なろうしゅ
「はぁ…そうね…思い出せば、私も『赤毛のアン』のマリラのぶどう酒…どうやって作るか調べたわ…。」
作者は楽しそうに苦笑した。
「そうでしたね。」
私は作者の子供の頃を思い出す。
そう言えば…好奇心旺盛で、色々調べていました。
身近な毒草や、魔術や科学…
「そうね…確かに、私も軽率だったわ…と、言うか、あやつは児童小説の主人公なんて、なれるんかな(T-T)」
作者は剛さんを見てため息をつく。
「どうでしょうか…。彼をモデルに色々な物語を書いていた時は悪くはないと思いましたよ。」
「ふふっ…そうね、魔神のフェネジとか、熊のゴロウ…間抜けで可愛い主人公達だったわ。
異世界ものの主人公は『なろう主』と呼ばれるんだけれど、なんか…あの世界を想定すると、剛が荒れるんだよね…。」
作者は未練がましく空のジョッキを眺める剛さんを見つめる。
私は返事に困りました。
Webから発信された、最近流行りのファンタジーを『なろう系ファンタジー』と読者は呼んでいるようです。
これは、『小説家になろう』と言う小説サイトから人気が出た作品の特徴なのでそう呼ばれているのです。
そして、そのファンタジーの主人公をなろう系主人公…『なろうしゅ』と、ネットでは呼ばれているようです。
こちらも、あんまりよい意味では使われていないようです。
神様から、強大な力を受け、好き放題に生きる彼らは、ある人には魅力的で、ある人には、とても不快に感じるのです。
剛さんは自由人で…どことなく、子供のような所がありますから、大きな甘えが叶うとなると、どうしても、良くない部分が目立ってしまいます。
「そうですね…。大人向けなら…少し、面白くなりそうですが。」
そう、Web小説では、オジサンが冒険する物語も人気なのです。
「そうかなぁ…(-_-;)なろうしゅで、お酒を思い出すようなオッサンだよ…。
お願いを聞かれてビール券とか言うんだよ(>_<)
もうっ、」
と、作者は怒り、それから少し間を置いて話を続けた。
「昔、たまにビール券貰うことがあって、それを使って酒屋でお酒やつまみを買って海とか行ったんだ。
剛も…そんな事思い出したりしたのかな?」
作者はそう言って鼻をすすった。
「そうかも知れませんね。」
私は楽しそうな作者を見て、そうであればいいな。と、思った。