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ラノベ作家と予言の書  作者: ふりまじん
メタバース
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ネクロマンサー

「何故…メフィスト・フェレスがここに?」

私は、作者の前で今風の絵師がデザインしたような布地の少ない衣装を纏って登場した悪魔を睨む。


メフィストは、そんな私にマウントをとるように優雅に笑いかけてきます。


「お久しぶりです…時影さん。

でも、その質問は、私の台詞ですよ。」

メフィストは作者の横で嬉しそうにそう言いました。

「私は、この世界の構築者(ストーリー・テラー)

どの物語にも干渉可能です。」

私は冷静にそう言って作者を見た。

そう、悪魔のざれ言より、作者の気持ちが気になります。


まさか…彼も超越(メタ)側の人間に配置しては居ないのでしょうね?


「仕方ないよ…だって、これ、ホラージャンルだもん。

初めてのホラー連載作品なんだから、ホラージャンルで終わらせたいの(>_<。)」

作者が悲しそうにしていると、私も胸が痛みます。

しかし、隣で舌を出して踊るアイツを容認できるほどオトナにもなれそうもありません。


「ホラーなら、私たちでも十分、話を繋いで行けますでしょう?」

責めるように作者を見た。

作者は疲れた顔でうなだれて…代わりにメフィストがそれに答える。


「やれやれ…全く分かってないんですね?

私、メフィストを日本に紹介して下さった、森鴎外先生没後100周年の今年。


これから作る物語は、『ファウスト』をベースに作られるのですよ。」



ファウスト…


その言葉が胸をついた。

そう、去年の春、私と作者はルターの物語を騎士ゲオルグとファウストの物語として改編しようと考えていました。


桜が咲き…剛さんと楽しそうに話す作者が思い浮かび、言葉が出てきません。


「『ファウスト』と、言うか、追放されたルターの物語ね…

一応、エタっても話は2人で考えてたじゃない?

とりあえず、そのベースは踏んで行こうと想うの。

ついでに、『パラサイト』の長編、SFミステリー化で、筋が合わなくなった奈美達はここで話を切ることにするわ。」

作者は小さなため息をついた。


「まあ…仕方ありませんね。」

私は、作者が少しずつやる気を取り戻している予感にメフィストには目をつぶる事にしました。


私の様子に安心したように作者は魔法の杖を取り出しました。

「もう、随分とこんな事からは離れていたし、面倒くさいけど仕方ないわ。」

作者はボヤきながら魔法円を描き、背景を墓場にメフィストが変えて行く。


「ネクロマンシーで検索するとね、ほぼゲームキャラが出てくるんだよ(T-T)

私…良い歳して何してるんだろうね…」


「良いじゃないですかっ!ラノベの頂点(テッペン)目指しましょう!!」

メフィストはノリノリで、その姿に腹が立ちます。


作者はうなだれたまま魔法円を描きながらこう言った。


「そんなもん…目指さないよ。

もうね、私、手に出てくる魔法円も良く分からないし、

このクラシカルな召喚術も…少女時代に読んだ月刊ミステリーまがじん『みぃ・ムー』以来だよ。


20世紀と一緒に置いてきた無駄知識を…

友人の霊の召喚に使うなんて……

私、もう、おかしいのかもしれないわ。」

作者はかすれた声で控えめに言いながら、それでも、術式はキッチリと行い、メフィストに確認をさせる。

「もう、そんなに神経質にならなくても…

車も魔術もオートマティック☆な時代ですよ。

なんなら…私が、ちょいちょいと…」

調子にのって話すメフィストの手を、作者が掴む。

「それは止めて!」

作者は叫び、それから、一呼吸おいて、続けた。

「ここはホラージャンルよ。そして、私は、まだ、この作品を諦めては居ないわ。

あらすじだけでも、もとの話を完結させて…

そうして、評価をもらい、公募に応募し、金儲けするの…。」

涙目の作者に…メフィストも悲しそうに微笑む。


「わかりました。『みぃ・ムー』の召喚方法なら…クロウリーの影響が強いでしょうからね…ああ、メイザースと、いった方が良いですかね?では、私もコス変しましょう。」

メフィストは、嬉しそうに19世紀の紳士の服装になる。

作者は黙々と儀式を揃え、自信がないからと、召喚呪文…(英語)を私に唱えさせた。


しばらくすると、どんよりとした厚い雲が流れ、虹を纏った月が姿を現す。


作者はその美しい月を見つめ、そうして、ゆっくりと自分の意識の中から懐かしい友人の姿を円の中に作り出して行く。


死霊使(ネクロマンシー)

基本、それは死体に魂を定着させる術である。


映画で有名になったゾンビもまた、ネクロマンシーだと言えば分かりやすいだろうか。


物体のない霊を呼ぶのは口寄せになる。


作者は新鮮な死体の代わりに電子ゲームのアバターを依り代に使った。


多分、メフィストの入れ知恵なのでしょうが、

ブルーライトの光のなかでふわりと浮いている剛さんのそれは、とてもリアルで…

作者の涙を誘っていた。


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