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ラノベ作家と予言の書  作者: ふりまじん
アストラル トリップ
35/56

エイワイス

「それで、この記号の意味は何ですか?」

伯爵はスワンのカップの文字を示す。


MTーDNA


作者は渋い顔で伯爵を見る。

「忘れてなかったの?」

「ええ。とても興味深いですから。」

伯爵は身を乗り出すように作者に迫る。

作者は嫌な顔で伯爵を見ながら疑い深そうに質問する。

「ねえ、本当は分かるんでしょ?からかってない?」

作者の苛立(いらだ)ちを味わうように伯爵はコーヒーを飲む。

「推理は…出来ますが、是非、貴女の口から聞かせてもらいたいのです。」

伯爵は我儘(わがまま)を言う少年のように私の作者に懇願し、カップのプリンセスを自らの横に召喚する。

それから、作者の前に1枚のカードを置いた。

トートのカードの『ワンドのプリンセス』である。

作者はそれを見て渋い顔をする。

伯爵はその様子を満足そうに確認し、話始めた。


「全く、このカードから、このプリンセスを作り出すのですからね。興味深い。」

「仕方ないでしょっ、ハリスの著作権は切れてないんだもん。盗作(ぱくり)って言われないようにしないといけないわ。」

作者は顔を真っ赤にして叫ぶ。

その様子を楽しむように伯爵は目をほそめ、そして、気持ちを切り替えるような明るい声で提案した。


「では…私が少し解説をしよう。そうすれば、言葉も出てくるだろう。まずは、このプリンセスの小麦色の肌について。」

伯爵は作者のプリンセスを見る。

それから、思い出したように作者を見、軽く左目を絞りながら、からかうようにこう言った。

「まずは、訂正しておくが、ワンドのプリンセスは、クロウリーのオリジナルではない。」

伯爵はそこで言葉を切り、シリアスな顔になる。

「奴に…オリジナルなど…無いのだよ。」


伯爵の言葉は孤独で、冷たい感じがした。

と、同時に私の心をざわつかせる。


確かに、有名作家に取り上げられる人気キャラと言うのは、女性の心を掴むのに()けているようです。

思わせ振りに『俺、寂しがり屋なんだぜ。』感を醸し、母性本能をくすぐるのです。

そして、そんな男に捕まったら、骨までしゃぶられ、棄てられる…嫌な未来しか見えません。


私の不安をよそに、作者は眉間にシワを寄せて、不服そうに頬を膨らませた。

「えー。それは言い過ぎだよ。」

作者は口を尖らせて、疑い深そうに伯爵を見てこう聞いた。

「じゃあ、エイワイスも、伯爵がクロウリーに吹き込んだの?」


その質問に伯爵は驚いた顔をして、なにか、抗議をしたそうな顔をした。

それから、何かを思い出したように目を閉じて、そこから豪快に笑いだした。

「確かに、アレは私とは関係なかったな。」


伯爵は一時、心行くまで笑い、それから、真顔に戻って作者にこう指摘した。


「私にはどうでも良い事だが、一応、アレの名前はエイワス…もしくは、アイワスだ。エイワイスでは召喚できぬ。」

伯爵の言葉に、作者は負け惜しみを返した。

「いや…召喚なんてしませんからっ。」


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