プリンセスメーカー
少女姿の私の作者は威嚇をするように伯爵に叫ぶ。
「なんで、アンタは動けるのっ…」と。
それを受ける伯爵は、キザな憂い顔を作る。
「一応、創造者ですから。」
「ぐっ…グランドマスター…(-_-;)」
作者は言葉をつまらせた。
「そうですよ。グランドマスターです。
貴女は、事あるごとに『私の』を連発しますが、現世の法則がどう変わろうと、私がこの世界の創造者には変わり無いのです。」
伯爵は、プリンセスを含めた全てのキャラに囲まれてどや顔をする。
「しってるわよ〜そんなん、誰だって!ラノベ好きなら、子供だって、そんな事疑わないわよ!」
作者は不機嫌に叫んだ。
そして、口を尖らせて、ラノベの表紙の集合写真のような伯爵達を見つめて続きを話す。
「ホント、年配女性のささやかな楽しみにまで権利がどうとか…ちっさ…。」
少女姿の作者が発すると、生意気さがMAXです。
あれで、伯爵は大魔術師です。
それを…「ちっさ」とか、いってしまって…私が恥ずかしい。
恥ずかしがってる私とは逆に、伯爵は楽しそうに笑って作者の頭に大きな右手を乗せてグリグリとなで回します。
不機嫌そうな作者は、体格差になすすべもなく、哀れな姿でされるがまま、撫でられていました。
「もうっ、髪の毛ぐちゃぐちゃだよ…もう、帰ってよ〜。」
作者は不機嫌に伯爵を睨み、伯爵はそれを楽しそうに見つめていました。
「無体だな。」
「それはそっちでしょっ(T-T)
いいじゃない…昔から、何でもお下がりばっかりだったわ。りりちゃん人形だって…従姉妹のお下がりで、自分も人形も…好きな服なんて着られなかったんだもん。
新品の自分のモノなんて、空想しかなかったんだもん(>_<。)
プリンセス…私が作った新品だったんだもん。
私が一番に紹介したかったんだもん。」
作者が叫び、それを見た伯爵が少し困った様に首をかしげ、そして、優雅に左手を宙で一回転させながら、恭しく挨拶をした。
すると、次の瞬間には、作者は若い娘に変わっていました。
ふわふわのドレス姿に変身した作者に、伯爵が正装で、右手を差し出しました。
作者は、それを猫背でキョトンと見つめ、それから、自分のヒラヒラのスカートを軽くつまんでうつむいた。
「どうしました?これは、貴女のための一点モノ。
夢のプリンセスにしてあげたのですよ?」
伯爵の言葉に、作者は少し、悲しそうに微笑んだ。
「ありがとう。でも…私、もう、お姫様になりたいなんて気持ちは無いんだわ。」
作者はそう言って、もとの子供の姿に戻った。
「お姫様がお嫌なら、女王にしますか?」
伯爵の言葉に、作者は首を横にふって、こう答えた。
「姫も女王も…私はもういいの。私は、作家になりたいのだから。」