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第十四話 大人の話し合い①

「子供達もいなくなりましたし、ここからは大人の話し合いをしましょうか」

私は不敵な笑みを浮かべ(てたと思う)、周りの大人達に相対した。

「でもよぉ、嬢ちゃん。俺の娘ならまだしも、嬢ちゃんが大人ってのは無理があるんじゃねーか?」

そう言ったのは、彩花先輩のお父さんだ。表情を見た限り、どうやら本気で心配してくれているらしい。

「ご心配には及びません。私はもう15になりましたし、数えで言えば17です。とっくに元服も済ませてありますから、これでも──まぁ、一人前とまでは言いませんが──一応社会の一員ですから」

「……まぁ、嬢ちゃんがそうだってんなら、そういう事にしてやろう」

「ありがとうございます」

彩花先輩のお父さんが、観念して折れてくれた。

「ち……ちょっと待て、なんで元服なんて単語が出てくる? それは明治以前の話だろう?」

翔子ちゃんのお父さんが、困惑した表情で尋ねてくる。

「今から説明しますから、落ち着いてください」

私は翔子ちゃんのお父さんを宥める。……なんかもう面倒臭くなってきたわぁ。なんでこう、いちいち噛み付いてくるのよ……。思わず溜め息が出そうになるのを、咳払いで誤魔化す。

 そして、私は改めて居直った。

「では改めまして、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。私は「大日本帝国近衛騎士団団長」及び「国立魔法学研究所所長」を務め申し上げております、唐松 光与と申します。宜しく御願い致します」

私は頭を下げながら、どこからともなく取り出した(ように見えるだけで、実は『転移魔術』を使って取り寄せた)2種類の名刺を、卓上に人数分並べた。このご時世、名刺なんて時代遅れなんて言われかねないけど、意外と名刺交換の文化って続いてるのよね。

「嬢ちゃん、器用だなぁ。近衛兵の(かしら)ってのは、伊達じゃ無さそうだな」

彩花先輩のお父さんが、感心した様子で私に話し掛ける。

「あら、バレました?」

「俺だって『魔術師』の端くれさ。それ位見切らねぇと話にならんわ。あまり舐めてると痛い目見るぜ、嬢ちゃん」

努めてにこやかに話し掛けてくるのが分かるが、目の奥が笑ってない。どうやら、町道場の師範だからといって侮ってはいけないらしい。……あぁ、また意識がそれちゃった。話を進めないと。

「それではまず、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

名前を聞いておかないと、後々面倒な事になる。

「俺は黒松 大輔。こっちは家内の彩子(あやこ)だ」

「娘と息子がお世話になりまして……」

「いえいえ、その節はどうも」

黒松夫妻とは彩花先輩を通して、そして弟同士(大輝と大河)を通しても面識がある。ただ、姉同士が仲が良いのに、弟同士の仲が険悪なのが、私達の距離感を微妙にさせている。……まぁ、当の本人達はこっちの事なんて気にしてないっぽいだけどね! あぁ、また話がそれたわ。次行きましょ。

「はじめまして……ですよね? 僕は玲子の父の白松 (まこと)です。こっちは妻の真由美です」

「はじめまして、娘がお世話になっております」

「はじめまして、こちらも弟がお世話になっております」

私は、白松夫妻と挨拶を交わした。噂に寄ると、どうやら玲子ちゃんと大輝が良い仲らしい。大輝の恋路を邪魔しないように、白松夫妻にはいい顔しておかないと……。あぁ、また意識が。次行きましょう。

「久しぶりやなぁ、姉ちゃん。ウチは五葉松 京香ちゅうんや。こっちは旦那の圭史(けいし)。よろしゅうな」

「どうもー」

「えぇ、その節はどうも。その後はお変わりなく?」

「ん。おかげさんで元気でいさせてもろてます。アンタらも大変だったやろ?」

「いえいえ、そちら程ではありませんでしたよ」

大輝と省吾君とは比較的仲が良い。というのも、大河君が起こしたとある事件で、省吾君が被害者となり、その時に大輝は省吾君を助けたのだ。そりゃ、人間関係が拗れるのも無理はない。まぁ、本人達はお互いケジメをつけた様だし、こっちも口出しするつもりもない。……さて、次で最後だ。

「俺は名前は赤松 智也だ」

「妻の良恵(よしえ)です。どうぞよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

お互いに挨拶を交わす。翔子ちゃんのお父さん──智也さんが、胸元から名刺入れを取り出し、私に名刺を渡した。

(……ちょっと待って、この人HITACHIの上役なの!?)

