4つのエレメント
「ありがとう…本当にありがとう(T-T)
インドや太平洋の話、勉強になったわ…でも、これは私の話だし、カップのプリンセスの従者はメンズじゃなくて、少女なのっ。」
沈黙を破り、作者は一気にメンズを可愛らしい少女に変えてしまいました。
南米の民族衣装を参考に、カラフルでヒラヒラのワンピースにビーズで飾られた皿型の帽子に3つ編みの少女です。
「これは…可愛らしい。確かに、こちらの方が素敵ですね。
彼女たちのスカートの柄。クリスタルではないのですね。」
伯爵は先生のように余裕で批評している。
「ありがとう。今回は木製の飾りボタンにしてみたわ。」
「真ん中の2つの丸と外側の円…重水素ですか。盛りますね。」
伯爵にそう言われて、作者がギクッ…と首をすぼめます。
図星…なんですね(-_-;)
重水素…地球に溢れる水素は基本、水素は陽子と電子が1つで構成されていますが、重水素は、中性子が余分についているのです。
宇宙…彗星からの飛来物とも言われています。
これからのエネルギー…核融合にも必要で、これから注目される物質です。
「いっ…いいのよっ(///∇///)
絵本を売るんだもん。とにかく、一般生活で使わない理数系の言葉をランダムに入れ込むのよ。
小さい頃は、魔法の呪文って言えば、意味なんて関係なくすんなり頭に入れてくれるんだから。
重水素が勉強になる前に…
好感を持って記憶に残す…
その言葉の種は、大きくなったとき、芽を出すかもしれないじゃない。
私は、子供に『言葉の種』をプレゼント出来る絵本を目指すのよっ(*ノ▽ノ)」
作者は赤面しながら、しどろもどろと抗議をしています。
もう、良い事を言ってるのだから、もう少し、堂々と発言すればよろしいのに。
愛しさが込み上げて切なくなります。
「重水素の少女…、それなら、この飾りボタンは軽水素にして、髪飾りを重水素にしてはどうです?
水素の割合が表現できますよ。」
伯爵は話ながら少女をそう設定した。
作者は、自分の世界を勝手に変えられて少し不機嫌そうだが、黙っていた。
「ああ、帽子に刺繍が抜けてますよ『MS-DNA』これがなくては。
ミトコンドリアDNA…葉緑素と関連させたのでしょうか…。
貴女との話はとても楽しい。」
伯爵は嬉しそうに少女達の帽子に刺繍をする。
作者は、その様子に右手で頭をかく。
「私のプリンセス…なんで改編してるのさ?」
作者は不平に顔を歪める。
もう、そんな下品な格好で…確かに、私も伯爵は嫌いですが、だからと言って、最低の礼儀を忘れてはいけません。
「良いではないか。」
伯爵は清々しい顔で作者を見た。
「『良いではないか』って、リアルで言うんだっ。」
作者は変なところでつぼる。
「伯爵だからね。お望みなら、『愛い奴』とか、他にも沢山語ってあげますよ。」
伯爵はからかうように私の作者に語りかける。
「う…ういやつって…殿様ギャグみたい。」
作者は昭和のコメディを思い出して嬉しそうです。
ああっ、もう見ていられません。
もう、あの方は、すぐに面白い方につられて、目的を忘れるのですから。
「って、そんなのはいいのよっ!もう、帰ろうよ〜自分の持ち場にさぁ。
私も、サクッと世界を作るんだから。」
作者は、急に我にかえってカップのプリンセスを作り始めた。
プリンセスは、木を意味していた。
ハリス版との差別化の為に海底ではなく、空に大河を見つけた。
南アメリカのジャングルは川並の水を空に放出し、大地を潤している。
プリンセスを飾る水晶は水素の象徴に、持っていたカメはアメリカ大陸に化けた。
なんでも、アメリカ大陸は亀に乗ってる…伝説があるらしい。
作者は、わめき、喚きながらプリンセスを完成させ、伯爵にどや顔でこう言った。
「早くきめないと、ダイヤと剣のプリンセスがいるのっ。
この4世界が決まらないと、生命の樹が成立しないんでしょ(>_<。)
もうっ。めんどうなんだから。」
ああ…そうです。
生命の樹は、大きな樹が生えているわけではありません。
火、地、風、水の4つのエレメントの世界が平行に並んで影響しあう世界なのです。
しかし…そこまで本格的に考えなくても…
大概のオカルト小説では、省略していることが多いのです。