇り高き龍の王族は悩ましげにウロウロしていた。
「うぬぅ~~何故来ない……? 童は彼奴の気に障るような事をしてしまったのかのぅ……?」
この龍は不安に駆られていた。 頻繁に遊んでいた仲の良い黒龍の友が遊びに来ないことに。
やがて、痺れを切らした龍は自分の棲み家を飛び出し、黒龍の友棲み家へと向かった。
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童は彼奴の棲み家を見て、己の眼を疑った。もっとよく見るために地上スレスレまで下降した。
彼奴の棲み家は荒れ地のように隆起し沈降し、草木は薙ぎ倒され……と酷い有り様じゃったからじゃ。
童は心身共に、文字通り真っ白じゃった。
故に童は忍びよる敵に気付けないでいた。
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白龍に忍び寄る白いローブの集団。
白いローブの集団はゆっくりと慎重に進み、近くの木の裏へ、茂みへ身を隠す。
「ティアネーの森が瘴気に侵されていないって言うから調査に来てみれば……」
「くくく……これは僥倖だ。 幸い今回は地面に設置して未熟なキメラを発生させるタイプじゃねぇ。 あの強そうな純白の龍を発生源にしてしまおう。 そうしたら簡単に瘴気は止められねぇよ」
「あんな強そうな魔物にどうやって取り付けるんだよ」
「みてみろよ。あの龍、動かねぇぜ。余裕だろ」
そう言って黒い首輪のような物を持った白いローブは茂みから飛び出し、龍に接近する。
「ぉぃ!」
他の白いローブ達が焦って小声で囁くように叫び追いかけるが、遅かった。
先行した白いローブは、カウボーイが縄をかけるように首輪を振るうと、首輪はビヨーンと伸びてあっという間に龍の首に巻き付いた。
龍が気付いて反撃しようとした時にはもう遅かった。
首輪からは瘴気が発せられ、辺りの空気が急速に悪くなり始める。
この首輪は装着した魔物が直ぐに瘴気に侵されないように、装着した魔物にピッタリと結界が張られる仕様なので、この龍が瘴気に侵されて死ぬことはなかった。
瘴気の奔流に怯んだ龍を見て、白いローブ達はすかさず懐から何かを取り出した。
それは球体で、薄く輝く虹色石だった。
白いローブ達はその石を手で掴み、魔力を流す。
するとその石が輝きだし、辺りが目映い光に包まれた。
光が収まるとそこに白いローブ達はいなかった。
あの石は『転移の石』と言う代物だ。
転移の石には二種類あり、一つがランダムな場所に転移するもの。もう一つが予め設定された場所に転移するものだ。
今回、白いローブ達が使ったのは予め設定された場所に転移するものだった。
龍は状況を理解できず、ただ、首に巻き付いた不快な首輪を外そうともがくだけだった。