私は驚きのあまり、目を見開いてしまった。その様子を見ていた智也さんは、とても嬉しそうにドヤ顔を浮かべていらっしゃった。学生相手に大人気ないなぁ……。まぁいいや。話を進めよう。

「それでは、こちらの誓約書をご覧下さい」

私がそう言うのと同時に、机上にA4の紙とボールペンがそれぞれの目の前に出現する。突然の登場に、皆様身体を飛び上がらせる程驚きなすった。

「へ、へぇー。オモロいなぁ、これ。これが『魔術』か」

京香さんが、驚きながらも興味を持った様子で誓約書をツンツン啄く。

「誓約書の記載内容を説明致しますね。

『壱、此度見聞シタ会話ノ内容ヲ、外部ヤ部外者ニ漏洩スル事ノ一切ヲ禁ズル。』とありますが、当然録音録画も禁止です。なので、その胸ポケットのペンに付いている隠しカメラとズボンの左ポケットに入っている録音機、それとARコンタクトの録音録画を止めてくださいね? 赤松 智也さん」

「なッ……!?」

智也さんは、驚きのあまり体が固まってしまった。

「ほら早く。話進まないから」

私は机をトントン叩いて催促する。

「……クソッ」

智也さんは悪態をつきながらも、私が言った通りの物を出してくれた。

「貴方もですよ? 圭史さん。右ポケットのスマホとARコンタクト、切ってください」

「……チッ、バレたか」

圭史さんは舌打ちをしながら、ポケットからスマホを取り出し、目を閉じてARコンタクトを止めた。私の目は誤魔化せないのよ。

「……圭史。あんた、省吾の命の恩人に何セコい事しとんねん!見損なったわ!」

「馬鹿野郎、だからだよ」

「はぁ!?」

「省吾の命の恩人が、省吾に妙な事を吹き込んでる。──疑うのが普通だろ? お前は人を疑う事を覚えようか……」

「そないな事言うても……!」

「まぁまぁ二人共、落ち着いて下さい」

曲がった事が嫌いな京香さんと、そんな事お構い無しな圭史さんとで夫婦喧嘩が勃発、私が止めに入る。

「せやかて姉ちゃん、このままじゃ自分が納得出来ひん!」

「分かりました、分かりましたから、一旦落ち着きましょう? 話が進みませんから。ね?」

「……チッ、姉ちゃんに免じて許したるわ」

京香さんが何とか落ち着いてくれた。こんなのいちいちやってたらキリなくなっちゃうなぁ…… 。早く話を進めよう。

「それでは、次です。

『弐、此ノ誓約書ニ署名スル事、汝ニ監視ノ目ガ付ク事ヲ許容シタト看做ス。』とあります。まぁ、これはそのままの意味ですので、問題ないですよね。次行きましょう」

「……いやいや、何が問題無いんですか!? 今監視って言いましたよね!?」

いち早く我に返った真由美さんが、食い気味に突っ込んできた。

「ええ、まぁ、言いましたね。それが何か?」

「『何か?』じゃありませんよ! あなた、個人情報保護法を知らないんですか!? 」

「お言葉ですが、ここにいる皆様方は生まれた時から監視されてますよ? 特に黒松さんの所は」

「まぁ、だろうなぁ……」

「聞き捨てならないんですけど!? そして何故黒松さんは納得されているのです!?」

「いやぁ……ウチは里を抜けてからも『魔術』を継承してきた特殊な家系だからなぁ……。『魔術』ってのは、表舞台に出てきちゃいけねー代物だ。殊更、ここまで科学技術が発展しちまった現代においてはな。大々的に『魔術』を公表なんてした日にゃ、そりゃもう大混乱だ。それ位あんたにも分かんだろ?」

