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ラノベ作家と予言の書  作者: ふりまじん
メタバース
19/56

異界

柔らかな草の上にシートをしき、私と作者は遥か先まで広がる草原を眺めていました。


本日のお茶はハーブティをチョイス。

気持ちを落ち着けてくれるメリッサを用意しました。


「美味しいわ。」

作者はお茶を飲んで気持ちを整える。

「ありがとうございます。」

話の流れを折らないよう、短く返事を返した。

「はぁ…。私、メイドさんの衣装を着ていて思い出したわ。

昔、メイド喫茶にいこうとしたことを!」

作者は禍々しい話のように言う。

「そんな事…ありましたか…」

「うん。あったのよ。

東京に行く用事が出来てね、私、友人にメイド喫茶に連れていってくれって頼んだのよ。」

作者は渋い笑いで羞恥心を噛み殺す。


「つれていってくれたわ…秋葉原に…で、なんか当時、有名だった電機店のビルに連れてかれたの…


エスカレーターを上る度、白物家電から、美顔機…本屋、そして、何やらいかがわしい黒いフロワーを越えて、紳士服っぽいフロアー…いや、スポーツ店かな(´-`)みたいなところで、1度もエスカレーターから離れたの。

友人は言ったわ…

『この上がメイド喫茶だよ』って。

見上げるとね、上のフロアーの廊下に人が並んでいたわ…

鰯のような地味な群れの中で、メイドさんが熱帯魚のようにヒラヒラとスカートを揺らし、叫んでいたわ。

『旦那様、ここからは一時間待ちになりますっ』って。」

作者は、怪奇体験でも話すように目をほそめ、何やら、信じられない記憶を説明するように言葉を選んだ。

「で、メイド喫茶はどうでしたか?」

私は、何となく、あの夢の遊園地を思い出しながら、作者の話を待った。


作者は、耐えられなくなったようにインスタントコーヒーを自作して飲むと、眉間にシワを寄せてこう言った。


「いかなかったわ…足がすくんだのよ。


良い年をして、男ばかりが並んでいる…あんなところで、一時間待ったり、

待ち時間に、話し相手をしてくれる…メイドさんに『お嬢様』って言われるかと思ったら…耐えられなかったのよっ(>_<。)


なんで、娘のような年の女の子に、BBAの私がっ、『お嬢様』なんて言われなきゃいけないのよぅ…

辺りは、女の子の審美眼に五月蝿そうな男が囲むんだよぅ…

地獄だわ(T-T)」


作者は当時を思い出して頭を抱える。


「そんなところに…行きたがらなきゃ良いでしょうに。」

私がため息をつくと、

「だって、あのときは人気だったし、なんか、お土産買いたかったんだもん。

餅とかケーキとか、クッキーとか、なんか、売ってると思ったのよ。」

作者は叫び、それから、深くため息をついて話を続けた。

「まあ、それはともかく、思えば、あの、上へ向かうエレベーターに異界との境界線を見たんだわ。

あそこは…私が近づく場所ではないと。


そして、この感覚こそが、なろう系ファンタジーの世界の…異世界との境界線じゃないか…と。」

作者はそう言ってコーヒーをすすった。


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