四つの世界5
「私、やっぱり流出界で、始めるわ!」
作者は、強い意思で伯爵を見た。
その声に従うようにシトシンが作者の横につく。
「どうしましたか?」
呆れたように伯爵は作者を見た。
が、作者は怯まずに不敵な笑いで返す。
「人生、最初で最後の少女小説になるかもしれないのよっ。読者は喜ばせることは出来なくても…自分が感動できる…納得できる話を作りたいのよっ。」
作者は、強く夢を語り、その力はシトシンを強くさせますが…
『魔法の呪文』と言う未完少女向け作品を既に発表しているので、私の心は複雑です。
「作りはじめは…力を抜いた方がうまく行くと思うよ。」
伯爵はやれやれとクルミ材のビクトリア調の丸テーブルを出して椅子に座り、グアニンにお茶をオーダーする。
「いいえっ!命短し、灯籠流しよっ。いつ、お迎えがくるか分かんないんだから、毎日が一本勝負よっ。」
作者の強い言葉に…剛さんへの気持ちが滲んでいます。
「ふっ…一本勝負か、面白い。で、流出界で何をするつもりかな?まあ、ハイ・ティーでも飲みながら教えてくれないかな?」
伯爵の言葉は、魔法がかかっていました。
ビクトリア期のお茶会は女主人が司る社交場であり、ハイ・ティーは、晩餐会前の少し、豪華なお茶の会でした。
水を司るグアニンの衣装は、伯爵の言葉と共にレースで飾られた豪華なティー・ウェアに代わり、それにあわせて、伯爵が作者の衣装を可愛らしいピンクのティー・ウェアに変えました。
グアニンが飛ばす招待状は、作者すら凌駕する強い拘束力を発揮し、作者は誘われるまま席につきました。
と、言うか…ただ、好きなんですが。
ホームズ
ドレス
乙女小説
作者は、ビクトリア時代が大好物なのです。
あの、美しい銀のティースタンドに、あがらえるわけもないのです。
「私ってさ、凄く頑張って構成しても、脱線してエタるじゃない?
だから、完結するために基礎から固めたいのよ。」
作者は、嬉しそうにグアニンから紅茶をついでもらう。
ハイ・ティーを注ぐ栄誉は、女主人の特権です。
「基礎か。」
伯爵が私に意味深げな流し目を向ける。
イエシェド…それは、生命の樹の9を司る場所…
そこへ向かえと、言うのでしょうか?
私は作者を見た。作者は面倒くさそうに伯爵を睨む。
「はぁ?しらないわよ。私はね(///∇///)、花嫁さんのプレゼントを思い出したのよ。」
「ブルーのガーターベルトか?」
伯爵の怪訝そうな顔に作者は憮然と返す。
「なによ、エッチねっ、違うわよ。花嫁さんはね、
新しい物、
古い物、
友達に貰ったものを手にすると幸せになれるのよ。」
夢見るように作者が言うと、グアニンのライフがワンランクupしました。
「サムシング・フォー か。ひとつ足りないようだね。」
「え?」
「マザーグースの詩だろ?」
と、伯爵がグアニンを見ると、グアニンは立ち上がり、可愛い声で歌う。
♪サムシング・フォー
サムシング・おーるど
サムシング・NEW!
サムシング・ブルー
サムシング・借物
&6ペンス イン 彼女シューズ(^-^)
「身に付けるもので4つかぁ(゜-゜)だから、ブルーのガターベルトが出るのね。」
作者の恥ずかしそうにうつむくのを伯爵は楽しそうに見つめる。
「で、それがどうしたのかな?」
伯爵の質問にぶっきらぼうに作者は答えた。
「花嫁さんみたいに、物語にも必要だと思ったのよ。少女時代の古い夢。そして、ちいちゃな読者に贈る未来の夢。」
作者の言葉に伯爵がからかうように聞く。
「友達からの貰い物は?」
「悪かったわね、借り物…でしょ?あなたの生命の樹の概念よ。」
作者の言葉に伯爵が嬉しそうに笑う。
「嬉しいね。友達か…では、友人の私が『ブルー』をあげよう。」
「ガターベルトとかいらないわよっ!!」
反射的に叫んだ作者の手には、タロットカード。
それは、美しい青空に浮かぶ両性有具の天使。
世界のカードです。
作者が驚いていると、カードの天使が飛び出してきました。
「我は『時の夜の偉大なる者』」
天使は、この世のものとは思えない、すずやかな声でそう言うと、空を指差した。
すると、美しい満月が現れ、満開のヒースの咲く…紫の道が現れた。
『時の夜の偉大なる者』は黄金の夜明け団で多分、メイザースが名付けた大アルカナの『世界』の秘密の称号です。翻訳者は誰なのかわかりませんでした。とりあえず、『』で囲み、引用としました。