「それは……」

真由美さんが口篭る。

「まぁ、大輔さんの所みたいに『魔術』を今まで継承している家は大分珍しいですけどね」

私は大輔さんの言葉を引き継ぐ。

「大半は里の環境が嫌で『魔術』も何もかも捨てて、里を抜け出してくるんです。あなた方の祖先も、おそらくそうだと思いますよ? 結構いるんですよね、抜け人。なので、口止めの意味も込めて、数世代にわたり監視しています。……中には、機密を漏らして処分された人もいますしね。皆さんも気をつけてくださいよ?」

「おぉ~、怖い怖い」

私が軽く脅してみると、大輔さんはおちゃらけてみせたが、他の方はゴクリと生唾を飲んでいた。何もそんなに怖がんなくても……。私は咳払いをして、雰囲気を切り替える。

「では、三つ目です。

『参、此ノ誓約ニ反シタ者ハ、『大日本帝国憲法』及ビ、其レニ依拠シタ法律ニヨッテ裁カレルモノトスル。』とあります。先程から申し上げている通り、我々『魔術師』の所属は『日本国』ではなく『大日本帝国』になります。なので、我々との契約は全て『大日本帝国憲法』──俗に言う『明治憲法』ではなく『改訂大日本帝国憲法』──と、それに依拠する法律に則って交わされます。なので、もし我々との契約に何らかの不備があった等の揉め事(トラブル)が発生した場合、日本国の法律事務所ではなく大日本帝国の法律相談窓口に連絡ください。こちらがその一覧です」

すると、数枚の紙束が各人の目の前に、音も無く出現する。まだ慣れないのか、紙束の出現に皆さん驚きを隠せない。恐る恐る紙束を手に取り、ペラペラとめくる。

「ちなみに、海都市の事務所はここですので、何かあったらいらしてください。営業時間内であればいつでも対応致します。

 誓約書の説明は以上になります」

ふぅ、何とかここまで話せた。大分時間かかっちゃったなぁ……。向こうが終わるまでにこっちも終わるといいけど。長い間話して喉が渇いたので、私は机の上の湯呑みをあおる。はぁ〜、生き返るぅ〜。……おっと、休憩も程々にしないと。

「では、誓約書の方に署名をお願いします」

私は皆さんに署名を促した。


「……ふざけるな!! こんな物、到底納得出来ん!!」


智也さんがまたもや激昂した。

「子供達を遠ざけたかと思えば、何だこのふざけた話は!? 『秘密を漏らすな』までは良い。だが、『漏らさないように監視をつける』のはどういう事だ!? 挙句の果てに『漏らしたら殺す』とまで言われたら、黙っていられる方がおかしいだろう!?」

「殺すとまでは言ってませんが……」

「ほぼ同義だろう!?

 ともかく! こんなふざけた話に付き合ってられん! 帰らせてもらう!」

智也さんは乱暴に立ち上がり、居間を出ていこうとする。置いていかれた良恵さんも「ちょっと、智也さん!」と、あとを追う。やっぱり納得いただけなかったようだ。……しょうがない。奥の手を使ってしまおう。


「貴方の娘さんに命の危機が迫っている。……と言われても、貴方はこの部屋を立ち去りますか?」


赤松夫妻の顔色が、変わった。


「……どういうつもりだ? 人の娘を人質にとって脅すとは。見損なったぞ!!」

「勘違いしないでいただきたい。貴方の娘さんを殺すのは我々ではありません。


 ──我々も未遭遇の、敵です」


赤松夫妻の顔色が、困惑の色に変わった。

「……敵?」

「ええ。それが敵国なのか、はたまた国際テロ組織なのかは、定かではありませんけどね。──ただ、命を狙われているのは確実です。私も、あなた方も」

「……それで?」

「敵に狙われる理由と、敵から身を守る術をお教えしましょう。お代は、署名の書かれた誓約書です。如何なさいます?」

智也さんは迷う素振りを見せた。良恵さんが「智也さん」と不安げな表情で急かすと、意を決した智也さんが席に戻り、ペンを取った。そして、誓約書に自身の氏名を署名した。

「……これでいいんだな?」

「はい、ありがとうございます」

私は微笑とともに、それに応じた。






どうもdragonknightです。

今回は姉 光与の視点からお送りしました。

次回は未定です()。

(*´∇`)ノ ではでは~

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