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第七話 Welcome to 『Magic Laboratory』

 今日のお昼はなんじゃろな

───炒飯でした。ウ〜ンdelicious!


 ○○


「いってきまーす」

『いってらっしゃいませ!』

「自転車には気をつけなさいよー」

ハイラと姉さんに見送られ、俺は待ち合わせ場所である電停へ歩いて向かう。俺の家から電停までは多少距離があるので、余裕を持って家を出る。約束の時間の五分前には着くことができるだろう。


 ○○


 途中事故に遭う事もなく、無事に電停に着くことが出来た。まあ海都市の特性上、自家用車など滅多に見ないし、それこそ自転車にさえ気を配っていれば事故に遭わないと言っても過言では無い。

 俺が予定通り五分前に電停へ着くと、既に赤松さんが待っていた。

「よっ」

と、俺は軽く挨拶をする。ちょっと馴れ馴れしくし過ぎたかと思ったが

「どうも」

と、彼女も会釈を返してくれた。

 二人の間に沈黙が流れる。俺はこの沈黙を苦手としていないが、赤松さんの方はいざ知らず。ちらりと彼女の方をうかがうと、虚空を見つめながら手元を動かしていた。別に赤松さんの気が触れた訳では無い。おそらく、ARコンタクトを介してログチャットをしているのだろう。俺は赤松さんの邪魔をしないように、スマホでネットサーフィンをする。

 しばらくして、

「やっほー」

「こんにちはぁ」

「……」

白松さんと黒松姉弟が時間通りに到着する。

「あれ、五葉松は?」

と、俺が問うと

「…ああ、アイツならさっき遅れるって連絡があった。アイツん家ちょっと遠いからな」

と黒松君が応える。

 一分程待つと

『まもなく中央広場行き電車が到着します。黄色い線の内側までお下がりください』

電停の接近放送が流れた。乗車ボタンは押されてないので、おそらく誰かがここで降りるのだろう。ちなみに客が乗り降りしない時は通過放送が流れる。

 到着した電車から数人の客が降りてくる。その中に

「すみません!遅れましたー!」

五葉松の姿があった。こちらに駆け寄ってくる。

「すみません、遅れてしまって」

「いや二度目はいいから」

「でも…」

「いいよいいよ、堅苦しいし」

俺は何度も謝る五葉松を諌める。

「さて、全員揃ったから俺の家に向かいたいんだけど、実は歩くと結構な距離なんだよね。バス使っていいかな?」

俺は皆に確認をとる。

「別にいいわよ」と白松さん

「今の時期はタダなんだし、使わなきゃ損よぉ」と黒松先輩

「その割には歩いてきてましたよね」と痛い所をついてくる赤松さん

「俺はいいんだよ、慣れてるから」

他二人も了承を得て俺達はバスへ乗車、五つ先の「村田医院前」停留所を目指す。そこから路地を右に曲がり右に曲がり、到着。

「8-55街区って、…唐松くん何処かの御曹司?」

「初めて見たわぁ、こんなところに住んでる人。本当に居るのねぇ…」

皆は驚き呆然としていた。五葉松に至っては「あわわわわわ…」と震えてしまっている。ここ──8-55街区は言わば高級住宅街である。実際にご近所さんは、官僚だったりセブン&アイのお偉いさんだったり、何処かで必ず顔を見た事がある人が多い。高級住宅街ランキングによると南青山や田園調布などの古参を凌いでかなり上位に食い込んでいるらしい。

 それはさておき、俺は門扉を開けて皆を我が家に招き入れる。

「どうぞー」

「「「「「お、お邪魔します…」」」」」

皆萎縮してしまった。そんなに緊張しなくていいのに……

 と思ったのも束の間、皆すぐに「すっごーい!!お庭広ーい!!」だの「建物が大きい、これが豪邸…!」だの騒ぎ出した。ついこの間まで小学生だったので、やはりこういう所に来ると興奮するのだろう。

