資金稼ぎ
「で、お金になりそうなの?」
晴香が心配そうに奈美に聞いてきた。
奈美はすがり付くように目を見開いて晴香を見つめ、それから諦めがちに
「無理だと思う。」
と、言った。
勢いでWeb小説に会員登録したものの、だからといって小説がそこで売れるわけでは無いようだった。
「キャッシュになるのは、ズバリ公募。賞金つきの公募くらいよ。
後は、四万ポイントゲットで書籍化を目指すらしいわ…。
私、何作が作ったけれど、どうにもならない気がするわ。
あーあ。一作100円くらいで馬鹿話を書きたかったのに…。こんなんじゃ、一円にもならないわ。」
奈美は泣き言を言うが、剛は、その隣で、我関せず、といった風に上手そうにコーヒーをすする。
「そうね。そう簡単じゃないわよね。」
晴香は少し残念そうに苦笑する。
「うん。なんか、間違えた気がするわ…。フリマも無くなって来たじゃない?
私は、Web小説で私たちの面白話をワンコインで売れるところだと思ったのよ(-_-;)
ほら、私たちには、話題にすぎて飽きた話でも、知らない人には面白いこともあるじゃない?
そんな話を100円で売れるところだと思っていたのよ。」
奈美はそう言って深くため息をついた。
「なーんだ、お金にならないのか。」
剛は、つまらなそうに呟いて奈美の気持ちを逆撫でする。
奈美はムッとするが、気持ちを切り替えて晴香を見つめた。
「でもね、書籍化とか、ポイントとかは無理でも、人は見に来るみたいなんだよね。
元々、私たち、廃品の再利用で作品を作ったりして売っていたんだから、考え方を変えることにしたわ。
つまり、Web小説で私たちの作品を主人公にするお話を作ることにするのよ。
今までは、大手のオモチャメーカーしかそんな事は出来なかったけど、
ここでなら、私たちも無理なくキャラクターを使った物語を発表できるわ。そして、作った物に付加価値をつけられるの。ね?いいでしょ?」
奈美は少し夢を見るように目を細めた。
「そうね。」
晴香は、奈美が元気を取り戻した事を喜んだ。
「私ね、晴香さんのカッパの人形を主人公に物語を作るつもりよ。」
奈美は、毛糸の玉を繋げた、晴香の作る小さなカッパの人形を思い浮かべた。
貰った大量の緑の毛糸を売りたかった晴香が、作品例として作ったものだったが、なぜか人気があり、奈美はいつか、それを大量生産したいと考えていた。
「え?あのカッパ…。」
晴香は、突然、自分の作品が話題に登場した事に驚いた。
あれは売り物じゃ、ないのだけれど。
晴香は少し不満もあったが、口にはしなかった。
年下の奈美が嬉しそうに話しているのに水をさしたくなかったのだ。
「うん。あれ、みんな欲しがってたじゃない?
あれ、手足がモールで可動がいいし、私、あのカッパを持って、この辺の良さげなところで写真を撮ろうと思うのよ。で、挿し絵の代わりにするの。
上手くすれば、観光客も少しは増えるかもしれないし。」
奈美の夢は膨らむ。
「そう?じゃあ、皆でカッパをつくる?」
晴香も楽しそうに微笑んだ。
「うん。300…いいえ!500円で売りたいわね。
500円で40体。それだけあれば…名古屋へのガソリン代になるでしょ?」
奈美はそう晴香に微笑んで、それから、隣で他人事のように窓の外を見ていた剛に文句をいう。
「もうっ。誰のためにこんな苦労していると思うのよっ。アンタもカッパをつくるんだからね。」
奈美は剛に声をあらげていって、剛を驚かせた。
「えっ?」
「え、じゃないわよ。名古屋に行くんでしょ?なごや。」
奈美が呆れながら言うと、何か、頭のスイッチが入った剛は、嬉しそうに頷いた。
「名古屋いいよね…。俺、名古屋に行けたら、味噌おでんを食べるんだ。」
剛は嬉しそうだが、奈美と晴香を混乱させた。