表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/56

初連載

「なんで味噌おでんなの?せっかく名古屋に行くなら、大きなエビフライとか、なんか鰻とか、そんなの食べるんじゃないの?」

味噌おでんと聞いて奈美は不思議そうに剛に聞いた。

「エビフライ?そんなのツルツルマートで買えるじゃん。」

剛は、バカにしたように奈美をみた。

ツルツルマートは、奈美の町のスーパーマーケットで、剛の御用達である。

「それって、味噌おでんだって同じじゃない。と、言うか、名古屋のエビフライは、すごいんだよ…。」

奈美は晴香に同意を求めて話を続ける。

「名古屋のエビフライは、物凄く大きくて、長いんだよね。私は、おでんよりエビフライがいいわ。

おでんなんて、味噌つけるだけで、そんなに違いは無いでしょ?」

「…そうでも無いらしいわよ。味噌が違うみたいよ。」

晴香はスマホで検索しながら言った。


「俺はエビはいらないよ。味噌おでんがいいんだ。」

剛は、味噌おでんを思い出して嫌らしい笑みを浮かべる。

奈美と晴香は、そんな剛を複雑な気持ちでみつめた。

「でも、モーニングは別だよ。」

剛は慌てて名古屋のモーニングを付け加えた。


「おでんとモーニングだけなら、交通費を払ったつもりで、こっちで豪遊すればいいんじゃない?」

奈美は呆れながら文句を言う。

「名古屋ビルジングが無いじゃない。」

剛は、どや顔で指摘するが、奈美は名古屋ビルジングの良さがイマイチよくわからなかった。


「なんか、よく分からないけど、だったら、その名古屋ビルジングの為に頑張りなさいよ…(T_T)

アンタ、確か、名古屋ビルジングが改装される前からそんな事をいってるんだから。

もうっ、夕方の時代劇で世直しジーさんの東海道旅日記が終わる度に私は、モヤモヤするのよっ。

ジーさんだって、江戸時代に歩いて一年で行けるのにさ。

なんで、21世紀に生きてるアンタは何年たってもいけないのよぅ…。」

奈美は、フリマの思いでと共に、ガンダーラの様に長い名古屋への道を噛み締める。


「あんなの、嘘の話じゃない。」

「じゃあ、ホントに行った人がいる自転車で挑戦したらどうよ?

アンタのあのレース用?か、なんかの高級自転車でさぁ。

確か、ダイエットするって頑張ってたじゃん。

なんか、ツルツルピッタリのツーリング用のシャツも持ってたじゃない。

あれを来てさ。」

奈美は少し意地悪をいう。

自転車を買って半年で剛は20キロ痩せた。が、調子にのって年末からダイエットのブログを書き始めてからが悪かった。


正月の餅の食べ過ぎで一週間で10キロ太り、その事実と向き合えずに自転車とブログはフェードアウトしたのだった。


「着れないよ…知ってるくせに。」

剛は、ちょっと少女のようなふて腐れ方をする。


「知らないわよ。」

奈美がそう言ったとき、頃合いを見計らっていた晴香が声をかける。


「まあ、いいじゃない。それより、小説、今は何を書いているの?」

「ああ、うん。短編を何個か書いて少し慣れたから、次は連載に挑戦するつもりなんだ。」

奈美は嬉しそうに微笑んだ。

「連載?」

晴香は少し驚いて奈美をみる。

「ああ、そんな、テレビや雑誌の連載みたいのじゃなくてね、もっと短い数話のお話を試しに載せるつもりなんだ。」

奈美は慌てて説明する。


小説を書くなんて言うと、何か、とてつもなく凄いことをはじめたと誤解されるが、書いてる本人はブログの延長程度なのだ。


こんな小さな町で、へんな噂はたてられたくはない。


「どんな話?」

晴香は興味深く奈美を見る。

どんなに下らないと言われても、自分の身のまわりで小説家のたまごをみつけたら、それなりに興味がでるものだ。


「うん…。ジャンルを少しずつ攻略するつもりだから、歴史にするわ。

で、剛にも手伝ってもらうわ。」

「え?俺?俺は何もできないよ。」

剛は、急に名前を呼ばれて混乱した。


「冗談じゃないわよ。私一人だけ必死に働くなんて嫌だから、アンタには、原作になってもらうわっ。」

奈美に言われて剛は、視線が定まらない。

「お、俺はっ、なにもで、できないよ。小説なんて…。」

緊張する剛を見ながら奈美はため息をついた。


「大丈夫。もう、アンタの仕事は終わっているわ。

剛、私は、アンタに何度も煮え湯を飲まされてきたけれど、それでも付き合いがあるのは、アンタのその間抜けで底抜けな人のよさよ。

人間じゃなかったら、絶対、人気者になれたと思うのよ。」


奈美は真剣に剛に言う。

「人間じゃなかったら…。」

剛は、露骨に嫌な顔をし、この二人のやりとりに晴香は笑いたいのを我慢する。

「うん。妖怪だったら、面白いやつだし、許せると思うんだ。アンタの数々の無礼を。」

「なんかしたっけ?」

剛は、不満そうに口を尖らせた。


「ありすぎよっ。海産ラーメンを半分こしたときは、具を根こそぎ欲しがって、初めてだっていうから、私も、イカ以外をみんなあげたのに、しばらくしたら、私の虎の子のイカまで奪ったくせに…。」

奈美は責めるように剛をみた。

剛は、潮目が変わったのを感じて必死で話題を変えようとヒョットコみたいに口を曲げながら何かを考える。


「し、小説何書くの?」

剛、分かりやすく話をぶったぎり、奈美はそれに呆れたが、昔のイカの事をいつまでも文句を言っても仕方がないので、小説の話に切り替えた。


「うん。ノストラダムスの話を軽くするつもり。

あんたとギターの思い出をモデルにね。」

奈美は少し意地悪く剛に笑いかけた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