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ラノベ作家と予言の書  作者: ふりまじん
アストラル トリップ
32/56

カップのプリンセス

「私はストーリーテラー。例え神といえども、話を混乱させる存在を静観は出来ません。」

私の言葉に牛娘は魅惑的な三拍眼で微笑みかける。

「素敵。時めく名台詞(めいぜりふ)ですわ。

思わず…滅茶苦茶にして差し上げたくなるほどに。」

牛娘は、低くセクシーな声で囁くように話ながらホルスタイン柄の革製のキャミソールスーツのジッパーをゆっくりと胸元まで引き下げる。


これが牛娘のファイテングポーズなのでしょう。


「時影駄目だよっ…グランストラエ伯爵には叶わなよぅ。

この人…人気ラノベのキャラにもなってるのよ…

私が5年かけてやっと集めた1000アクセスをものの数分で稼いじゃうんだよ(T-T)

戦うなんて…やめてよ。恥ずかしいじゃない(//ー//)」


作者は赤面しながら叫んでいます。

12才の姿で、そんな風に不安な顔をさせると…作者の思春期を思い出して、つい、頑張ってみたくなります。


「確かに、ここはいつもの…私達だけの世界ではありません。

仮であれ、アストラル界に繋がっていますから、ユングの主張する…集団的無意識の影響を受けます。

その意味では、沢山の人々に好感を持たれるグランストラエ伯爵は強敵です。

が、ここは我々の物語(ダンジョン)

好き勝手を許すわけにはゆきません。」

私は構えた。


なんとなく…フィジカルなバトルになる予感がした。

が、その予感は、文字通り『霧散』した。


伯爵の放った霧が立ちこめ、純金の宝飾品で飾り立てたパレオビキニのラテン系の娘が現れたからです。

「ええっ…Σ(´□`;)私のプリンセス…先に出しちゃって!」

作者の悲鳴に、現れたのが我々の世界の『カップのプリンセス』だと理解した。

頭に羽を閉じたスワンのカップ入りのお盆をのせ、コーヒーカップを思わせる帽子を被り、黒レースの胸空きシャツにパンタロンのメンズの演奏にあわせて腰をくねらせていた。



「どうです?素敵でしょ?メンズは私のオリジナルです。」

伯爵は嬉しそうに作者に微笑みかけ、作者の不機嫌を誘っていた。

「もうっ、セクシーイケメンはいらないんだからっ。

ひどいわっ。私のプリンセスぅ〜」

作者は悲鳴のように喚きましたが、プリンセスがその優しげな長い手でカップを渡すと黙ってそれを受け取った。


「これ飲むと、みんな仲良し(^-^)」

プリンセスの言葉に、作者はカップを見た。

「これ…マテ茶ね。」

作者は軽く一口含んで言う。


マテ茶は、中南米で良く飲まれるお茶で、ミネラルやカルシウムを含みます。

「マテ茶を飲むと皆、仲良くなります。」

カップのプリンセスは、小麦色の頬に優しさの光を滲ませて笑いました。

途端に、場の空気が和み、メンズの1人が叙情的にバイオリンをかき鳴らす頃には私の戦闘意識も吹っ飛びました。


演奏されるは『ラ・クンパルシーダ』

ヘラルド・ロドリゲスの産み出したタンゴの名曲です。


この曲が1917年リリースされてから100年後、我々は、Web小説の世界へとやって来たのでした。


「知ってますか?現地では、マテ茶は回し飲みが友情の証なのだそうですよ。」

伯爵はそう言って、飲みかけの作者のカップを奪って飲む。


「ここ…中南米じゃないし、私から食べ物奪うのは、万死に値するのよっ!!」

作者が怒りを溜め込み始めるのを感じると、伯爵はポケットからチョコを取り出して作者の口に入れた。


「では、アステカの神の食べ物でお返ししますよ。」

伯爵は笑う。


チョコレートの原料、カカオは古代メキシコ、アステカ帝国では神の食べ物とされていました。


もっとも…その頃のカカオは…甘くはなかったようですが。


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