「ただいまー」

俺は玄関の戸を開ける。

『おかえりなさい。ご飯にします?お風呂にします?それとも……わ・た・し♡』

「えーと、デリートボタンは…」

『ぎゃあああ!?やめてくださいぃぃ!!冗談、冗談ですってばぁ!?』

あまり好き勝手やらせていると勘違いする輩が出てくるから、ハイラには少し黙ってて欲しいものだ。実際に皆顔を引き攣らせている。

「ねえねえ、何今の?どうやって言わせてんの?AIに言わせてるんだよね?言わせてるんだよね?ねえねえ、どうやって言わせてるの?すっごい気になるんだけど」

が、白松さんだけはは両目をキラキラ輝かせ、かなり食い気味に迫ってきた。鼻息荒いよー。

「いやこれはね──」

『わたしがこの家の検索履歴にアクセスして、ひとりひとりの性癖にあった言動をわたしが勝手に行っているのですっ!これで家主様のハートもガッチリです!どうです?凄いでしょう!ねっ、ご主人様?』

俺はシステムウィンドウを呼び出し『『H・M・A・I』個別ID『ハイラ』を区画『Z_001』に幽閉しますか? Yes or No』の表示にノータイムで『Yes』と答える。

『あれ、何か物音が……うわあぁぁ!?何ですかアレ!?アレ何ですか!?ショゴス?ショゴスですよねアレ!?ぎゃあああ!!こっち来ないでぇ!!触手出さないでぇ!!おわっ、ちょっ、掴まないでぇ〜!なんか、ヌメヌメするぅ!?えっ、ちょっ、何処掴んで…あぁん!ちょっ、そこは、だ、だめ……あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!?』

『幽閉完了しました』

ウィンドウが無慈悲に結果を告げる。

「……さあ、上がって」

「「「「「あ、ハイ。お邪魔します」」」」」


 ○○


「いらっしゃい、適当にくつろいどいて。今飲み物持ってくるから」

姉さんは飲み物を取りにキッチンへ消える。俺は真っ先にソファーに座り 、皆にも座るように促す。しばらくすると、姉さんがオレンジジュースを人数分運んできてくれた。

「はい、つめたいものどうぞ」

「あっ、つめたいものどうも」

オレンジジュースを飲むために小休止をはさむ。

「さっきはごめんね。家のハイラが迷惑かけて」

まず姉さんが謝る。姉さんが謝る事では無い気がするが。

「あはは……なんか変わった子でしたね」

白松さんが苦笑する。

「良いんじゃない?賑やかで。毎日が楽しそうで羨ましいわぁ」

黒松先輩がにこやかに言う。

「そう言っていただけるとありがたいです」

「そう言えば、うちの親がお近づきの印にってお土産持たせてくれたんです。どうぞ」

と言って白松さんが紙袋を差し出す。

「これは親切にどうも。有難くいただくわね」

「それであの〜、ご両親はどちらに?挨拶して来いと言われたのですが」

「今ここにはいないわよねぇ。お仕事か何かなさっているの?」

ガールズトークがだんだん逸れていく。

「両親ですか?いませんよ」

「いや、だから…」

「ああ、すみません、語弊がありましたね。

 ──両親は既に他界しました。十年前に」

「「「「「………え?」」」」」

緊張で固まっていた他の3人も今の発言には流石に反応せざるを得なかった。

「ご、ごめんなさい!私…」

「いいよいいよ、気にしないで白松さん。あんまり言いふらすと世間体が悪いしね。それよりも皆、挨拶していってよ。何気に友達を家に上げるの初めてなんだよね。多分喜ぶと思うからさ」

「はい!是非!」

皆は仏壇の前に正座して遺影に向かって合掌する。

「さあ、行きましょうか」

しばらくして、姉さんがおもむろに切り出した。

「あの、何処へ?」

五葉松が問いかける。

「これから本題に入るのよ。何も遊ぶためにあなた達を呼んだわけじゃ無いのよ?さっきは人の目があったから話したくても話せなくて。ついて来なさい」

姉さんについて行くと階段横の壁で立ち止まる。照明のスイッチに擬態したボタンを押すと、音も立てずに壁が滑り落ちた。その向こうにエレベーターシャフトが現れる。

「おぉ!凄いですねこの秘密基地みたいな感じ!興奮します!」

五葉松が鼻息を荒らげる。早速現れたエレベーターに乗り込もうとする五葉松を、姉さんは止める。

「ちょっと待ってね。その前に約束して欲しい事があるの」

「何ですか?」

姉さんは皆の方に向き直る。

「後で誓約書渡すけど、ここから先で見たものは、絶ッ対に口外しないで下さい。下手するとあなた達の命が狙われます」

『……ええっ!?』

「でも、そこまでのリスクを冒してでもあなた達にはこの事を知ってもらう必要があります。あなた達も、何も知らずに死ぬよりはマシでしょう?」

「…ちょっとお待ちください。その言い方では、私達は既に命を狙われている事になりませんこと?」

「ええ赤松さん、その認識で間違ってないわよ」

「ッ!?何故もっと早くお知らせしてくださらなかったのですか!」

赤松さんは激昂する。それに対し姉さんは

「いや、だって面識ないじゃん。知らない人に『お前は命を狙われている!』なんて言われても困るでしょ?」

「ぐっ…!」

赤松さん、何も言い返せない!

