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第九話 『魔法』とは

「んじゃ、これから『魔術』の解説を始めまーす」

俺はその辺から白板(ホワイトボード)を引っ張り出す。

「さっきの姉さんの話は理解出来なくても良いけど、これから話す事はきちんと理解してくれないと命にか関わりますからねー。分からないことがあればすぐに質問して下さい」

白板に図をサクサク書き込む。

「…ちょっといいか?」

黒松くんが手を挙げる。

「ん?どうしたの?」

俺はそれを視界の端に捉えつつも、図を描く手を止めない。

「…何でホワイトボード?なんだ?」

俺の手が止まった。

「…と言うと?」

俺は振り返って問いかける。

「いや、わざわざ書かなくても電子黒板なりモニターなりに映せばいいだろ?なんでそんな回りくどい事すんのだろうなぁ、って思ったんだが」

「…………………その発想はなかったわ」

「なんでだよ!? 今どき小学校ですらホワイトボードは使わねわーぞ!」

黒松くんは心底驚いた様だ。なにもそこまで驚かなくても…

「まぁ、確かにデータ化すると便利なんだけど、それだとどうしても『魔術』との相性が悪い部分が出てくるんだよね。例えば…」

俺は再びペンを手に取り、白板の図を完成させる。そこには円の中に複雑な模様が描かれた図があった。

「これは『魔法陣(まほうじん)』。場合によっては『魔方陣』と表記する事もある。これは『魔術』の発現を助ける『魔法』の一種、『魔法陣魔法』を用いる際に必要な物なんだ」

「…そもそも『魔法』と『魔術』って何が違うんですの?」

赤松さんが眉をひそめる。

「赤松さんの疑問も最もだ。けど、この二つには明確な違いがあるんだ」

俺はさらに図を描き足す。

「教科書に書いてあるような感じで説明すると、『魔術』の定義は『魔力を消費する事で現実世界に何かしらの影響を与える事象』、『魔法』 の定義は『魔術を行使する時の魔力の消費の仕方』という感じに説明出来るんだけど…」

「…いまいち要領が得られませんわね」

「じゃあわかりやすく算数で例えてみようか。

 例えば、どんな方法でもいいから10を求める問題を解くとしよう。赤松さん、赤松さんだったらどんな方法で10を求める?」

(わたくし)でしたら…手っ取り早く2×5=10ですわね」

「白松さんだったらどうする?」

「わ、私?私だったら…うーん…無難に1を10回足す、かな」

「五葉松、他に方法は?」

「ぼ、僕ですか!?僕だったら…9+1=10 、ですかね」

「黒松くん、他に方法は?」

「俺か?俺だったら…11-1=10だな」

「…黒松くんは天の邪鬼なのですか?子供ですね」

赤松さんがあきれた口調で言う。これに対し、黒松君は、うるせぇ、と反論する。

「それに、さっきどんな方法でもいいって言ってたろ?」

黒松君が、確認を取るようにこちらに視線を向けてくる。

「…まぁそうだね」

俺が肯定すると、黒松君はここぞこばかりにどや顔をしてくる。…どうやら赤松さんの指摘は間違っていないらしい。

「…話を戻すよ。

今10を求めるのに色々な方法を試したよね?実は、これと同じことが『魔術』にも言えるんだ」

 目の前には、「あぁ」と言う納得顔が二つと、未だに首を捻っている顔が二つと、「もう知ってるよ」と言わんばかりの得意顔が三つと、……なぜか驚嘆している姉さんがいた。

「つまり、10を求めるために使った色々な方法を『魔法』、それを使った結果が『魔術』という訳なんだ」

今度は全員納得してもらえたようだ。

「よし。じゃあ話を続けよう。

さっき、10を求めるのにたくさんの方法があったように、『魔法』も『魔術』一つに対して数十種類ある事もざらじゃない。その中でも、これは覚えておくべきっていう『魔法』を紹介しよう」

俺は再度白板を指し示す。

「ひとつ目、『魔法陣魔法』。さっきもちらっと言ったね。これは最も一般的な『魔法』として広く普及しているんだ。本当は『魔法陣魔法』にも幾つか種類があるんだけど、細すぎるからここでは割愛するよ。で、『魔法』には、必ず発動条件が存在するんだ。『魔法陣魔法』の発動条件は『現実世界に描かれた魔法陣に魔力が供給される事』。魔法陣は何で描いても良いし、現実世界であればどこに描いてもいい。魔法陣の条件を満たしていて、それに魔力を流せれば『魔法陣魔法』は必ず発動するんだ。でも、『魔法陣魔法』の効力は現実世界にしか影響を及ぼさない。仮想現実世界(VRワールド)や『魔術』の影響によって創られた魔術世界の中で『魔法陣魔法』を発動使用としても、そもそも『魔法』が起動しないかその世界の中でしか影響を及ぼさないかになる。つまり、現実世界では何も起こらないって訳なんだ。さっき『魔術』とデータ化の相性が悪いって言ったのは、電子黒板の画面にマジックペンで直接書き込むのは良いけれど、電子黒板の中にデータで出力しても何も成さない、物理的に『魔法陣』を描かないと発動しないという欠点が『魔法陣魔法』にあるからなんだ。

