第11話 特殊個体
僕は額に目を出現させ、単眼蝙蝠の能力【鑑定】で、キメラのステータスを確認する。
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名前:アルヴィス
種族:異質同体
Lv34
MP :606
物攻 :532
物防 :565
魔攻 :524
魔防 :547
敏捷 :486
固有能力
【悪食】
能力
【身体強化】【金剛体】【威圧】【獅子の咆哮】【飛行】【豪腕】【溶解液】【再生】【粘液】【黒霧】【狂乱化】
称号
特殊個体
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能力が多すぎる。しかもどれもこれもがヤバそうな雰囲気を放っている。
それに固有能力【悪食】これは戦闘に使える能力なのだろうか? 僕に噛みつくぐらいなら【悪食】が無くても出来るだろう。いや、考えても無駄か。一応警戒しておこう。
能力の多さに目が行きがちだけど、能力以前にステータスの時点で僕の何倍もある。
正直どうすれば勝てるのか分からない。
僕は一旦思考を止め、アルヴィスと言う名前があるらしいキメラを見つめる。
アルヴィスは獅子の顔を持ち、背中には羽が生えている。
そしてアルヴィスから見て右前足は熊のような太い腕で、左前足は鉄の塊…ゴーレムだろうか。後ろ足は赤い鬼─オーガの足で統一されている。尻尾は緑と紫の毒々しい蛇が六匹。
そして身体中の至るところに口がついている。
この口のせいでアルヴィスの体が穴だらけのように見える。
僕が観察していると僕の視線に気付いたのかアルヴィスが僕を睨み付ける。
その目は自分が圧倒的な強者であると雄弁に語っていた。
僕はその自信に満ちた強者の威圧感に耐えられず、後退りしてしまった。
そんな僕を見てアルヴィスは口を歪めて嗜虐的な笑みを浮かべた。
僕は恐怖を紛らわすため、無策でアルヴィスに向かって走り出す。
角兎の角を拳に生やし、アルヴィスに拳を突き刺す。だが、アルヴィスは避ける素振りを見せず、僕の攻撃をその体で受け止める。当然、攻撃受けた箇所からは血が溢れだした。
しかし、みるみる内に傷が塞がっていく。
「再生か……!」
僕は【再生】の存在を忘れてはいなかった。
ただ、こんなにはやく再生するとは思わなかったのだ。
僕は後ろに跳んで腕を変形させる。
爪猿の能力【飛爪】を使い、遠距離からアルヴィスを切り裂く。
しかし威力が足りず、切り裂いたそばからアルヴィスは再生していく。
「……次……」
僕はめげずに次の攻撃を仕掛けようとする。
「ゥゥゥゥ…………」
アルヴィスは唸りながら僕に向かって歩みを進める。
しかし、足の動きがバラバラだ。
右前足は進もうとしているのに、左前足は動かない。
後ろ足に至っては、後ろに戻ろうとしている。
なんだ……?
何をしている……?
僕を馬鹿にしている……?
いや…………
それぞれの部位が意思を持って動いているんだ。
つまり、アルヴィスは満足に体を動かせないと言うこと。
これは良いことを知った。
……とはいえ、僕にはアルヴィスに有効打をあたえる事ができない。アルヴィスの能力【再生】が、僕が与えた傷を癒すから。
……どうすればいい?