第116話 魔人発見
体育以降の授業は寝ている奴が殆どだった。
俺もその一人だ。
「クドウ君はいつもの事だけど、今日はみんな疲れてるみたいだね」
入学試験の試験官だった細身の眼鏡をかけた優男──アンドリューが言う。
アンドリューは魔法基礎の担当だ。
魔法基礎とは、魔法を使うにあたっての詠唱や消費するMP─魔力などの基礎的な事を教わる。
「仕方ないですね……こんな様子じゃ教えても無意味でしょう……えー皆さん。この時間は自習にします」
普段なら歓声があがるところだが、今はそんな余裕もないのだろう。
なんせ、今日の体育はいつもより厳しかったし、食後の運動だったと言うこともあったしな。
休み時間
廊下が騒がしい。
俺は顔を上げてチラリと窓から覗く廊下に目をやる。
「会長!」「会長!」「会長!」「会長!」「会長!」
生徒達が一ヶ所に群がり、会長!とだけ呼び掛けている。【透視】を使って群衆を強引に突破して、輪の中心を見る。
ちなみに【◯◯視】系統のスキルを使用すると、黒目の色が変色する。
群衆の中心に居たのは生徒会長──フレデリカ・エルウェッグだ。
入学式や、臨時集会などで見掛けたきりだった人物だ。
黒髪ロングに黒い目。キリッと整った顔立ちはクソ真面目な雰囲気を漂わせる。
スタイルも、モデルをやっていると言われたら納得してしまう程だ。
つまり、厳しそうな美人生徒会長だ。
いや、しかし……こいつだけの為にこれだけの人間が群がっているのか。
洗脳にも似た何かを感じざるを得ない。
気になった俺はフレデリカを【鑑定】する。
ちなみに鑑定を使うと額に目が浮かぶので、サッと済ませなければいけない。
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名前:フレデリカ・エルウェッグ
種族:魔人
Lv14
MP :153
物攻 :123
物防 :110
魔攻 :147
魔防 :145
敏捷 :139
固有能力
無し
能力
短剣術Lv1 拳闘術Lv1 蹴脚術Lv2 魔法Lv3 魔力操作Lv2 魅了Lv3 作法Lv3 歌唱Lv1 速筆Lv3 短時間睡眠Lv4
魔法
火魔法Lv1
水魔法Lv2
土魔法Lv2
風魔法Lv2
氷魔法Lv3
雷魔法Lv1
光魔法Lv1
闇魔法Lv2
無魔法Lv1
称号
無し
__________________________
うおおおおおお! 魔人きたあああああ!
何の魔物に化ける魔人なんだろうか?
って言うか魔人って人間と同じ見た目なんだな。 俺と同じで要所要所で姿を変えるってことか?
それにしても【魅了】か。
あのスキルであの群衆を意図的に作っているのだろうな。
まぁ考えても仕方ないし、取り敢えずいつかあいつに接触してみよう。
…………ん? 今、目があったような……
……まぁいいか生徒会長を囲う喧しい集団もいなくなったしもう一度寝よう。
俺はクラスメイト帰り支度の音で目覚めた。
これはいつもの事で、これが俺の目覚まし時計になっているのだ。
俺はさっさと鞄に荷物を詰め込んで教室を後にする。
教室の外にはフレイアとガレットがいた。
「クドウさん…また寝てたの?」
「退屈なんだよ」
「それでも、ちゃんと授業は受けておけよ?」
「……えぇ……」
「全くお前は……」
面倒臭いし、退屈だ。
はっきり言って入学したのを後悔している。 あの時は面白そうだと感じたけど、今は全くそう思わない。
「さ、早く行こう」
ガレットの説教が始まりそうだと予感した俺は話を逸らして階段へ向かう。
「こら、待てクドウ!」
まぁ一緒に帰る以上、ガレットの説教は免れないのだが。




