色欲の悪魔
「聖少女…( -_-)なんか、頭の中でヒデキが歌いだしてるよ。」
作者はぼやく。
「知りませんよ。でも、この設定が無難でしょう。」
私の言葉に作者は不満そうに私を流し見る。
「で、何故、アスモデウスなの?メフィストがいるのに…。」
「聖少女の設定なら、アスモデウスの方が適任でしょ?
メフィストは、ファウストの望みの為に、女性の人生を玩具に出来る悪魔です。」
「ゲーテの妄想じゃない。( -_-)」
「確かに、でも、気に入りません。アスモデウスは、確かに、男を殺しましたが、好きになった女性には手を出していませんし、色欲の悪魔。
性欲と言うものは、ありすぎても困りますが、全く無くなるのも、呪いのようなものですから、話の筋道もたてやすいでしょう。」
「でも…メフィストで話を積んできたのよ。それこそ、辻褄があわなくなるわ。」
作者は眉間を寄せて険しい顔をする。
「心配いりません。メフィストは使い魔です。対して、アスモデウスはゲーティアの72悪魔の1柱。7つの大罪の悪魔としても有名です。メフィスト・フェレスが何かを依頼されたとしても不自然ではありません。」
私はそっけなく言った。
始めの設定は、物語の後々まで影響します。
ここは、しっかりと決めておかなくては、いけないのです。
「ま、いいわ。じゃあ、それで。
いつまでも、不安定な状態に出来ないから、
生命の樹をつくるわ。」
作者は、少し不機嫌そうに言って、息を大きく吐いた。
それから、少女の姿で辿々(たどたど)しく、自分の身長と同じ位の長い杖を取り出して地面に差した。
「時影…確かに、私、いい加減とは言ったわよ。
でも、それは世紀末のオカルト掲示板にいた魔法使級から、と、言う意味で、生命樹を全く知らないわけではないわ。
まずは10の球体を。
王冠を頂点に10の球体を配置。
一番下を物質世界…マルクトに。
マルクトのタロットの象徴…4つの10を召喚するわ。」
作者が言うと、炎と共に火の精霊が10の杖を供に現れる。
次に、水の精霊が10の聖杯に水を満たして現れた。
土の精霊は、10のダイヤモンドのサークルの真ん中から登場し、
最後に、風の精霊がどこからともなく現れて、10の風の剣を地に差した。
「確か、ドーンの象徴は4つの10のカード。
10は、エレメントが連なり、物質世界を構成する最終型であり、精神世界への入り口だわ。
2012年、物質に質量を与えるヒッグス粒子が発見されたわ。
そう、19世紀のインチキくさいドーンの理論は、全く間違いとも言えないのよっ(>_<)
物質は、ヒッグス粒子で質量を与えられた…形を変えた光なのよ(T-T)
私たちは、この10のエレメントを剥がしながら、光に…ケテルへと旅をするんだわっ(T-T)。」
作者は壮大に叫んではいますが、赤面しながら泣いていました。
学芸会のタヌキの踊りをさせられたときすら…ここまで、あがりはしなかったのに…
私は、必死の作者を邪魔しないように…父兄の面持ちで観察していました。
「はぁっ(T-T)。
まあ、そんなところよ。私は、原子のヒーローの上をいかなきゃいけないんだもの…
量子の世界で駆け抜けるしかないんだわ(///∇///)」
作者は、一瞬、素に戻ってふらふらしたが、次には持ち直し、話を続けた。
「故に、この世界は4つの力で構成されるわ。
まずはサラマンダーの強い力!」
作者が叫ぶと、火の精霊が激しく炎の柱を作る。
「そして、弱い力…」
作者の言葉に、水の精霊が柔らかい霧のベールを作り出す。
「そして、重力!!」
勿論、これは、地の精霊の力です。
「最後に、電磁気力!まったくもうっ…うまく、4つの力で纏まったわ(>_<。)
なろう作家の私には、これが限界だけど…
恥ずかしいけど、突っ走るわっ!
量子物理学なんて、知らんけど、つかってやるんだわぁぁ…っ」
作者が叫ぶと、風の精霊が美しい小さな雷を作り出す。
背伸びを始める作者に不安を感じながら…
私は、それでも、この、壮大な世界に見とれていた。