『魔法陣魔法』の説明はこの位かな。何か、わからない所とかある?」

『魔法陣魔法』についての説明を終えたので、俺は皆に訊いた。

「うーん、特にはないかな…」

白松さんの言葉に皆頷く。

「じゃあ次行こう」

俺は白板の『魔法陣』を白板消しで消す。

「『魔法陣魔法』と同じ位重要なのが、ふたつ目の『詠唱魔法』。『魔法陣魔法』程ではないけれども、こちらも広く普及している『魔法』なんだ。『詠唱魔法』にも幾つか種類がある けど、ここでは割愛するよ。『詠唱魔法』の発動条件は『魔術を想像し、それに対する呪文を適宜唱える事』。なんだけど、昔は高威力用、速射用って幾つかあった呪文も、今は呪文の定型文すら無くなってるんだよね…」

「…それって『詠唱魔法』がある意味無くない?」

白松さんが鋭いツッコミを入れる。

「いやまぁ、それを言っちゃおしまいなんだけどさ…。一応形を変えてる残ってるんだし」

「形を…変えて?」

五葉松から当然の疑問が湧いてきた。

「進化した、って言ったほうがより正しいかもね。『魔法』の解釈は時代を追うごとに変わっていくんだ。今の『詠唱魔法』の解釈は『魔術を想像する事が大事。呪文は二の次』。昔は過程を重視する『魔法』だったんだけど、今は結果を重視する『魔法』に変わったって訳。そして、結果を重視し過ぎたせいで、呪文の定型文が崩れてしまったんだ。 今は『極短詠唱魔法』と『無詠唱魔法』が主流となっているんだ。

『極短詠唱魔法』は、その名の通りとても短い詠唱で『魔術』を発動する『魔法』で、大抵は魔術名か発動する魔術に関連する単語を唱えるんだ。まぁ今となっては『詠唱魔法』と言ったらほとんどの場合が『極短詠唱魔法』を指すけどね。

『無詠唱魔法』もその名の通り呪文を口では唱えずに、心の中で呪文を唱えて『魔術』を発動する『魔法』で、物理的な動きが発生しないから相手に『魔法』の発動を悟られにくいと言う利点を持っているんだ。ただ時間はかかるけどね。

『詠唱魔法』の説明はこの位かな。何かわからない所とかある?」

俺の説明に納得したのか、俺の質問に対し皆は首を横に振った。

「じゃあ次に行こう」

俺は白板にベン図のようなものを描いた。

「『魔法』っていうのは、今まで説明してきた『魔法』も含めて、ある程度グループ分けが出来るんだ。『魔法陣魔法』や『詠唱魔法』はさっき姉さんが話した『異世界』で開発され以来、最も一般的な『魔法』として現在も広く使われている。けど、『異界人』が『宇宙』に来てから原形がほとんど変わっていないんだ。なので、俺達はこれを含めたいくつかの『魔法』を『古代魔法』と呼んでいる。バチカン風に言うなら『神聖魔法』かな。あ、皆も気をつけた方がいいよ。日本以外で『古代魔法』って言うと怒られるからね」

「…宗教関係ですの?」

赤松さんが的を射てくる。

「それも理由の一つだね。特にユダヤ教は『魔術』の事を神聖視している。けど一番の理由は、後でまた話すけど『現代魔法』の概念が無いからなんだ。そのせいで日本より欧州の方が、『魔術』の発展度合が最低で300年、最高で十数世紀遅れてると言われてるんだ」

『…………へ?』

あまりに数字が大きすぎたので、皆唖然としてしまった。

「…いやいやいやいくら何でも非現実的過ぎるだろ。数十年かなんかの間違いじゃないのか?」

黒松くんがいち早く復帰し、受け入れ難いと否定する。

「それに、百歩譲ってそれが事実だとして、根拠はあるのか?」

黒松くんの疑問に俺は

「あるよ」

と答えた。

「『魔女狩り』だよ。聞いたことはあるでしょ?」

「『魔女狩り』?中世から近世にかけてヨーロッパを中心に起きたあの事件ですわよね?」

「その認識で間違ってないよ。赤松さん」

「であればおかしくありません?『魔女狩り』で殺されたのは無実の民衆ばかりの筈です。なぜそれで『魔術』が衰退するのです?…まさか殺された民衆が『魔術師』だとでも言うのですか?」

「…まぁ、それも一理あるね。ヨーロッパの『魔術師』は、日本みたいに存在を隠匿されてこなかったからね。『魔術師』が地域に根付いていてもおかしくはない。けど、『魔術』衰退の理由はもっと大きなものだよ」

