次元5
そして、最後を飾るのがチミン…
大地の精霊。
地面をマグマで赤く染めながら、フォーマルベストにパンツ姿、黒い蝶ネクタイに、頭には金色の羊の角を模した冠を被り登場しました。
「チミン…大地の精霊。彼女は4次元を支配するわ。ゲームで言うなら、オンラインゲーム。
プレイヤーは、共通の時を分かち合えるけれど、もう、セーブからのやり直しはきかないわ。」
作者は呟くように言った。
四精霊は並んで作者と伯爵に会釈をした。
「すばらしい!美しい精霊達。」
伯爵はどさくさに紛れて私の作者を抱き締めて、額にキスをする。
全く、西洋人といいのは、ところ構わずキスをするのだからたまりません。
隙をみて作者を取り返すと、汚れた額を絹のハンカチで拭ってあげました。
「時影…。ありがとう。」
作者は少し驚いたように私をみて、それから、優しく微笑んだ。
「タイミングが遅くなり、すいませんでした。」
私は小さくなった作者を背中から抱き締める。
小さな頃、寂しい雨の日にしていたように…
「おほん!で、四精霊を呼び出して何をするのかな?」
伯爵は煙たそうに私を睨み、作者には笑顔で質問する。
作者は軽く息を吐き出して気合いを入れると話始めた。
「11次元の異世界メガバースを作るのよ。
11次元と言っても、人間には見た目は4次元にしか見えないらしいから。
他の次元は、小さくて張り付いてる…まあ、そんなイメージで作ろうと思うわ。私は小説家で、詳しい物理の法則は、未来の高校教師に任せるわ。
とりあえず、これで考えられる5次元の要素は『重力』
重力は時間に干渉できるから、まあ、当たってなくても、遠くもないでしょう。」
作者の言葉で、チミンが杖を高々と掲げる。
先端の丸いダイヤ…白色矮星が輝き、世界に上下が重さや早さの『縛り』がプログラムされる。
「ナルホド…これで、通常ユーザーには重さが操れない。操れるのは『呪文使』と、課金で魔法を入手したもののみ。と、言うわけなのだな。」
伯爵は、少しずつオンラインゲームの世界を取り込んで行く。
「そうね。我々は普通に生きている世界の法則を上手く理解できていないわ。
空間に漂う酸素の存在を忘れてしまうように。
縦、横、奥行きと時間のみで次元を説明されるけれど、本当はそれ以上の様々な約束事が隠されているわ。
例えば、3次元のゲームの初期には、壁を通過するバグがあったわ。
質量の縛りを作らなければ、壁はその役を果たさないもの。」
作者は、間違い探しをするように楽しそうに微笑んだ。
「つまり、質量に関するプログラムをハッキングしたものが、壁抜けの魔術を手にするわけだ。」
伯爵もまた、新しい世界を楽しそうに吸収し始めた。