第104話 衝撃は止まらない
一頻り笑い合った俺達は脅威が去ったティアネーの森で魔物を狩って王都へ帰った。
しかし、台風の翌日の海や川魚がいないのと同じく、脅威が去ったばかりのティアネーの森は、魔物が全然姿を見せなかった。【探知】を使って探したが付近には全くいなかった。
「クドウ。あのキメラの事はどう処理するんだ? キメラの存在を報告するにしろ、素材を売るにしろ、面倒な事になるぞ」
「どうしようかな」
喰うのもアリだが、売って金にするのもいい。しかも素材の売却はギルドへの貢献と見なされ、多少はランクアップへの近道になる。
決めた。
「売る。金は山分けで」
「く、クドウさん!? ほ、本気なんですか!?」
「山分けとは言いますけれど、わたくし達は何もしていませんわよ?」
「別にいいだろ。倒した本人が山分けでいいって言ってんだから」
「……そう言うものなのかな……?」
困惑するアデルやその他を置いて、クエストの達成報告をした俺達は別の窓口で、馴染みの受付嬢に素材を買い取って貰う。
「素材の買い取りをお願いします」
「かしこまりました」
猫を被った俺はアイテムボックスから今日倒した分の魔物を取り出す。
それに倣って他のメンバーも取り出し始め、同じ場所に並べる。
自分で狩った分を自分で持ってはいるが、結局は売却額の合計を均等に分けたものが各々の収益となっている。
「…………あのすみません。コレなんですか?」
「キメラです」
「…………はい……?」
「キメラです」
「…………」
受付嬢が困惑しているが、俺にはキメラとしか言い様が無いのだ。許せ。
「……ちょっと待っててください」
「分かりました」
奥へ駆け込んで行った受付嬢見送り、その場合で待機する。
「あー……これ絶対大事になってるわよ……」
「そう言えばこの世界でキメラってどういう扱いなんだ?」
「えっと、簡単に言うとあんまり戦いたくない強敵って言う感じですね。個体によって能力が違いますし、多様な攻撃手段を持っていますから対策が取り難いらしいです。冒険者や傭兵などからは結構避けられてますね」
「なるほどな」
まぁ尤も、俺はキメラで在りながら多種多様な攻撃手段を活かせていないけどな。
そのへんはそのうち精神世界での修行でなんとかするつもりだ。
「…って言うかこの世界ってどう言う事だ?」
「ただ単に言葉選びを間違えただけだろう」
「なーんだ。てっきりアキが異世界人なのかと思っちまったぜ! ははは!」
「俺は異世界人だぞ」
『………………は?』
フレイア以外のメンバーの声が見事に揃った。




