理想
メイザースはミネルバを反転させて私の方へ向かせると背後から彼女の腰に両手を置いた。
「いいかな?紳士のエロチズムというのにはTPOとロマンがあるのだよ。朝っぱらから脇腹の開いた、だらしのない格好を望んだりはしないのだよ。」
メイザースはそう言ってミネルバのドレスをそのボディラインに見合う薄く、上品な青紫の美しいドレスに変えた。
「上品な姫君の朝の姿は、春先のバラの蕾のように硬く、そして、ほんの少しの色が見えるくらいで十分なのだよ。」
メイザースはそう言って、ボレロのような丈がウエストあたりの上着をミネルバのドレスに加え、その言葉に彼女をうっとりとさせた。
「首筋はレースの美しいタートルネック。そして、誠実さと麗しさを象徴する真珠のブローチを一つ。こちらの方がそそると思わないかな?
前の服装は、女性が投げやりにエロチズムを考えた雑さがあったが、私のドレスはエレガントだとは思わないか?そして、夜の彼女を夢想する楽しみを持ち合わせている。」
メイザースの自画自賛を、大きな真珠のブローチを飾ったミネルバがうっとりと褒め称える。
「さすがですわ。なんて上品で着心地の良い生地なのでしょう。このようなドレスをいただけるなんて、私は果報者ですわ。」
ミネルバの褒めちぎりを聞きながら、さすなろを羨ましがっていた作者を思い出して少しだけほんわかしてしまいました。
ああ。早く作者に会いたい。こんな事をしている場合では無いのです。
「それで、これからどうするのですか?」
私は少しイラつきながらメイザースに聞いた。メイザースのイチャイチャを見ていたところで時間の無駄です。
メイザースは私を見て、少しがっかりしたように肩を落とした。
「クエストをすることになりそうだね。レディは裏の世界にいるようだから、我々も表の世界から、裏の世界へと行かなくてはいけないからね。」
「裏?私の作者が裏の世界にいるのですか?表ではなく??」
思わず聞いた言葉に、メイザースはやれやれ顔で聞いてくる。
「ああ、正位置の月の道を辿った世界だよ。ウエイトくんは解説をしてはくれなかったのかね?月は逆位置の方が良い意味なのだよ。」




