四つの世界2
さて、どの道を選びましょうか?
迷う私を差し置いて、伯爵が作者に話始めました。
「さて、道は時影君が選ぶとして、界は…ああ、貴女は次元と、呼んでいたね?それはどうするの?」
伯爵の言葉に、各次元を担当するプリンセスを作者は眺める。
「まあ、私、文章しか書けないし、一次元…シトシンの世界で行こうかな?」
作者はシトシンに笑いかける。
シトシンは、魅惑的な笑顔で作者に会釈をする。
「確かに、何もなければそれが基本だ。が、貴女は隠れ悪魔を探すのではないか。」
伯爵は、グアニンの手を取ると作者の前で会釈をさせる。
「それに、カセットゲームのシナリオを作るくらいの気概を見せなくては、読者は釣れないよ。」
伯爵の口上に、カップのプリンセス、グアニンは巻きスカートを振りながら美しい脚線美を見せつける。
「ゲームシナリオ!無理、無理無理…」
作者は目を回しながら首をふる。
「難しく考える必要はないよ。」
「いや、ゲームのシナリオなら、複数エンドを考えないといけないんでしょ?分岐とか…」
作者は混乱して不安そうに首を振りながらうつむいています。私は作者の後ろに立つと、彼女の肩に手をおいた。
「お好きな世界観で物語を紡げば宜しいのですよ?」
私の言葉に作者の肩の力が抜ける。
「好きな…世界観…。」
作者はボンヤリと呟いて物思いに沈む。
伯爵が作者の前にしゃがみこんで作者の手を握りしめる。
「なっ、」
私の叫びを伯爵は軽く睨む。すると、金縛りにあったように声が出なくなりました。
キャラとはいえ、やはり、大魔術師として数々のラノベ作品で知られた人物は操るのが難しい。
動けなくなった私を無視して伯爵は作者に話しかける。
「深呼吸をして。大丈夫。私もついている。
それに、活字のみの作品とは言え、貴女は剛くんを既に立体でモデリング済みだからね、流出界には居ないと思うよ。」
伯爵の言葉に、作者は困ったように眉をしかめる。
「ええっ…そうなの?」
「何を心配しているのだ?メガバースを作ると話していたではないか!」
伯爵に励まされ、作者は赤面しながら照れ笑いを浮かべる。
忘れていたのですね…
私は複雑な気持ちで作者を見つめた。
「ああ、そうだったね…(T-T)私、つい、勢いでバカなことを!
まあ、いいわ。でも、形成界の世界観なんて、作れるかしら?」
作者は全てをぶん投げたような、清々しい笑顔で伯爵をみる。
「別に、難しくはないさ。基本、アストラル界は想像力と意志の世界。
貴女のイマジネーションがあれば、あとは必要な力を集めればよいこと。」
伯爵は、そう言って昭和のマジックショーのような、大袈裟なゼスチャーで右手を空に向ける。
「そして、2次元ゲームもオープニングは結構、作られていたのだよ。」
伯爵が手を振ると、世界が光で覆われ、昔、どこかで見たような、ゲームのオープニング風味の巨大な文字が空に浮かぶ。
それは、一瞬、花火のように輝いて消え、新しい物語のタイトルが、電子音の可愛らしい曲に会わせて浮かんでくる。
『ふぁうすと・レディ(ハート)』
その題名に作者は悲鳴をあげる。
「え、え?どういう事?ふぁうすとって、ゲーテの『ファウスト』の事?
それとも、『最高の女性』を文字ったの?」