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ラノベ作家と予言の書  作者: ふりまじん
アストラル トリップ
36/56

緑の肌

メンズの演奏する『ラ・クンパルシーダ』に合わせてプリンセスがタンゴを踊り舞う中で、作者が不機嫌そうに伯爵を睨んでいます。

「ねえ、もう帰ってよ。」

作者、いきなり言いにくい言葉を伯爵にぶん投げました。

伯爵は不機嫌全開の作者など気にする事もなくメンズの演奏に耳を傾けています。


「もうっ、うちみたいな零細小説に居座らなくても、貴方は人気ラノベのキャラにもなってるじゃん。そっちに行ってよ…。」

作者の不平を掻き消すようにフラメンコギターがむせび泣いています。


作者は白のレースを腰に巻き、腹をくねらせるプリンセスを渋い顔で見つめていました。

その様子を楽しそうに観察していた伯爵がワンドのプリンセスの高く上がった足を眺めて言いました。


「そんな寂しい事を口にして…。これでも、私は貴女を助けているのですが…。」

伯爵はプリンセスの華やかな足さばきに溜め息をついた。

「いいよ…貴方が登場すると、話が先に進まないもん。

私は剛とメフィストの方が心配なんだよ…。早く設定済ませて、剛を探しに行かないと(T-T)」

最後の方は悲鳴に近い切ない声で作者が言った。

「日本では、『急がばまわれ』と言う諺がありますよ。」

「英語では『Time is money』って諺があるよね?」

作者が憮然と言い返す。

が、伯爵はそれを聞いてニヤリとする。

「だからです。失礼ですが、あなた1人では、この世界を持続させる事は出来ません。そして、この文章にかけた時間を金に変えることも…。」

伯爵はそう言って立ち上がり、メンズからプリンセスの手を貰うと踊りながら彼女の小麦色の足を持ち上げ、その足を愛でながら作者に語りかける。


「この小麦色の肌…なぜ、緑にしなかったのですか?」

伯爵の右の人差し指がゆっくりとプリンセスの足首からふくらはぎへと上り、プリンセスの剥き出しの脇腹を掴む。


作者が不機嫌そうに左目をつぶりながら顔を歪める。

「カップのプリンセスは、北極圏の太平洋を担当してるわ。

あの絵じゃ、太平洋っぽくないじゃない。」

作者は必要以上にセクシーな伯爵のタンゴにムッとしながら乱暴に答えた。

伯爵は、それを聞き流すようにプリンセスと激しいステップを踏む。


そして、プリンセスから激しく回転しながら離れると作者の席の横に立った。

「ふふっ。深海は闇…光の届かない世界です。

つまり、この肌が語るのは、貴女のプリンセスが陸上にいると、言うこと。」

伯爵はそこで一度、言葉を区切り、作者の耳元で囁く。「違いますか?」と。



ああっ…


私はあまりの伯爵の自由奔放さにイライラしてきました。


幼女のライオン娘と戦うわけにもいかず、

牛娘と戦うのも止められています。


なんとか、彼女たちを出し抜いて作者を助けられないものでしょうか?


「そうよ。仕方ないでしょ?オリジナルは、リアルな白鳥の冠なんて被ってさ、神呪(マントラ)だのAUMだのって、訳のわからん説明があるんだもん!


神呪とか、AUMは、ダメなのよっ(-_-;)


私は子供の絵本設定で話を作りたいから、保護者が嫌う言葉は、まさに『禁忌』なのよっ。のろいの言葉なんだわ(T-T)


全く、変えるしかないのよ。」

作者は叫び、伯爵は嬉しそうにそれを見ていました。

ロリババァの練習なんて、させなければ…


私は、どう見ても、幼女を変態親父が(かどわ)かす様にしか見えない作者と伯爵の絵図(えづら)にイライラしてきました。


大体、我々の作品にロリババァなんて属性、本当に必要だったのでしょうか?

「保護者…いつになったら、そこまで届くのでしょうね?ふふっ。」

伯爵の含み笑いが作者を不機嫌にします。

「楽しそうね…はぁ…それを抜かしても、あれ、王冠に見えないわよ。白鳥が羽を広げて…くえっ…って。」

作者は両手を使って白鳥の真似をします。

不覚にも…私も、昔を思い出してほっこりしました。

「Qee?何の呪文かな?」

「(//-//)…忘れてよ。」

作者はポツリと赤面しながら呟き、そして、開き直って喚く。


「ああっ、仕方ないでしょ?昭和世代はリアルな白鳥を頭に乗せたり、ベルトにつけたりすると、つい、ギャグモードになるのよっ。

だ、大体、これ、どっから見ても『パーチバル』じゃないのっ(>_<。)

わ、私だって知ってるアーサー王の聖杯伝説まんまじゃん。


もう、ノストラダムスから、テンプル騎士団が登場、『ダ・ヴィンチコード』を読み返し、七転八倒した私はっ、色々と調べたのよっ。

緑の肌って、森の所属を表すのよね?

『青髭』関連で見つけたわ。

なんでこれで、神呪とか出てくるんだかわからないわっ。

マントラって…インドじゃん。太平洋関係ないしっ。」

作者の叫びに伯爵はプリンセスからマテ茶のカップをもらって渡す。


やはり、私の作者を黙らせるのはお茶が最強と言う見解は同じのようです。


伯爵にお茶とチョコをもらい、作者は不満そうにはしていましたが、落ち着きました。

伯爵は作者の横に椅子を持ってきて座った。


「それは…コロンブス的発想でしょう。」

伯爵はチョコレートを作者に差し出しながら優しげに答えた。


「コロンブス!?あ、ああ、インデアン…って事。」

作者は呆れながら納得した。


コロンブスは、インドの航路を探すために西の航路を探し、アメリカ大陸にたどりつくのです。


歴史的に大陸の発見者になったコロンブスですが、インドへたどり着くと言う野望にとらわれ、そこをインドと誤解したのです。

その為、原住民はインデアン…インド人と呼ばれたのです。



同時代、その大陸を『新大陸』と発表したアメリゴに功績をとられ、その大陸は彼の名前からアメリカと命名されたのでした。


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