さすなろ2
「さすがなろうの主人公…貴女は作者だから、さすなろの対象外。寧ろ、私の方がさすなろに相応しい。」
伯爵に指摘され、作者は頬を膨らます。
「そうだガオッ。マスターの言う通りだ!」
ライオン娘が嬉しそうに伯爵に飛び付く。
「確かに、マスターは、この世界の創造主にて、ラノベの重要キャラ。皆さん、マスターをもっと崇めるべきなのです。」
牛娘が、豊かな胸と髪を揺らしながら圧力をかけるように称賛する。
「同感ね。」
秘書っぽい少女がクールにそれだけ言う後ろで、鳥女が、伯爵を称賛する歌を歌う。
(¨;)
作者はその場に固まるように、称賛される伯爵を見ていたが、しばらくして、私の近くに来ると、口を尖らせながらこう言った。
「なんか…読者の気持ちが少しわかった気がしたよ〜
なんかさ、みんな年下だし、子供のお話だから、なんか、派手に誉められていても何も感じなかったけど…
こうして、間近でみると…モヤッとするね(-_-)゛」
伯爵は、自分のつれてきたケルビムの他に、作者のプリンセスと従者に囲まれ、昭和の学園ものの先生状態で持ち上げられていた。
一生懸命作り出した、私の作者のプリンセス…
それらを改編され、勝手に使われるのを見るのは…やはり、辛いのかもしれません。
「じゃ、一緒に逃避行ましょう!!」
私は作者の左手首を掴み、笑いかけました。
作者はビックリした顔をしてから、笑顔で頷く。
「ふける…かぁ。一度、学生時代、憧れたなぁ…」
作者が目をほそめ、私はそれを合図にこの場を去ろうとした。
が、次の瞬間、左の腕を捕まれて制止させられました。
「時影くん。危ないと忠告したはずだよ?」
伯爵が私の腕を砕かんばかりに力を入れてきます。
「私はこの物語のストーリーテラー。
貴方の指図は受けません。」
私は作者をつかんだ手を離して、伯爵の胸ぐらを掴んだ。
19世紀の大魔術師がなんだと言うのでしょうか?
我々は、21世紀のWeb作家。昔のファンタジーの法則など、とっくの昔に超越しているのです。
「2人ともやめなさいよっ。」
作者が叫び、それを聞いて伯爵が軽くため息をつく。
「やめて欲しいのは私の方ですよ。」伯爵はボヤくように作者に言って、私に責めるようにこう言った。
「君、彼女のナイトを気取るなら、もう一度、世界を再確認しなさい。
彼女は『偉大なるマグレーガの理論』を使い、生命の樹をアップデートしようとしてるんだよ?」
「ま、マグレーガーりろん…って(°∇°;)そんなん考えてないわっ。」
作者が赤面して叫び、私は伯爵が気をそらした瞬間、私を掴む彼の手を引き剥がす。
伯爵は、私を軽く一瞥してから、身なりを整え、作者に向かって穏やかに問う。
「では、マジック理論と言い直そう。」
マジック理論…
作者は怪しげに伯爵を見ていましたが、私はそれを聞いて恥ずかしさが込み上げてきました。
マジック理論…M理論…これは、量子物理学の超紐理論の延長で考えられた世界の形。
世界は11次元の世界から構成されると言われており、物理学者エドワード・ウッデンは、テレビ番組の中で、M理論のMは、マジックでも、ミステリーのMでもその人の解釈で良いと答えていた。
が、エドワード博士も、19世紀の魔術集団にマジックと解釈されるのは不快に違いない。
これは、物理学の用語であり、オカルトファンタジー用語ではないのですから。
「M理論って…どうするつもりだったのですか!
生命の樹は、4エレメントが互いに共鳴する世界。これだけでも大変なのに…11次元なんて!
現役の学者すら、扱いに困るものを入れ込んだら、ますますエタ作品が増えるだけじゃありませんかっ。」
思わず叫ぶ私に、作者が赤面で涙目のまま訴える。
「だって、うまく話があっちゃったんだもん。
11次元と言っても、人間が認知できるのは4次元までで、そこに残りの次元が張り付いてるんだって言うんだもん。
メガバースだから、ゲーム世界を考えたんだ。
そしたら、すんなりはまったんだもん(T-T)」