「…もっと…大きな?」

赤松さんが考える素振りを見せる。

「じゃあ問題だよ、赤松さん。『魔女狩り』は元々何が原因で始まった?」

「元は教会の異端審問ですわよね」

「そうだね。『魔術』衰退の原因はそこにあるんだ」

「…どういうことですの?」

「『魔術』が教会によって異端認定されたという事だよ。それによって、当時著名だった『魔術師』達が次々処刑され『魔術』が発展しなくなった、と推測されているんだ」

「…推測?わかってないんですの?」

「証拠が無いんだよね…。教会が『魔術』に関するものを異端技術として、徹底的に消し炭にしたんだ。だから『魔女狩り』については様々な憶測が飛び交っていて、今俺が話した説が有力視されているけど、さっき赤松さんが言った『殺された民衆の殆どが『魔術師』である』と言う説もある。『魔女狩り』に関する事件は『魔術師』の歴史上最大の謎とされているんだ」

俺の説明に皆「へぇ~」と頷いていた。五葉松と赤松さんに至っては板書までしている。

「……話がそれたね。元に戻そう」

俺は気を取り直し、咳払いをする。

「さっき話した『古代魔法』の対極にある『魔法』が『現代魔法』だ。これは我々『魔術師』が『古代魔法』を改良したり、場合によってはゼロから創り出した物の事を言う。これに含まれるのは、さっき話した新解釈の『詠唱魔法』と、これから話す『無法魔法』が主な物だね。

 じゃあ『無法魔法』について説明するよ。まず『魔術』っていうのは改変する事象を想像して、それに合った『魔法』を発動するんだけど、『無法魔法』は想像したイメージを直接『魔術』に反映出来るんだ。発動条件は『改変する事象を明確に想像する事』。この『魔法』の利点は『無詠唱魔法』と同じく、物理的な動作が無いから相手に気付かれにくいし、『無詠唱魔法』より遥かに短い時間で『魔術』を発現出来るんだ。、欠点もある。想像した事象をそのまま『魔術』として発現させるから、『無詠唱魔法』と比べて相当難易度が上がるんだ。ちょっとでも文字で想像しちゃうと『無詠唱魔法』に切り替わっちゃうからね。

『無法魔法』の説明はこれ位かな。これで『魔法』については粗方解説が終わったけど、何か質問ある?」

俺は再び皆の方に向き直る。

「理解は出来たけど……頭が追いつかないと言うか……実感が湧かないと言うか」

五葉松はぱっとしない顔でそう言う。

「まぁそんなもんだよね。急にこんな荒唐無稽な話をされても、きちんと理解するには時間がかかるだろうし」

白松さんや黒松君も顎やこめかみに手を当て、うんうん唸っていた。

「それじゃあ、ようやく『魔術』の本題の説明に入るわけだけど…」

「待ってくれ。これ以上やられたらこっちの頭がパンクしちまう」

黒松君からすかさず待ったが入る。白松さんと五葉松も激しく同意している。

「…しょうがないかぁ。続きは明日にしよう。放課後また家に来てもらうけど、良い?」

俺の提案を皆は快諾してくれた。ただ、赤松さんが少し物足りなそうな顔をしていた。


 〇〇


「──よいしょぉぉぉおおお!!」

気合いと共に、俺は円筒状の物を空中に投げつける。

「──ふぅ。姉さん、終わったよ」

腕時計型携帯端末で地下にいる姉さんに報告する。

『了解、こちらでも確認できたわ。っと、そろそろ初弾がポイント6253に到達するわね。大輝、一度こっちに来てちょうだい』

「了解」

俺が姉さんに返事をした時、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。

『郵便物が届いたようです』

ハイラが報告と共に配達ロボットを映し出す。

「すまん、誰か出てくれ」

『はいはーい、私が出るよー』

どうやら美月が応対にあたるらしい。

 俺は片付けた工具箱を持って、屋根から庭に飛び降りた。窓を開けて居間に入ると、荷物を受け取った美月がこちらにやって来る。

「お姉ちゃん何これ?防衛省からお姉ちゃん宛に来てるんだけど?」

『あら、もう届いたの?安住さん意外とやるじゃない。丁度いいわ。大輝、それ持ってきてくれない?』

「はいはい」

俺は美月から荷物を受け取り地下へ向かった。アズミさんって誰だよ…。


 〇〇


「はいよ、姉さん」

俺は姉さんの机に先程受け取った荷物を置いた。

「んー。ありがと」

姉さんは画面から目を離さずに、生返事気味に礼を言う。俺は工具箱を倉庫に戻し、姉さんと同じ画面を見る。さっき俺が投げた円筒状の物、すなわち『魔術センサー』の動作確認をやっているようだ。

「…よし、最終弾の到達を確認。電波状況、異常なし。センサー感度、良好。動作状況、異常なし。大輝、お疲れ様」

「ホント疲れたよ。毎日少しずつとはいえ、二時間投げっぱなしはきついって」

俺は肩をぐりぐり回し疲労をアピールする。

「で?さっきの中身は何なの?」

「んー?変身用の追加兵装よ。実戦配備はまだ調整が必要だけどね」

「…ということは」

「ええ、ずっとやられっぱなしだったからね。こっからは私達の番よ」


 その夜、『魔術センサー』は自身の有用性を実証する事となる。

どうもdragonknightです。

投稿が遅くなってすみません。

その分内容が濃くなっている(と思いたい)ので読み応えはあるかと思います。

質問等ございましたらコメントかTwitterで知らせて下さい。


いつも通り次回は未定です

(*´∇`)ノシ ではでは~

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