第108話 特訓とは言えない特訓
「あの、クドウさん」
煩わしい問題から解き放たれ、机に突っ伏していた俺に話し掛けてくる人物がいた。
おかしいな。ここは2-2だった筈だ。なぜぼっちの俺に話し掛けてくる奴が……?
「んぁ?」
「あの、クドウさんにお願いしたいことがあるんですけど」
「俺に? えっとごめん。て言うか誰?」
これは大問題だ。俺はクラスメイトの名前を覚えてなかった。 全く関わらず無関心でいたのが災いした。
「えぅん……あ、えっと……私はスカーラです」
青髪青目のロングヘアーのクラスメイト、スカーラは不思議な声を上げてから自己紹介をした。
「スカーラか。よろしく。で? 俺に何の用?」
「えっと、さっきの話を聞いてしまったんですけど……」
「さっきの話って……あれか……」
「そうです。それで……クドウさんに私を鍛えて欲しいんです!」
待て待て。何でそうなった? あの男子生徒との会話聞いてなんでそうなった? と言うよりも……
「なぜ俺に?」
「一人でテイネブリス教団を潰せるような人に鍛えて貰えば強くなれると思ったんです」
「あぁなるほど」
まぁ話を聞いても俺にスカーラを鍛える事は出来ないけどな。だって、俺の戦闘スタイルはスキルによるゴリ押しなんだから。 ……寧ろ俺が鍛えて貰いたい程だ。
だけど……
「戦い方を教えるぐらいならいいぞ」
「ありがとうございます! クドウさん!」
放課後、噴水広場で皆を待ってからクエストを受けてからティアネーの森へ向かう。
「あの、クドウさん……これから何をするんですか?」
「特訓だ」
「そうですよね……」
不安気に返事をするスカーラは「あぁ、なるほど。ここなら人目を気にせず特訓出来ますよね」などと一人で納得していた。
ゴブリンが現れた。
「行け! スカーラ!」
「うわああん! やっぱりぃぃぃ! 魔物と戦うなんて無理ですよ!」
「うだうだ煩いぞ! さぁ、魔法を放て!」
「ひえぇぇぇぇえ!!」
俺はスカーラの特訓を開始した。
~~~~~~~~~~~~~~~
私、スカーラは他人にぞんざいな扱いを受けたり、叩かれたりするのが好きだった。
だから、強いクドウさんに虐めて貰おうと思ったのだ。
しかしそれは間違いだった。クドウさんは、私に魔物との戦闘をさせたのだ。
これは私が思ってたのと違う! やっぱりこう言うことは人に頼むべきでは無いのだ。今までだってドン引きされてきた。でも、その辛辣な対応が心地よくて私は止められなかった。
でも、今回はやり方を変えて、特訓と言う名目でビシバシしごいて貰おうと思ったのだ。
それがこんな事に……
…………でも、中々良い……!!
私は更に深みへとハマっていった……
~~~~~~~~~~~~~~~~
「クドウさん。あれはやり過ぎなんじゃない……?」
「…………」
フレイアの指摘は尤もだ。
だってスカーラは今、魔物の大群─数十体の魔物に追いかけられていた。
「はふぅぅ! た、たしゅけてぇぇ~~!」
……でも、追いかけられている当人はどこか嬉しそうだった。
「そろそろ助けに行くか。おーいスカーラ! こっちへ来い!」
俺の声を聞いたスカーラは紅潮した顔でこっちへ走って来る。
あぁ……可哀想に、やり過ぎたな。そんなになるまで……
「はへぇぇぇえ! もう限界ぃぃぃ!」
俺の目の前で倒れそうになるスカーラを受け止めて、貫通性能が高い氷魔法を横長に出現させ、射出する。
形状を例えるなら横向きのギロチンだ。
魔物達の体が綺麗に上下に分断され、吹っ飛んだ魔物の上半身の幾らかが転がってくる。
俺はスカーラをほんの少し離れたところに横たえる。
「…アキー! 魔物の死骸は皆で回収して来たぜ!」
「ありがとう。そのまま持っててくれ」
「いいのか? クドウが倒した魔物だろう」
「どうせ最後には纏めるんだからいいだろ」
「それもそうですわね」
時間を有効に使いたいと、皆は各々別れて魔物を狩りに行った。
今はある程度戦えるようにはなったから二人一組で魔物を狩っている。
余った一人のフレイアは俺の側でスカーラが目覚めるのを一緒に待っている。
やがてスカーラが目を覚ました。




