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第一章 三羽の若い翼

 地球に似た緑の惑星、神原(じんげん)。英名をテオゲア。

 神原と呼び慣わす国家アマツは、アマツ語で神原星(じんげんせい)として、この世界に神のおわす星と讃えた。

 テオゲアサイエンスが支配する現代科学時代、神原暦3059年。

 アマツ国の神原鋼鉄科学研究所では、超鋼鉄輸送メカが開発、建造され丁重に管理されていた。


 そんな平和な状態が続いたある日のこと。

 この惑星……神原に偵察衛星を破壊して無条件降下してきた何者かが侵入してきた。

 言ってしまえば、侵略行為だ。


 敵襲を情報入手したテオゲアサイエンス機構。局内で発足されたテオエアーズよりテオメタルファイターを出撃させ、侵略者討伐に挑んだ。


 隊長機から指示が送られる。

「ナンバーズの者らに告ぐ。これよりわたしの指示に従え。敵機と思える機体を捕捉しても攻撃するな。様子見として偵察する」


 ナンバーズの編隊が隊長機に(なら)って同行した。

 侵軍の隊列が成層圏を突破してから一時間余りが過ぎ、接触まであとものの数時間しかない。


 その頃――平和なアマツ国のとある山奥。山道を山頂目掛けてマウントボギィギアがパワーアップさせて駆けていた。


「まったくさ。こんな無茶してアカユキ山頂をギア車輌で行くのかね?」


 家出当然のリュウヘイが成り行きで車輌に連れ去られた事を気にしていた。


「ウチ出たがってたオマエを支援したんだ。文句あるなら降りてもらう」

「山中なんだぜ。よくもまぁ。こっから降りたらお陀仏だ」

「そりゃ……そうか」


 サイドシートに腰掛けていたアサミが横から口を挟んだ。


「急勾配が続くよ。あんたら舌噛んだって責任とらないから」


 ドライバーのクウトがアサミの胸元を見遣る。


「そこに顔埋めればクッション代わりになるから、舌噛まないさ、はは」

「もう、イヤらしい、ドライバーなんだから性能でなく技術で登りなさいよ‼」

「ゴツゴツした道だ。技術力で切り抜くのは困難だ。ギアパワーでクリアー出来りゃ苦労しないぜ」

「クウト……あんたと心中はごめんよ。頑張ってよね」

「クソッ……なんでもいいから、山頂まで届け〜‼」


 クウトのハンドル捌きで重量ある車体は、乗り手のソウルを吸い取ったかのように山頂まで到着させた。

 リュウヘイが後部シートで汗だくに干上がっていた。


「はぁはぁ……おい……はぁはぁなんでもいい。水分補給の場所くらいあるだろ。教えてくれよ。はぁはぁ」

「リアシート、暑かったな。それは悪かった。ボギー荷台にアイスボックスあるからそこから出してくれ」

「あるんなら早く言えよ。はぁ〜はぁ……」


 息切れが取れなくて、イチ早くアイスボックス内のドリンクを取り出すリュウヘイ。


「(ゴクッ)ハァ〜。生き返った〜」

「あたしも飲むわ。リュウ、一本頂戴」

「人遣い荒いな。まぁ、可愛いアサミ様のお願いだからな、ホレ〜」

「ちょっと、変なトコ投げないでよね、下手くそ」

「狙ったゾーンは正確なんだけど、アサミ様がキャッチ出来ないんじゃ?」

「ナニ〜」


 クウトは何かを察したか、山頂から高空(こうくう)を見上げて顔色を変えた。


「クウト。あなた、どこ見てんの? 顔色悪いわよ」

「変だ。とてつもなく恐ろしい事が起きるぞ。みんな、超鋼鉄輸送機の新型機……アマツイールを動かす。なぜか俺の脳裏にそう伝わった」


 続いてリュウヘイやアサミにも脳内に天声らしい女性と思える声に導かれた。


 そんな頃、神原鋼鉄科学研究所では、敵襲と思われる機影をレーダーキャッチし、各国から送られた偵察飛行のファイターが脆くも全滅した情報を入手した。


「国外の防衛軍から送られたテオメタルファイターが全滅し、敵機と思われる機影がアマツに侵攻の模様」


 オペレーターの正確な報告を聞いた索敵機関部のメインブリッジ統括リーダーのエンゲツ総監は決断した。


「わたしは、アマツイール格納庫に行く。それで決める」

「総監、あそこはまだ、例の3機は未完成であります」

「一か八かの確率だ。準備はしてもらう。よって、わたしも初陣を見守るつもりだ」


 どうやら、重工業の最前線基地に保管された新型兵器が出撃するらしい。秘密裏にしておいた秘密兵器とも言える『新型アマツイール』が出動する準備に入った。

 しかし、エンゲツ総監がリクルートした3機の特殊パイロットたちが搭乗待機する際に、例の敵機と思われる機体たちが格納庫を奇襲しだしたのだ。


「うわああああ‼」


 誰も彼もがもがき、絶叫した。

 その瞬間であった。

 アカユキ山頂に立っていたクウト、リュウヘイ、アサミの3名が同時にこの格納庫まで転送されたという。


「なんだよ。なんだ? ここって、クウトが言っていた科学研究所の中か?」


 素っ頓狂な声のリュウヘイが緊張感のある空間でムードを変えるような雰囲気を与えた。

 ざわめきだす格納庫内スタッフたち。


「ごめんなさい。あたしたち、ここまで、何らかの力で転送させられたの。状況判らないけども、信じてください」


 アサミが、格納庫転送について落ち着いた態度で接した。

 後からクウトがキョロキョロしながら挙動するように睨む感じで落ち着きなくしていた。


「クソ。おい、エアーズのファイター隊長の機体は無事か教えてくれよ」

「君たちは、誰かね? それと尋ねる時は敬いなさい」


 総監らしくエンゲツはクウトを睨み返した。


「パイロットのリーダーは俺の親父なんだ。生死状況は知ってるはずだろ」

「礼儀作法が判らないのだな。まぁそれはいい。エアーズ編隊は壊滅状態だ。それだけである」

「壊滅⁉ そんな。親父が死んだ。クソッ。外国に飛んで指揮官になったというから期待してたのに〜」


 両の拳を固めて身震いしたクウト。


「こんな有様だなんて……家族に会えずに勝手に逝きやがってさ」


 第二波の格納庫襲撃がきた。

 天井が食い込まれた。


「総監‼ 早く出動の命令を!」

「これも何かのお導きだろう。君たち、新任のパイロットと入れ替わりに新型アマツイールに乗り込んでもらえないか?」


 リクルートされたパイロットたちが吃驚(びっくり)し、


「総監⁉ あんまりです。そんな子供に当機を預けるなんて」

「彼らの腕を確かめる必要がある。責任はわたしが持つ。今は彼らのに頼ろう」

「総監……そんな」


 格納庫の天井は持たないと察したか、緊急にパイロットの入れ換えをしだした。


「格納シャッター展開後、即座に閉鎖し、我々は避難所連絡地下道を進行する。以上だ‼」


 クウトたちが新型機に乗り込み待機すると、操作パネル脇のマニュアルノートを見遣り、単純な操作法を読破した。

 シャッターが展開しだした。総監の掛け声に合わせてスクランブルしだした若き鷹たちが巣立っていったのだった。

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