第103話 和解
「……遠目から見てたけど、良かったの?」
「別にいい。これからも関わっていく事を考えたら今の内に話しておいた方が良いしな」
「そうね。ならいいわ」
横まで走ってきて聞いてくるフレイアに俺の考えを話す。
まぁ尤も、俺が魔人だと知って距離を置かれなければの話だけど。
「く、クドウさん……今のは一体……?」
「隠してたけど俺は魔人なんだ。俺自身は人間のつもりだけど」
「へぇ……そうなんだ。ボク初めて見たよ。魔人の人」
……あっさりした反応だな。 こんな人間とも、忌むべき魔物とも判断がつかない存在に対して。
「わたくしも初めて見ましたわ! 凄く不思議な感じでしたけど、わたくしは気に入りましたわ!」
なんか良く分からないけど気に入られた。 俺が思ってるより魔人のイメージは良いのか? 罪人の肉が生命線の魔人が……?
「…俺があんなにボコボコにやられた相手があっという間だ……アキ、これがお前の強さの秘密か?」
「そうだ」
「…いいなぁ。変形するのなんか格好いいしよぉ」
格好いい……? この変形するのが……?
これを羨ましがられた。 これは俺が殺して喰った魔物の証だぞ?
「気持ち悪く思ったり怖かったりしないのか?」
「あ、わ、私! ちょっとビックリしましたけど、そんな事思わなかったですよ!」
なるほどな。
こいつらの反応を見ていると、ここは異世界なんだな、と良く分からせられるな。全く感性が違うんだから。
「そうだぞ。それに友を気持ち悪がったり、怖がったりする訳無いだろう」
ガレット……いい奴だな……友達いない歴が長くてそんなの言われた事がないからちょっとウルッと来たよ。
「しかし驚きました。俺、魔人を初めて見たのもありますけど何よりその能力の強さに驚きました」
もう、見た目に触れない辺り本当にこの世界では魔人が溢れてるんだなって。
「よかったじゃない。あっさり受け入れて貰えて」
「あぁよかったよ。安心した。ははは」
「……っ!」
「……? どうした? フレイア」
「な、な、何でも無いわよ!」
なぜか怒ってしまったフレイアに首を傾げながら、アデル達と一緒にラモンの治療をする。顔を真っ赤にしているフレイアも治療に参加する。
「…みんな、助かったぜ。ありがとう。 ……一人で突っ走って悪かった。俺ちょっと視野が狭くなってたみたいだ。本当にごめん」
「べ、別にいいですよ!」
「みんな無事だったんだし、別にいいよ」
「胸を張ってくださいまし。男らしくないですわよ!」
などと励まされ、ラモンの纏うどんよりした空気は、少しずつ晴れていった。
「……すまなかった。ラモン。俺はお前の事情を理解しようとしないで一方的に自分の意見を押し付けてしまった。すまない」
「ガレット……俺もお前には酷い事を沢山言っちまった。ごめんな」
ラモンとガレットはお互い非を認め、ちゃんと謝罪をする。
良いな。世の中には非を認めず、頑なに謝罪しない奴が大勢いる。だから、俺には目の前光景が美しく見えた。
「お互い様ですね」
「…そうみたいだな!」
「ふむ。これからも仲良くしてくれるか……?」
「…もちろんだぜ!俺達の友情は永久不滅だ!」
ラモンの臭いセリフに何処からか笑い声が漏れる。その暖かい笑いはどんどん伝染していった。
俺もいつの間にか、少し頬を緩めていた。