「それに、海都にいる限りはある程度安全は保証されているわ」

「…どうゆう事です?」

「それも含めて説明するわ、この先でね。

 何も知らずにこのまま帰るか、全てを知って私達と共にするか。さぁ、どうするの?」

と言って、姉さんは手を差し伸べた。……姉さん大分カッコつけたな。

「…俺は行くぞ。何も知らないままなんて嫌だからな」

そう言って、黒松くんがこちらに歩み寄る。

「…私も、ここまで言われたら行くしかないではありませんか」

赤松さんもこちらに歩み寄る。

「…僕も行きます。仲間はずれはもう懲り懲りですから」

五葉松もこちらに歩み寄る。

「…私はどうしよっかな。いきなりこんな事言われても…」

白松さんは迷う素振りを見せる。

「これって今決めないとダメですか?」

 これに対し姉さんは

「今すぐが無理ならいいけど、それでも帰る時までには決めてもらいたいわね。記憶を書き換えるのって面倒なのよ?」

「…今しれっと怖い事言いましたよね?」

「何の事かしら?」

姉さんはすっとぼけた。てゆーか、記憶操作って普通に『禁忌』なんですけど。そこんとこ姉さんはどう思ってるんですかね。

「さぁ、行くわよ」

姉さんは、何事も無かったかのように振る舞う。


○○


 一同はエレベーターに乗り込み、地下を目指す。扉が開くと地下通路が現れる。

「いろいろ話す前に、まずはこの施設をざっくり案内するわ」

さして長くもない地下通路を行くと、正面に『training room』と看板が掲げられた大きめの扉が現れる。その扉を開けると、そこには………巨大な地下空間が広がっていた。

「おぉーっ!すんごい広ーい!!何ですかここ!?」

はしゃぐ五葉松。

「ここはトレーニングルームよ。筋トレはもちろん、様々な運動が出来る様になっているわ」

解説する姉さん。

「でも何もありませんわよ?」

周囲を見渡す赤松さん。彼女の言う通り、トレーニングルームには運動器具の類が一切見当たらない。

「まぁ、ここは主に実戦訓練用の施設だからね。物はあんまり置いてないの。

 次行くわよ」

トレーニングルームを出て、すぐ左手の扉を開ける。その扉には『医務室』の看板が掲げられていた。

「ここは医務室よ。怪我をしたらここに来なさい。一応、外科的治療を行う準備は出来ているわ」

今度は右手の扉を開ける。その扉には『会議室』の看板が掲げられていた。

「ここが会議室よ。第一から第三まであって、壁を取り外せば大きめの会議室になるわ」

通路に出て、丁字路で立ち止まる。

「このまま真っ直ぐ行くと、さっきのエレベーターにつくわ。あ、トイレはそこにあるから。さぁ、こっちよ」

丁字路を左に曲がる。すると、右手にガラス張りの部屋が見えてくる。電子錠と生体認証とシリンダー錠によってガチガチに固められた扉には『laboratory』の看板が掲げられていた。

「ここは研究室よ。ここで説明するのもアレだから、後で詳しく説明するわね」

通路をそのまま直進すると『しれーぶ』の看板が掲げられた扉が現れた。すると

「姉さん、兄さん」

と、後ろから声をかけられた。

「…来たわね」

 姉さんの言う通り、勇雄、美月、空の三人がやってきた。

それで話って何?」

勇雄が先を促す。

 姉さんは全員に向き直る。

「あなた達にはこれから、世界の真実、またはそれに限りなく近い事を話します。今までの常識が八割方ひっくり返るのでそれなりの覚悟をするように」

司令室の扉を開けて姉さんは言う。

「──ようこそ魔法学研究所へ。私達はあなた達を歓迎するわ」



どうもdragonknightです。

遅れたうえにまた説明回に入れませんでした。

ホントすんませんm(_ _)m

次回こそは必ず…

次回の投稿日もいつも通り未定ですのでしばらくお待ちください。

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