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希和(きわ) 剛( つよし)

美しい冬の青空の下、奈美は軽快に喫茶店へと歩いて行く。


風は冷たいが、歩いて暖かくなる体には、気持ち良く感じた。


舗装された道路を暫く歩き、信号を曲がると、そこからは一面の雪の平原が広がっている。

ここは春になれば、一面の田んぼに早変わりする。

一キロ先に見える白い小山の横に地元の稲荷神社の赤い鳥居が見え、その横の集落へと繋がる小さな道を曲がるとすぐ、西洋風の白い建物が見えてくる。


「カフェ・ひなげし」

可愛らしい洋風のそのカフェは、設計士の旦那様が、名作「赤毛のアン」をこよなく愛する奥さまのために作ったお店だ。


木製の小さなステップを上り、奈美は長靴の雪をはらうと、可愛らしい呼び鈴のついた、木製のドアを開けた。


お店に入ると、そこは別世界だ。

カウンターを含めて20畳程度の店内は、西洋風のクルミ材の食器棚があり、どことなく懐かしい雰囲気の可愛らしいお皿が飾られている。


「奈美ちゃんこっち。」

奥には暖炉があり、本当に木材の燃料を使って部屋を暖めていて、その近くの四角いテーブルには奈美の年上の友人、晴香(はるか)が手を振りながら座っている。


「晴香さん。」

奈美は晴香を見つけると、小走りに晴香の元へと向かう。

晴香は笑顔で迎え入れ、奈美は晴香の向かいの席になれた感じで座った。


奈美は、カフェ・ひなげしのオリジナルブレンドのコーヒーを頼み、一週間ぶりに会う晴香と話す準備を整えた。

「いい職場、無かったのね。」

晴香はやはり、と、言うように苦笑した。

「うん。やっぱ、冬場はなかなか無いよね。年末にかけて、仕事は無いわけでもないけど…遠いし。」

奈美は軽く不満をいう。


奈美の住む町から、求人の良く出る工業地帯は車で1時間くらい。


冬場は、道路の凍結や降雪などのアクシデントも考えなければいけないから、仕事選びも大変だ。


「で、アイツはまだなの?」

奈美は、もう一人のメンバーが居ない事を晴香に聞いた。


奈美と晴香とこれから登場する剛は、フリマの仲間だ。


元は職安の職業訓練で知り合った。

そこで、フリーマーケットに出展するのが趣味だった晴香に便乗して、家の不用品でこずかい稼ぎをしたのがキッカケの腐れ縁の三人だ。


「うん。メールしたけど返信ないし、どうしたのかしら?」

晴香は気だるげにテーブルに置いた自分のスマホに視線を流した。

「別に、意味は無いんじゃないかな(-_-)。前は海外ドラマの女優から目が離せなくて1時間遅れたじゃん。」

と、言いながらも、速攻で剛にメールを奈美は送った。

「……。あったわね、そんな事。」

晴香も遠い目でその時を思い出す。


希和(きわ) (つよし)


時間にルーズな40代。独身である。


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